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李家剣夢譚  作者: 守田
孤高の剣士編
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第4話 海賊討伐(下)

陳和は悲しそうに頷いた。


「田家と陳家、元は同じ陳国の王族だ。」

「だから、俺からすればどちらが斉国を再興しても良いと思っていた。」


「しかし、どちらもお前に阻止されてしまうとは、因果なものだな。」


林掌門から目線を外し、今度は俺に話しかける。


「お前、先ほど李家十剣を使っていたな。」


「李空は元気にしているか?」


陳家十拳…李家十剣と似た技だとは思っていた。


「父をご存じでしたか。」

「実は、神鷹教の教主に殺害されました。」


「しかし、仇は林掌門の奥方、夏教主が討ってくれました。」


陳和の瞳からは、涙があふれ出ている。


「そうか、逝ってしまったか。」


そう言う彼にかける言葉ではないが、どうしても聞きたいことがあった。


「陳家十拳と李家十剣は、どういう関係があるのですか?」


俺の問いに、彼は神妙な表情で話し出す。


「知らないようだから教えておくが、お前の父は私の兄だ。」


「李家十剣は剣技だが、陳家十拳は実のところ内功の奥義。」

「この二つを合わせて、初めて真の奥義となる。」


「父は、どういう訳か兄弟それぞれに奥義を授けたのだ。」


「しかし、俺たちは異母兄弟で別々に育てられ滅多に会えなかった。」

「だから、真の奥義を目にしたことはない。」


陳和は懐から奥義書を取り出すと、俺の方へ向かって歩き出した。


「俺は陳家十拳の真髄を理解できていない。」


「林掌門との勝負は、内功の差と言って良いだろう。」

「もし完全に会得できていたらどうなったか…」


「これはお前にやろう。」

「李家十剣を会得するほど聡明ならば、きっと陳家十拳も造作ないはずだ。」


しかし、俺の前まで来ると彼は驚くべき暴挙に出た。

突然剣を抜き、襲い掛かってきたのだ。


「一指金剛弾!」


林掌門が人差し指を突き出すと、指先から放たれた発頚が一直線に彼の肩を貫いた。


「ぐっ!」


「これまでか…まだこんな技を隠し持っていたとは、林掌門の武芸は底が知れぬな。」

「油断した、俺の完敗だ。」


そう言うと、陳和は倒れ気を失った。


「陳殿と王子は、梅家荘で軟禁することにする。」

「二人とも、それで良いな?」


もちろん反論などない。


「それから李鏢頭。」


「その陳家十拳、是非学ぶと良い。」

「陳殿や曹无求のような強者に勝る、最強の剣を会得するのだ。」


俺は頷きながらも、そんなものを求めている訳ではない、そう心の中でつぶやいていた。


しかし、本当は分かっている。

この時代では力も必要なのだと。



臨安府に戻ると、薛雷から話しがあると呼び出された。


「お前から話しがあるとは、珍しいな。」


何があったか知らないが、俺を睨んでいる。


「男三人で旅行とは、いい気なものだな。」


「一体、趙景のことはどうするつもりだ?」


たまに旅行へ行って、何が悪いというのだ。


「南斗司のこと、任せきりにしてすまないな。」

「薛雷の気持ちも分かっているから、決して勝手なことはしない。」


彼はため息をつき、再び口を開く。


「そうじゃない。」

「趙景の気持ちは知っているはずだ。」


「俺が言うのも何だが、李海は奥手すぎるぞ。」

「二人とももう若くないのだから、お前が気持ちを伝えてやらないと前に進まないんだ。」


「分かっているのか?」


まさか薛雷のような不愛想な男に、女子の扱い方を指摘されるとは思わなかった。


だが、彼の言葉は正しい。

分かっていながら、理由もなく先延ばしにしていたのだ。


「お前にも、すまないことをしたな。」

「分かったよ。」


彼は趙景を諦めると言っているのだ、これで何もしなければ男が廃るというもの。


俺はその足で趙景の部屋へ行くと、素直な気持ちを伝え、結婚して欲しいと告げた。

彼女の瞳からは、大粒の涙がぼろぼろとこぼれた。


そして、これ以上はないという笑顔で首を縦に振った。

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