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李家剣夢譚  作者: 守田
鏢局大会編
32/49

第4話 鏢局大会(一)

ここは臨安府の郊外。

鏢局大会の会場とするため、虎門鏢局が大枚をはたいて土地を買ったのだ。


「若様、お似合いですよ。」


竹琴が声を掛けてきた。


実は、鏢頭らしい格好で臨むべきということで、汚れが目立ちそうなくらい真っ白で上等な生地を使って衣服を仕立てたのだ。

それに加えて、黒いマントまで用意されていた。


どちらにも、大きな虎の刺繍が施されている。


「虎門鏢局の李海です。」

「皆様、この度は不才な私ごときの招きに応じて下さり、有り難うございます。」


「この鏢局大会の勝者には、各鏢局の盟主となって頂きます。」

「今後、より一層団結していくための大会にできれば本望です。」


皆から、いいぞ!という声が響き渡る。


「前半戦は人気投票です。」

「商家から代表し、20名の方にお越し頂きました。」


「それでは、順に投票をお願いします。」


不正がないよう、投票箱は竹琴たちに見張らせている。


商人たちが票を投じていく。

ちなみに、商人と言っても、皆金が有り余っている豪商だ。


彼らの信用がなければ、鏢局が利益を上げることは難しいだろう。


「さあ、投票が終わりましたので集計に入ります。」


この作業も、竹琴たちに任せている。


いよいよだと、会場がざわめき出した。



「集計が終わりましたので、結果を発表します。」


目配せすると、竹琴が前に出る。


「第五位、仙谷鏢局。」


参加者から、「やはりな」とひそひそ話しが聞こえる。


「第四位、蛇頭鏢局。」

「第三位、無双鏢局。」


会場は静まり返っている。

皆の予想通りということか。


「第二位、虎門鏢局。そして、第一位は臨安鏢局です!」


ここで大喝采が巻き起こる。


やられた。

臨安府では彼らの方が当然知名度は高いのだが、開封府時代の顧客も招いているから、勝てる計算だった。


しかし、そもそも臨安鏢局の方が歴史は古い。

もしかすると、その差が勝敗を分けたのかもしれないな。


「若様、二位ではありますが、一票差でした。」

「本当に残念です。」


小声で竹琴が報告してくれた。

それにしても、悔しくてやりきれない思いだ。


この結果を受け入れて、気持ちを切り替えねば。


「臨安鏢局の皆様、第一位おめでとうございます!」


「次は、後半戦の武芸勝負です。」

「武芸勝負は総当たり戦で行います。」


ここまでで、竹琴の役割は終わりだ。


次に、蘭歌に対戦表を用意するよう指示する。

皆が見られるように、対戦表が書かれた大きな木版をいくつか貼り出すのだ。


これには、よく考えたものだ、と参加者から感嘆の声が上がる。

ここから、武芸勝負を仕切るのは蘭歌だ。


「第一戦目は、仙谷鏢局対、虎門鏢局です。」


仙谷鏢局は、劉飛飛が舞台に上がった。


「趙景、頼めるか?」


先日は彼女が圧倒していたが、勝敗はまだ決していない。

俺が趙景を指名することは必然である。


彼女は頷くと、同じく舞台へ飛び上がる。


もう一度、蘭歌が口を開く。


「武芸勝負のルールをご説明します。」


「我々は江湖の剣客ではありませんから、真剣は使いません。」

「木製の武器を揃えてありますので、好きな物を選んでください。」


「勝敗は、舞台から落ちるか、頭、胸、腹の何れかへ攻撃を与えれば、致命傷と判断して勝利とします。」


二人は迷わず剣を選ぶ。


どういうつもりか知らないが、劉飛飛は剣舞を披露し始めた。


しかし、ここで驚くことになった。

先日とは別人のように腕を上げていたのだ。


きっと、父親から奥義でも授けられたのだろう。


「面白い。いざ勝負!」


趙景の言葉が開始の合図となった。


数手交えると、やはり劉飛飛の腕前が上がっていると分かる。

力強さこそないが、しなやかで美しい剣法だ。


すこしずつだが、趙景が押されていく。


「どうやら、今回は私の勝ちね。」


劉飛飛がそう言うと、趙景がくすりと笑う。


「そう、それならそろそろ良さそうね。」


「私が本気を見せていたとでも思っていたの?」


趙景が剣から手を離すと、独りでに彼女の剣が劉飛飛の剣の周りをくるりと一回転する。


そして、もう一度趙景が剣を握った時には、既に劉飛飛の腹部を突いていた。


こうして、第一戦は虎門鏢局の圧勝に終わった。

やはり趙景の剣法は達人の域、あらためてそう感じたのだった。

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