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李家剣夢譚  作者: 守田
秘密組織編
15/49

第5話 父親殺しの容疑(下)

視線が合うと、黒いフードの男は口を開いた。


「せっかく使ってやったのに、まるで役に立たない奴だったな。」


何のことだ?

まさか、元竹のことか。


「神鷹教教主の曹无求だ。」


「李空は俺が殺した。」

「大鷹を召喚して先手をとった後に、毒砂掌で止めを刺したのだ。」


「痕跡は消したつもりだったが、わずかな毒を見抜くとは、さすが張掌門だな。」

「奴のことだから、既に下手人を神鷹教と月蛇教に絞っているだろう。」


あまりに驚きすぎて、話しが半分ほどしか入ってこない。


「どうした、大鷹のことで驚いているのか?」

「お前もタイムトラベラーなのだから、召喚を知らない訳ではないだろう。」


なぜ俺の秘密を知っている?

一体こいつはどこまで知っているんだ…


出来るだけ平静を装いつつ、気になっていることを聞くことにした。


「何のために父を殺したのだ?」


「それに、どうしてここに来た?」


動揺していないように見えたからか、奴は少し驚いた表情で答える。


「答える義理はないが、まぁ良いだろう。」


「俺は武林の制覇を目指している。」

「目的を達成するためには、天地幇が邪魔だったからだ。」


「ここへ来て、さらに礼を尽くしてやっているのは、神鷹教の入信を促すためだ。」


礼を尽くしているだと?

言っている意味は分からないが、入信など考えるまでもない。


「断る。」


奴は、また驚いた表情を見せながら話しを続ける。


「そう言うな。」

「当面の目的は果たしたから、嫌なら入信せずとも良い。」


「だが、李空はお前の実の父ではないから、俺のことは仇とは思っていないだろう。」

「むしろ、死んでくれて喜んでいるのではないか?」


全て知っているというわけか。

だからと言って、もうこいつに用はない。


しかし、奴は答えようとする俺を遮って話し続ける。


「お前、タイムスリップができなくなったのではないかな。」


「元の時代に戻りたくはないか?」


この一言は、これまでの会話をひっくり返すものだった。


本当に戻れるなら、多少のリスクは負っても構わない。


「戻れた場合の見返りは?」


奴はニヤリと笑みを浮かべると、ゆっくりと話し出した。


「本音を言えば神鷹教に入信して欲しいが、入信せずとも協力してやろう。」

「まぁ、これは気まぐれだ。」


もし趙景が知ったなら、よく考えろと止めるだろう。

分かっているが、考えている時間はない。


「但し、戻るのは2日間だけだ。」


「それから、2日目はお前の国を案内してもらう。」

「これくらいの条件は飲めるだろう?」


永遠ではなく一時的に戻るということか。

自力では戻れないのだから、それでも有り難い。


「分かった、よろしく頼む。」


翌日、元の時代へ戻ることになった。



約束通り、1日目は自由にさせてもらった。


俺の地元は熊本県。

高校生と言えどバイトで多少の貯金はあったから、宿と食事くらいなら問題ないだろう。



「4年も経つのに、まだ俺のことを探してくれていたのか。」


家族は今も俺を探してくれていた。

感謝と、申し訳ない気持ちで涙があふれる。


いくら申し訳なくとも、こちらには一時的に戻ってきたのだから、会う訳にはいかない。


それにしても、タイムスリップはしたものの、遠巻きに家族の顔を見る以外には、それほどやることもなかった。


それから、夕食に馬刺しを始めとした名物を堪能すると、1日目は終わった。


「さて、福岡へ行くか。」


2日目は、曹教主を博多へ案内する約束になっていたのだ。



合流すると、これも名物の屋台へ連れて行く。


ラーメンや明太子など、久し振りに懐かしい味を楽しんだ。

以前は未成年で飲めなかった芋焼酎にもトライしてみると、癖は強いが思った以上にいける。


酒が進み、俺も曹教主も泥酔してしまった。


「宋の時代へ戻れば、俺たちは別々の道を歩むことになるだろう。」


「その前に、本音を話そう。」


奴は顔を赤らめながらも、真顔で話し出した。

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