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李家剣夢譚  作者: 守田
修羅の道編
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第8話 豪商の護衛(前半)

翌日、妓楼の前まで行くと、楊宣娘と王進が旅支度を整えていた。

王進が俺たちに気付く。


「昨日は悪かったな。」

「だが安心してくれ、連中は始末しておいた。」


「もう、こんなくだらないことに手を貸すのは沢山だ。」


一夜のうちに何があったのか分からないが、彼の言葉からは何かしらの決意を感じる。


「俺は禁軍教頭をやめる。」


「これからは、母親と田舎で暮らすことにするよ。」


続けて、楊宣娘が口を開く。


「私も手を引くから、使用人も全員田舎に帰した。」

「事実上、金花楼は消滅ね。」

「これでもう同じ不正は起きないわよ。」


「…第2の妓楼が誕生しない限りはね。」


俺は趙景に視線を合わせる。


しかし、彼女はすぐに視線を外し、無視を決め込む。


いやはや嫌われたものだ。

昨日の微笑みはどこへ行ったやら。


「それから、あなたたちの正体は、大体想像が付いているわ。」


「私の弟に楊文広と言う男がいて、きっと将来は将軍になる。」

「今は力を持っていないけど、役人を味方につけておいて損はない。」


「何かあったら頼ると良いわ。」


そう言うと、二人は別々の方向へと去って行った。



俺たちが酒屋へ戻ると、李師師と商人風の男が待っていた。


任務の報告もそこそこに、次は護衛の仕事を依頼したいと言う。

しかも、今回も趙景と任務にあたる。

と言うより、今後は彼女と仕事をすることとなった。


とんだ災難だが、趙景の方は無表情。

一体何を考えているのか。


「沈澄と申します。」

「蘇州で貿易を中心とした商いをしております。」


沈澄と名乗った男は、細身で白髪、白い髭をたくわえた知的な印象だ。


「彼は書画で名高いと評判の人物です。」

「その財力は、宋で右に出る者はいないとか。」


またも竹琴が耳打ちする。


「商いで参りましたが、何と言ってもこの絵画の売却が目的です。」


「しかし、もう少しで開封に入るというところで何者かに襲われたのです。」

「どうにか逃げおおせましたが、連れてきた護衛は殺されてしまいました。」


「ここに滞在する間、私の護衛をお願いしたい。」


絵画を見てみれば、何の変哲もない水墨画だ。


まぁ、どれだけ眺めたところで、絵心のない俺には理解の及ばない世界なのだろうけど。


「いくら優れた絵画とは言え、命を狙われるとはどういうことだ?」


口を挟んだのは趙景だ。


「そうですな、やはり隠し通せませぬか。」


「これは、ある絶技が記された絵画です。」

「どうあっても盗まれるわけにはいきませんので、私が肌身離さず持っていると言うわけです。」


趙景は神妙な顔で頷くと、彼の話しの続きを待つ。


「もし絶技が奪われたら、どうなると思いますか?」

「中原は混乱に陥ることになるでしょう。どうあっても、それは阻止したい。」


「そこで、この絵画を陛下へ献上する予定です。」

「どうか献上するまでの間、私の命を守って下さい。」


鏢局を営んでいたのだ、護衛ならば本業。


しかし、このメンバーで最弱の俺が出る幕はないだろう。


そんなことを考えていると、


「承知した。我らに任せてもらおう。」

「それで、刺客に心当たりは?」


黙っている俺に冷ややかな視線を送りながら、趙景が話し出した。


それが命の恩人に対する態度なのか。


「商売がら、盗賊に狙われたり、暗殺者を差し向けられることは多いのです。」

「それが誰かということは、心当たりがありません。」


「ただ、気配を殺して尾行されていることから、相当手練れの暗殺者ではないかと。」


すると今度は、蘭歌が口を開く。


「この件は、宮廷が絡んでいる可能性も否定できません。」


「そうなると、暗殺は常套手段。」

「刺客が誰か、絞り込むことも難しいでしょう。」


趙景は頷くと、難しそうな表情で李師師へ話しかける。


「とにかく、我々で宮殿まで護衛します。」


それを聞くと彼女は頷き、宮殿へ戻っていった。

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