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李家剣夢譚  作者: 守田
鏢局大会編
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第5話 鏢局大会(二)

「続いては、無双鏢局対、臨安鏢局です。」


ここで前半一位の臨安鏢局か。


「呂熊、行ってこい!」


そう言うのは、無双鏢局の宋牛だ。


「俺の名を呼ぶな、二度と呼べないようにしてやるぞ!」


こいつらは、どうしてこうもガラが悪いのだ。


それに、宋牛と言い呂熊と言い、皆動物の名前なのか?

まあ、面白いけど。


しかし、呂熊の気持ちも分かる。

熊と名付けた親はあんまりだ。

何故なら、熊は日本語にすると豚を意味するからだ。


「臨安鏢局は、この私がお相手しよう。」


そう言って舞台に上がるのは、馬雲だ。

いきなり鏢頭が出るとは、初めから全力と言うわけか。


呂熊は槍を、馬雲は剣を得物に選び対峙する。


「鏢頭が相手とは、俺の実力をよく分かってるじゃないか。」


呂熊は誇らしげに胸を張ると、何とも嬉しそうな表情を浮かべる。


彼の方が牛なんじゃないか、というくらいに大きな体躯だ。


「臨安鏢局の剣法を御覧に入れよう!」


そう言うなり、馬雲が先手をとって攻めていく。


老練の彼は、呂熊の攻撃を冷静に見極め、上手く避けながら攻撃を当てていく。

しかし、腕や足で受けられ、なかなか勝負が決まらない。


対して屈強な呂熊は、いくら攻撃を受けても全くダメージを受けていない様子だ。


「いくら剣法が優れていても、寄る年波には勝てぬか。」


「すぐに終わらせてやるから、年寄りは引っ込んでな!」


呂熊は、大きな轟音と共に突きを放つ。


「ぐっ!」


彼の突きは、見事に馬雲の腹に当たった。


確かに呂熊が言う通り、十手も交わせば馬雲は足元がおぼつかない様子だった。

フラッとよろけたところを突かれたのだ。


「勝負あり!」


蘭歌が判定を下す。

だがしかし、呂熊は勢いそのままに二度三度と突きを放った。


「がはっ!」


馬雲が激しく吐血する。


いくら木製とは言え、あの剛腕の突きをまともに食らったのだ。

命に関わるだろう。


「何をする、一体どういうつもりだ!」


そう言うと、臨安鏢局の鏢師たちが駆け寄るよりも先に、俺が飛雲功で割って入る。

呂熊は、飛雲功を見るなり血相を変えて飛び退く。


「これはまずいな。」


馬雲を診ると、一刻を争う状態と分かった。

趙景を呼び二人で馬雲に内力を注ぐと、菊笛、梅舞に医師の元へ連れて行くよう指示する。


「宋鏢頭、こんなことをされては困ります。」

「失格にしますよ。」


彼に詰め寄るも、興味がないといった様子で生返事だ。


こう言う時のルールを作っておくべきだったと悔やむが、後悔先に立たずだ。

しかも、ここで失格にしておかなかったことは、後々また後悔することになってしまうのだった。


「皆様、事故が起こりましたので、本日はここまでとします。」


「武芸勝負の続きは、二日後とします。」


俺の言葉により、一旦解散することとなった。



その後、馬雲は何とか一命を取り留めた。


「それにしても、困ったことになったな。」


彼は当面、安静が必要だ。

そうなると、残念ながら臨安鏢局は最下位だろう。


加えて、馬雲がこの負け方だ。

武芸勝負を制した無双鏢局は、そのままの勢いで盟主を狙うはず。


そんなことを考えていると、竹琴が難しい顔をしながらやってきた。


「若様、無双鏢局の使者がやって来ました。」


今さら、一体何の用だ?


許せはしないが、鏢局同士これから手を取り合っていくために、面会を拒否することは避けた方が良いだろう。

楊宣娘へ視線を移すと、彼女は頷き、会うべきだと促す。



「李鏢頭、はじめてお目にかかります。」

「無双鏢局の金鼠と申します。」


「それにしても良かった、会って頂けないかと思いました。」


挨拶した男は、無双鏢局には珍しく腰の低い男だ。

だが、どうもこちらを見下しているように感じるのは気のせいか。


加えて、彼も動物の名前。無双鏢局は動物園だな。


「先日のお詫びと友好の印として、宴にご招待させて頂けないでしょうか。」


言葉は丁寧だが、にやついた顔に何だかイライラする。


「楊副鏢頭、断る理由はないと思うが、どうだろうか?」


彼女は俺が悩んでいることは察しているだろう。


しかし、答えは俺に任せるということだった。

彼女もまた、悩んでいたのかもしれない。


あの屈強だけが取り柄のような連中のことだ。

大して考えもせずに行動へ移し、後になってやり過ぎたと後悔している可能性もある。


「承知した。これから伺おう。」

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