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マチェスタ商会再び

左手も右手並みに自在に使えるようにしたくて、

箸の扱いから挑戦しようとしたら腱鞘炎になりかけました。

だいたい怠惰です。






 と、いう事で日が暮れる前に街に戻ってきた。

 

 行きとは違い目的地も決まってるため、最初から牡丹便だ。

 大樹海の低空では鳥系の魔物がわんさかいたが、

 こちらは超高空飛行のため襲われることはない。

 

 

 滞在許可証は一度発行したら期限までは街を出ても

 継続して利用する仕組みなようで、

 紫苑の追加料金を支払い入街した。

 ちなみにここは北門で、ダレ兄ちゃんがいた方は東門だった。

 

 日も暮れ始めたため、

 まっすぐ解体場に向かうとちょうど作業が終わった頃なのか、

 リッパーさんと他数人が

 解体したフレスベルグの成れの果てを運び出すところだった。

 

 

「お疲れですリッパーさん。

 終わったみたいですね」

 

 

 素材の保存場所やら指示を出しているリッパーさんに後ろから声を掛ける。

 すると、グリンッと言う音が聞こえそうな勢いで首を回転させ

 こちらを向いたと思えば、

 満面の笑みを浮かべそのままこちらに近づいてくる。

 怖いキモい。

 こもい。

 

 

「おう!来たかにいちゃん!

 いやあまさかあんな化け物仕留める奴がいるたあたまげたぜ!

 今回はいい経験させてもらった!感謝するぞ!」

「「(……)」」

 

 

 そう言って背中を強烈に叩いてくるリッパー氏。

 やめて。

 普通に痛いからやめて。

 そしてうるさいからやめて。

 ていうか女子二人の目が怖いからやめて。

 

 

「いえいえ、これからも頼むと思いますのでその時はまたよろしくです。

 それで、副会頭さんはどちらか分かります?」

「おう、フィムの旦那は受付に言えば繋いでくれるって言ってたな!

 解体した肉は帰りに渡すから寄ってってくれ!」

 

 

 こういうガテン系の人は正直苦手だ。

 なぜかやたら馴れ馴れしいし、変なところでうるさそうだし。

 特に友情とか絡むと謎な信念みたいの持ってて面倒くさそう。

 これは完全に偏見だけど。

 

 まあそういう事らしいので軽く返事をして二階の商談受付に向かう。

 

 

 改めて説明しておくと、

 このマチェスタ商会ムステルドム支部は、

 今いる棟の一階が解体場、二階から上が商談部屋と副会頭さんの執務室。

 もう片方の棟が一階雑貨、二階衣服、三階魔道具の店舗

 という構成になっている。

 

 これは後で知った事だが、

 魔物の買取に関しては冒険者ギルドで解体買取を行っているので、

 必然、マチェスタ商会の解体場はあまり稼働する事はないらしく、

 結果、久々の仕事なうえ幻の魔物に出会えたという事で

 リッパーさんのテンションが上がっていたらしい。

 

 冒険者ね。

 もちろんあることは知っていたよ。

 でも別に俺は冒険したい訳じゃないし。

 むしろ冒険したくないから隠居する訳だし。

 ていうか冒険者ギルドってある種パンドラの箱だと思ってるからね俺は。

 テンプレみたいに絡まれるのは勘弁。

 

 あと今更だがここは、

 帝国の南に位置するルミニア王国にある西の領都ムステルドムだ。

 この街の北西に進んだところに深魔大樹海があるという感じ。




 

 先ほど副会頭の案内で来た時は気にしてなかったが、

 二階の受付には二人の人物が座っていた。

 ほんわかした感じの狐耳メガネ青年と

 キリッとした感じのうさ耳お姉さんの対照的な二人だ。

 なんだか男の方はボーッとしてるからお姉さんの方に声をかける事にする。

 

 

「すみません、副会頭さんに用があるんですけど……

 あ、名前はミナトです」

「いらっしゃいませ。

 はい、ミナト様ですね、お話は伺っております。

 ご案内いたしますのでどうぞこちらへ。

 ……一旦外しますね」

「は〜〜〜〜〜〜〜い」

 

 

 うさ耳さんに声をかけて正解だった。

 メガネ君に声かけてたら日が暮れてしまいそうだ。

 

 先導してくれるうさ耳お姉さんの後をついていく。

 

 それにしてもここの商会の人間は随分しっかりしているようだ。

 大人顔負けの接客をするロリ店員だったり、

 街ゆく人十人いたら

 確実に全員振り向くぐらいの美女である桔梗と牡丹を見ても、

 態度を変えないここの受付さんだったり。

 まあ、あのメガネ君はしっかりとは違うけど……。

 

 しかしおかげで、

 この商会にくるまでに浴びた視線の数々やリッパーさんの鬱陶しさの影響で

 フラストレーションが溜まっていたであろう女子二人も暴発せずにすんだ。

 ありがたい。

 

 ちなみに牡丹は瞳孔が割れるとイラついてる合図だが、

 桔梗の場合は表情がなくなる。

 

 これ要注意。

 

 そうして案内されたのは、

 前回副会頭さんと対面した部屋ではなく

 三階の奥にある他の部屋よりもひと回り大きな扉の前だった。

 うさ耳さんがノックと共に声を掛ける。

 

 

「副会頭、ミナト様がいらっしゃいました」

「っ!入ってもらってくれ」

「かしこまりました。

 ……だそうですのでどうぞ、お入りください。

 私はここで失礼致します」

 

 

 そう言ってそそくさと戻って行くうさ耳さん。

 ……随分事務的な人だ。

 まあ仕事なんだからそれが普通か。

 

 とりあえず部屋に入る。

 

 

「ああ、お待ちしておりました。

 っと、お連れの方々ですね、

 初めまして私マチェスタ商会副会頭のフィムと申します。

 どうぞよろしくお願いいたします」

 

 

 執務をしていたのだろう机からわざわざ立ち上がり

 初顔の桔梗らに向けて挨拶してくる副会頭さん。

 こちらも挨拶を促す。

 

 

「桔梗じゃ」

「牡丹と申します」

「紫苑だ!」

「聞いていた通り美しい方々ですね。

 驚きました。

 とはいえ、まずはどうぞお掛け下さい」

 

 

 顔通しも済ませたところで勧められるまま部屋の中央にあるソファーに座る。

 フッカフカ。

 フッカフカだ!

 かの有名な、人をダメにするソファのような腰の沈み具合だ!

 ……座ったことないけど!

 決めた、これ買おう。

 

 

「さて、それでは後に回すことでもないですので早速買取金額の方なのですが、

 結論から申しますと

 白金貨四枚と金貨八十二枚の総額四千八百二十万フラムとなりました。

 ……ご確認ください」

 

 

 そう言ってドサリと机に上げられるトレーに乗った硬貨の山。

 いきなり小金持ちである。

 いや、もはや大金持ちか?

 

 

「はい、確かに受け取りました。

 それにしても随分高額になりましたね?」

「ええ、それはもうフレスベルグが大半ですよ。

 過去数百年で片手で足りるほどしか討伐例がない幻の魔物ですからね。

 一部の竜種よりも貴重なので高額にもなります。

 ちなみに内訳ですが、

 さるところから入手したという品々が八百二十万フラムで、

 残りは全てフレスベルグのものですね。

 あ、肉の方は抜いた値段ですのでご安心ください」

 

 

 まあ確かに、あれだけの高空に行く技術はこの世界には無いのだろう。

 幻と言われるのも納得かな。

 

 

「あれがねぇ……。

 稼ぎ放題だな!」

「そうじゃの。

 あの程度でこれだけ儲けられるなら今後金についてはなんの心配もいらんの」

「まあ、そこまで大金の必要性は感じませんけどね」


「……」

 

 

 片手間で入手した素材がこんな大金に化けたことに、

 世の苦労している人々を盛大に馬鹿にしたような発言をするうちの三人に

 呆気に取られる副会頭。

 すると、恐る恐るという態度で聞いてくる。

 

 

「あ、あの、フレスベルグを見た時は驚きで聞き逃してしまったのですが、

 これはどのようにして入手したのですか?

 調べてみたのですが、この魔物は普段は相当高い空を徘徊していて、

 奇跡的に地上に降り立った場面に出くわし、

 尚且つその高速機動と最高位の雷魔法に匹敵する攻撃を凌げなければ

 討伐できないという実質ほぼほぼ入手不可能な存在とのことだったのですが……」

「俺が斬った」

「え?」

「俺が空で斬った」

「え?」

「待て待て。さすがにその説明じゃ分からんじゃろう。

 正確には、牡丹に乗って空を移動していた時に彼奴が突っ込んできたところを、

 紫苑が切り倒したと言うのが事実じゃ」

「も、申し訳ありません。よく分かりません……」

 

 

 そりゃそうだ。

 はなから桔梗には説明する気がないのだから。

 からかっただけである。

 

 

「えと、まず今から話すことは全て事実と理解した上で聞いて欲しいのですが。

 前提として俺以外の三人は正確には人間ではなく怪異……

 この世界で言ったら知能のある魔物のようなものなんです。

 それがまあ色々あって人の姿を手に入れて、俺の家族になったわけで。

 で、本題なんですが、この街に向かう際に

 ボタンに本来の姿に戻ってもらってその背に乗って空を飛んできたんですけど、

 その途中でフレスベルグが突っ込んできたので、

 ついでに狩って来たって感じなんです」

「ちょ、ちょっとお待ちください!

 知能のある魔物と言いますと、霊獣ということですか!?

 ……あ、いやそうですか。世界が違かったのでしたね。

 ミナト様の世界にはそのような存在がいるということでしょうか。

 いやはやこれは、なんとも……」

 

 

 人は自身の常識を超える出来事に遭遇すると思考がショートするか、

 理解を拒否することが大半なのだが、

 副会頭さんはなかなかできた人なのだろう。

 自身で納得まで持っていったようだ。

 いや、この世界の人間が突発的な事に慣れているだけなのかもしれないが。

 そうして、副会頭は考えが纏まったのかさらに質問してきた。

 

 

「と、ところでなんですが、最初にシオン様は斬ったと申しておりましたが、

 皆様どれぐらいの実力者なのでしょうか。

 正直フレスベルグを斬ったと言われましても中々想像しづらく、

 冒険者登録もしておられないようですので比較対象が無くてですね……」

 

 

 どれぐらい、か。

 中々に難しい質問だ。

 最強です、なんて言っても馬鹿だと思われるだけだろうし、

 かと言ってこの世界の人間と比較できるほど把握してるわけじゃ無いし。

 ……あ、

 

 

「そうですね。

 さっき深魔大樹海に拠点を築いてきましたよ」

「え?」

「というか、そもそもこの世界で私たちに勝てる者なんているんでしょうか?

 正直私には想像できません」

 

 

 あ、直球で言った。

 

 

「え!?」

 

 

 副会頭、驚愕。

 

 

「いや、俺ら三人そろっても若には勝てねえだろ」

「え!!??」

 

 

 副会頭、さらに驚愕。

 

 

「そんなの当然ですっ。

 今のみっくんには神でも勝てません!

 ナメクジも裸足で逃げ出すほど強いんですからっ」

「……え?」

 

 

 あ、副会頭、困惑。

 大丈夫、俺も意味わかんないから。

 ついでに本題もドーン。

 

 

「あ、深魔大樹海の魔物の素材も買取お願いできます?

 後でもいいんで」

「え”っ?」






読んでいただきありがとうございますっ!


今後も頑張りますので

ブックマークとかお気に入りとかポイント入れてくれたら嬉しいです。

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