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李家剣夢譚  作者: 守田
望まぬ英雄編
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第2話 本当の気持ち(後半)

ひとまず趙景を別室へ連れて行き、寝台に寝かせた。

彼女は意識を失ったままだ。


「どうしよう、俺のためにこんなことになるなんて。」


「趙景、今分かったよ。」

「君のことが大切なんだ。お願いだから生きてくれ。」


後は言葉にならず、寝台の上で泣き崩れた。



それから3時間後、華先生がやってきた。


「治療法が見つかった。」


「…だが、材料に問題がある。」

「簡単には手に入らないのだ。それに、丹薬の製造にも時間がかかる。」


「どうやっても間に合わない。」


彼を睨みつけ、嘆願しようとした。


すると、楊宣娘が口を開く。


「材料と製造方法を教えてください。」


華先生は疑いの眼差しを向けながらも、丁寧に説明していった。


「しかし、素人が手を出すと、趙姑娘を殺すことになるぞ。」


楊宣娘は涼しい顔で答える。


「何もしなければ、数日も持たないでしょう。」


「それに、私はその材料を持ち合わせているのです。」


黙って聞いていたが、俺も口を挟む。


「本当に趙景を助けられるんですか?」


「それに、丹薬を作るなんて…」


彼女は、背負っていた木箱を開け、材料を探しながら答える。


「神仙術は奥が深い、常人には説明できないわ。」


「その中でも、私が使えるのは錬丹術。」

「呼延鈺に勝てたのは、内功と軽功を飛躍させる丹薬を飲んでいたからなの。」


これには、華先生も驚きを隠せない。


「それならば、武林で最強と言っても過言ではないだろう。」


楊宣娘は首を横に振ると、続けて話し出す。


「私は名声に興味はないけど、達人相手でも負けないでしょう。」


「でも、あらかじめ知っている人…」

「そうね、例えば張掌門や林掌門がこのからくりを知っていて戦うとしたら、間違いなく勝てないわ。」


俺と華先生は顔を見合わせる。

そう言うものなのか。


「とにかく、錬丹術は得意だから安心して。」


彼女は、材料を見つけると錬丹に向かった。


そして、驚くことに翌日には丹薬を持って戻ってきたのだ。


「これでもう大丈夫、良かったわね。」


趙景に丹薬を飲ませると、楊宣娘はそう言って微笑を浮かべた。


「それはそうと、気持ちは言葉にしないと伝わらないものよ。」

「趙姑娘が目を覚ましたら、言ってあげなさい。」


ん?何を言って…

まさか、寝台で泣いていたところを見られていたのか。


恥ずかしさで顔を真っ赤にしている俺を置いて、彼女は去って行った。


気を取り直し、趙景の看病を続ける。


しばらくすると彼女の顔色も良くなり、目を覚ました。


「迷惑かけたわね、ありがとう。」


どこか、よそよそしい言い方だ。

気を失っていたのだから、回復には時間がかかるかもしれないな。


そんな心配をよそに、彼女は出発の準備を始める。


「もう少し寝ていた方が良い。」


そう声を掛けるも、趙景は早く岳飛将軍へ報告すべきだと言う。

肩透かしを食った気分だが、その通りではある。


早速出発し、狐山から軽功で水面を走っていると、趙景が声を掛けてきた。


「私のこと、大切だと言ってくれた人は初めてよ。」


いえいえ、どういたしまして。


「えっ!?」


「まさかあの時、意識があったの?」


俺の問いに彼女は答えず、いたずらっぽい笑みを浮かべると速度を上げて走っていく。



臨安府に戻ると、岳飛将軍へ報告し任務は無事に完了した。


その後、俺と趙景の関係がどうなったかと言えば、何も進展することはなかった。

互いに素直になれないからかもしれないし、俺が優柔不断だからかもしれない。



数日後、趙景の希望で楊宣娘を虎門鏢局へ招くことになった。


「先日は、命をお救い頂き、有り難うございました。」


「今日は折り入ってお話しがあり、お招きしました。」


もちろん楊宣娘には感謝しているが、なぜ鏢局に招くのか、彼女の意図を測りかねていた。


「私は虎門鏢局の鏢師ではありませんが、知恵袋の元竹が亡き今、代わりに進言させて頂きたいと思います。」


「どうか、副鏢頭を務めて頂けないでしょうか?」


これには驚いた。

何しろ、趙景から何も聞かされていなかったからだ。

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