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李家剣夢譚  作者: 守田
秘密組織編
14/49

第4話 父親殺しの容疑(中)

「もしや、あなたは李鏢頭かな?」


40代の男が話しかけてきた。


「はい。どうやら、私が父を殺害したと疑われているようですが、潔白の証拠を探すためにやってきました。」


俺が答えた瞬間、彼は目の前まで近づいていた。

と同時に手首を取ると、脈を診られた。


「失礼した。」


「俺は武当派の掌門、張三宝だ。」


続いて、張掌門の横に控えていた男も挨拶する。


「狐山派の掌門、林友和です。」


さらに張掌門は、元竹の方を見ながら言い放った。


「まず、初めに言っておこう。」


「李鏢頭は下手人ではない。」


これには、趙景も元竹も驚きの表情を隠せない。


「御父上には多数の外傷があるが、死因は掌による一撃だ。」


「そして、その掌のあとには気付かない程度の微量な毒が含まれていた。」

「先ほど脈を診たが、李鏢頭は毒掌を使えない。」


張掌門、聞きしに勝る腕前だな。


「そちらのお二人も、脈を診せてもらえるかな?」


その瞬間、元竹が飛び退き、軽功で塀の上へ飛び上がる。


しかし、彼よりも遥かに優れた軽功で、林掌門が先回りしていた。


「易筋経の内功、もっと試してみますか?」


林掌門が言うや否や、敵わないと思ったのか元竹はきびすを返す。


そして、剣を抜き雪梅夫人へ向かっていく。


「愚かな。」


そうつぶやいたのは趙景だ。


彼女の言う通り、勝負は三手で決着した。

雪梅夫人の刀法は達人の域、敵うはずがなかったのだ。


「元竹さん、どうして…」


「父の代から、ずっと助けてくれていたではありませんか。」


俺の言葉に元竹は少しの間うつむくと、意を決したように話し出す。


「李空の父は高官だった。」

「仕事は役人の取り締まりだ。」


「しかし、この国の役人で清廉潔白な者は少ない。」


「俺の父は地方の小役人だったが、ある日、やってもいない賄賂の罪を着せられた。」

「そして、釈明の機会もないまま処刑された。」


彼の瞳から涙がこぼれ落ち、頬を伝っていく。


「李空の父は、自分と同じ高官を守るため、当時まだ20代だった俺の父を身代わりにしたのだ。」


「高官の賄賂など、小役人にそれほどの銀子があるはずはないし、そんな大それたことを出来るわけがない。」


「誰の目から見ても無実の罪だったが、小役人の命など誰も気にはしなかった。」


元竹の言うことが事実なら、恨まれて当然の所業だ。


「だがもう良い。」

「仇は討ったのだ、この世に未練はない。」


そう言うと、彼は自ら柱へ向かって走り額を打ち付け、命を絶った。

無残な最期だ。


しかし、それは李空の父親の行いであって、彼の罪と言えるのか?


それに、辛いだろうけど、仇討ちに意味があるのだろうか。

しかも、結局は自分も命を絶つなんて、悲し過ぎるではないか。


「解せんな。」


元竹の亡骸を見つめながら、張掌門がつぶやいた。


「ニ弟は知らないだろうが、李空殿の武芸は達人の域だ。」

「もし元竹が下手人だとしたら、これほど一方的にやられるはずがないのだ。」


林掌門は彼の言葉を聞くと、静かに頷く。


張掌門の言う通りだ。

確かに、この話しにはまだ裏があるな。


もし元竹が下手人でないとしたら、一体誰が何のために…


「死人も出てしまった。今日は、ここまでにしよう。」


「李鏢頭の疑いは晴れたんだ。」

「真犯人の調査は、あらためて俺たちが進める。」


張掌門の言葉に甘え、俺たちは鏢局へ戻ることにした。



部屋に戻ると、どうやって侵入したのか、そこには黒いフードの男が待っていた。

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