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李家剣夢譚  作者: 守田
秘密組織編
11/49

第1話 虎門鏢局の再建(前半)

李師師は、祝辞を述べるなり少林寺へ旅立ってしまったが、鏢局の再建は全て岳飛に任せたそうだ。


岳飛は、開封府で虎門鏢局の屋敷が官軍に囲まれていた時、竹琴、菊笛へ襲い掛かってきた男だ。

彼は幾多の戦いで名声を得て、将軍の地位にある。


さらに、聞くところによれば開封府も金軍に敗北したそうだ。

その後、宋の都は臨安府となっている。



今となっては、李師師の言葉を信用するしかない。

しかし、臨安府に到着するとすぐに、不安は杞憂に終わった。


「李海殿ですね、張青と申します。」

「と言っても、初めてお目にかかる訳ではありませんが。」


岳飛将軍と一緒に襲い掛かってきた男だ。

張青は俺も実際に見ているから、もちろん覚えている。


「虎門鏢局の再開準備は、既に整っております。」

「まずは、屋敷へご案内しましょう。」


ここまでしてもらう義理はないと思うが、全て李師師の手配だろう。


屋敷に着くと、スモモの花が咲き乱れていた。

開封府の屋敷と全く同じ、驚くほど正確に再現されている。


そして、そこには岳飛将軍が待っていた。

将軍の彼がこんなところまで来るとは、何か裏がありそうだ。


「岳飛と申す。」


「さぁ、入られよ。」

「開封府の屋敷を再現させている。」


彼の言う通り、庭も間取りも完璧に再現されていた。


「李師師からは、塩の経路を守って欲しいと言われている。」


開封府の屋敷で、帳簿は役人に渡ったものと思っていたが、岳飛将軍はこちら側の人間ということか。

俺は礼をすると、疑問に思っていたことを聞く。


「これほどのご厚意を頂けるとは恐縮です。」

「岳飛将軍が自ら足を運ばれるとは、何か重大なお話しがあるのでしょうか?」


彼は頷くと、神妙な顔つきで話し出す。


「なかなか鋭いな。」


「開封府で、李師師の任務を遂行していたことは知っている。」

「今後は私の指示で動いてもらいたい。」

「虎門鏢局は、その隠れ蓑にもなるだろう。」


そういうことか。


しかし、俺が李師師に従っていたのは虎門鏢局を再建するためであって、今となっては従う必要もない。

銀子にも困っていないから、自分で鏢局を立ち上げることもできるのだ。


「それは、ここにいる全員に対するお言葉と受け取って間違いないですか?」


俺の答えを待たず、趙景が問いかける。


岳飛将軍が頷くと同時に、彼女は協力すると言い出した。

考えてみれば、これを断ったら彼女は生きる目的を失ってしまうのだ。


「分かりました。」


「しかし、再建には開封府で実務を取り仕切っていた者、それから私の父が必要です。」

「ご協力頂けませんか?」


彼の表情が笑顔に変わる。


「引き受けてくれるか。良かった、安心したぞ!」


「実務を取り仕切っていた者とは、元竹殿のことだろう。」

「こちらに向かわせているところだから、数日待っていてくれ。」


さすがは世に名高い岳飛将軍、敵に回したら怖い男だ。


「それにしても、良い答えを得られたのは、どうやら趙姑娘のお陰だな。」


岳飛将軍の言葉に、趙景は狐につままれたような顔をしている。


彼の指示で動く組織は、南斗司と呼ばれる秘密組織だ。

正式な官職ではないため、表に出ることはなく、役人でもその存在を知っている者は限られている。


それから数日後、本当に元竹と再会することができた。


「若様、ご無沙汰しております。」


「開封府では、とんだことになりましたね。」

「しかし、ご無事で良かった。」


安堵の表情を浮かべながら話しかける彼だったが、俺も全く同じ気持ちだった。


「元竹さんこそ、危険と隣り合わせの中、父上を探して頂き感謝します。」


「ひとまず、虎門鏢局を再建できることになりました。」

「戻ってすぐに悪いが、副鏢頭の地位をお任せしたい。」


元竹は悩むような表情を見せると、言い難そうに話し始めた。


「その前に…李空様のことです。」


「実は、見つけ出すことには成功したのですが、信じ難いことに物乞いのような姿をされていました。」


「さらに、自ら天地幇と名付けた幇会を作り、幇主となっています。」


鏢局を再建せず幇会を作るとは、一体何を考えているんだ。


「天地幇は誰でも入門を歓迎します。」

「目立った人物はいませんが、弟子の数では五大門派のどの門派をも上回るほどです。」


「各地に弟子がいるため、情報収集は早く正確。」

「狐山派の梅家荘も諜報に長けていますが、天地幇も負けていないでしょう。」

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