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李家剣夢譚  作者: 守田
修羅の道編
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第5話 不正な銀子の流れ(上)

李師師から新しい仕事が入った。


今回は彼女の側近が派遣されるらしく、詳しい話しはその者から聞く手筈だ。


酒屋の2階で待っていると、何とも美しい女性が現れた。

つり目で凛とした表情、つややかな髪は腰まで伸びている。


「若様、彼女は細身ではありますが、相当な達人です。」


竹琴が耳打ちする。

彼女が言うなら間違いないだろうが、それは危険な任務であることを意味しているに違いない。


「趙景です。よろしく。」


愛想がない。

というより、苛立っているようにも見える。


「今回の任務は、夜になると突然現れると言う妓楼の調査よ。」

「開封周辺の村を中心に姿を現すが、どういう訳かひとつの場所には数日しか留まらない。」


「さらに、妓楼の銀子は高官に流れていると言われている。」

「その事実関係を調べるのだ。」


妓楼とは、男に体を売ることを生業とする女子が集まっている場所のことだ。

それにしても、こちらの自己紹介もしていないのに、いきなり任務の話しとはせっかちな性格だな。


「私は李海、この4人は使用人だ。」


「高官が妓楼の銀子を欲しがるとは思えないが、そうだとしても大したことではないだろう?」


趙景は俺に一瞥すると、話しを再開した。


「妓楼の収入も然りだが、ここで莫大な賄賂が渡されているという話しだ。」

「それも、関わっている高官は高俅だと言われている。」


この国の役人は、どうしてこんなにも薄汚れているのか。


話しは分かったが、彼女が俺を無視するのはどういうことだろうか。


「今回は調査だから、趙姑娘と俺で行ってくるよ。」


竹琴たちに話しかけると、彼女たちは心配そうな眼差しを向ける。


人数が多いと目立つし、武芸が必要になるとは思えない。

しかも、妓楼なのだから、きっと俺の能力が生きるはずだ。


仮に何かあったとしても、達人の趙景がいるから問題ないだろう。


「では、早速向かおう。」

「目的地は、開封府から北東にある李寨村というところだ。」


無表情で答える趙景と二人で出発した。



そのまま開封府を出ようかと言うところで、俺は重要な指摘をすることにした。


「まさか、そのまま向かうんじゃないだろうな。」


彼女は少し驚いた表情で答える。


「何か問題でも?」


いやいや、これから向かうところは妓楼だ。

調査のために潜入するのに、女子の格好では不都合しかない。


「その格好では、目立ちすぎて調査に支障が出る。」

「男装してから向かうべきでは?」


俺の言葉に趙景は頬を赤らめると、すぐに衣服の手配へ向かった。


武芸は優れていても、調査に向いているとは思えない。

どうして李師師が彼女をよこしたのか、その意図を測りかねた。



出だしでつまずきながらも、どうにか李寨村に到着した。


そこは想像以上に小さな集落、妓楼の収益は期待できないように見える。


村の中に入っていくと、彼女が俺を静止する。


「恐らくここね、夜になると妓楼に化けるだろう。」


そこには、手入れのされていない大きな屋敷があった。

周りには、民家もなければ建物ひとつない。


「ここが?誰も住んでいないような屋敷だけど…」


彼女は頷くと、その先にある宿で夜まで待機すると言う。

到底理解できないが、趙景は俺の知らない情報を持っているようだから、従うしかないだろう。



夜になり屋敷へ向かうと、彼女が言う通り煌びやかな妓楼に変わっていた。

看板には金花楼と書かれている。


「まさか、こんな短時間で本当に妓楼が現れるとは。」


感心している俺を置いて、彼女は中へと入っていく。


「あそこにいる女将、武芸の達人だな。気を付けて。」


見てみれば、妓楼には似合わない品のある顔立ちと衣服の女性が立っていた。

達人には見えないが、趙景がそう言うなら気を付けねばならない。


しかし、女将が武芸者とは、やはりただの妓楼ではないのか。


「ここからは、別行動で探ろう。」


俺がそう言うと、彼女は頷き2階へ上がっていく。


こちらには女将がやってきて、促されるまま2階へ上がる。

そして、別々の部屋へと入っていった。



「陳蓉蓉と申します。」


部屋で待っていた女子は、胸をはだけた艶めかしい姿で礼をする。

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