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李家剣夢譚  作者: 守田
望まぬ英雄編
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第7話 峨嵋派の誘拐事件(後半)

「峨嵋派など、ここを見つけ出すのは至難の業だろう。」


「それに、見つかったところで問題ない。」

「尼どもを殺してから江南へ連れて行ってやるから、夫婦になろう。」


江南凶忌は、今にも襲い掛かりそうな下心丸出しの表情だ。


「そう心配するな。」

「俺は実直な性格だし、必ずお前を大切にしてやる。」


我慢ならないといった様子で、趙景がつぶやく。


「何を勝手なことを。」

「実直なんかじゃなく、ただの単細胞でしょ。」


その通りである。


「まずは腹ごしらえだ。」

「狩りをしてくるから、お前は待っていろ。」


そう言うと、メロメロの江南凶忌が屋敷から出てきた。


「お前たち邪魔だ、命は助けてやるから消えろ。」


はいそうですか、と帰るわけにはいかない。


「俺は、南斗司で虎門鏢局鏢頭の李海だ。」


「命に代えても、王さんは返してもらう。」


命までかけるつもりはないが、それくらいの意気込みということだ。


「虎門鏢局…李空の息子か。」

「それにしては、物足りない奴だな。」


間違ってはいないが、ひとまず反論してみる。


「俺には飛雲功がある。軽功では勝てないぞ。」


江南凶忌は、ニヤリと気味悪い笑みを浮かべる。


「軽功が優れていたら、俺に勝てるとでも思っているのか?」


「大兄には敵わないが、実は他の兄よりも強い。」

「つまり、俺はほぼ最強だ。」


これを聞いた趙景、ハッとした表情を浮かべると、小声で「隙を突くわよ」と俺にささやく。


そして、奴に言い放った。


「ほぼって何!?」

「あんた、武芸は出来ても頭の回転は遅いのね。」


大笑いしている彼女を見て、江南凶忌は怒り心頭だ。


「今よ!」


趙景の合図で、俺は内力をこめて右足を強く踏み込み、その反動で落ちていた石を飛ばす。

それを目くらましに、右側から徒手で襲い掛かる。


同時に、彼女は左側から襲い掛かる。


趙景が剣を抜こうとすると、江南凶忌は右足の蹴りで彼女の剣の柄を抑え、鞘から剣を抜かせない。


俺は内力を込めて突きを放ったが、これは奴の左手につかまれた。


隙を突いて全力で向かったにも関わらず、俺たちの攻撃は簡単に防がれてしまった。


「これは少々驚いた。なかなかやるじゃないか。」

「次は俺の番だな!」


そう言うと、江南凶忌はそのままの体勢で左右同時に突きと掌を放つ。


きっと何かの絶技を会得しているのだろうが、人間がこんな芸当をできるものなのか?


死を覚悟したその時、何者かが割って入る。

俺の方は林掌門、趙景の方は雪梅夫人が攻撃を受け止めた。


と言うより、雪梅夫人の方は江南凶忌が寸止めしたように見える。


「どうにか間に合ったか。」


林掌門がそう言うと、江南凶忌は驚愕の表情だ。


「師父、師叔にお目通りします。」


どういう訳か、奴は恭しく礼をする。


「師父、師叔って…」

「一体どういうことだ?」


俺も趙景も、何が何だか分からない。


「細かい説明は省くけど、こいつは私との勝負に負けて弟子入りしたのよ。」


そう言うのは雪梅夫人だ。


彼女の指示で王さんは開放され、江南凶忌は今後誰も誘拐しないことを約束して去って行った。

何ともあっけない最後だった。


しかし、こう毎回林掌門に助けられたのでは、南斗司など名ばかりである。


今後も続けていくのなら、やはり李空に並ぶ腕前に成長する必要があるだろう。

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