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街へ行こう

第四話です……

 




 そんなこんなで些事(この世界の人からしたら厄災)をこなして進むこと

 二時間弱。

 

 地理についての書物で、拠点にするのに良さげな場所を見つけた俺たちは

 ひとまず城から盗……拝借してきた物たちを換金してしまうために 、

 街近くの地上に降りた。

 

 

「ありがとね牡丹、長距離なのに乗せてくもらっちゃって」

「いえいえ全然!

 何十人乗せてもなんら問題ないですし、

 それに、みっくんならいつでも歓迎ですよ!」

 

 

 牡丹の全長は五十メートルぐらい。

 そりゃ何人乗っても屁みたいなものか。

 

 とまあそんな事は置いといて、今がちょうど正午頃。

 今日中に拠点製作を開始したいため、これからは二手に分かれる。

 と言っても別行動は紫苑だけなのだが。

 

 

「んじゃ若、俺は拠点に出来そうな場所を探せばいいのか?」

「うん、悪いけど頼むよ。

 街について来ても紫苑にとったら退屈だろうしね」

「おう!んじゃ後でな!」

 

 

 そう言って紫苑は風になった。

 彼が向かうのは深魔大樹海。

 ここアルヴヘル大陸の中央、

 下手な小国なら一つまるまる納まるほどの面積を誇るその樹海には

 様々な通り名があった。

 魔の森、禁忌地帯、死の森等々。

 危険な香りのする名前が示す通り、

 大陸の中央という、手にすればその恩恵は計り知れない立地でありながら、

 各国が例外なく手を出すのを断念したという凶悪な森である。

 

 だがしかし。

 だがしかしである。

 それはこの世界の人間にとっての話。

 まだまだ情報は少ないが、

 それでもフレスベルグや帝国の人間のレベルを見る限り問題ないだろうと。

 

 この世界の人は簡単にはやって来れない。

 資源は豊富。

 つまり隠居にベスト。

 そういうわけである。

 住居を建てる手段には当てがあるので、あとは家具だったり、

 雑貨だったり、食料だったりの問題をクリアすれば

 すぐにでもスローライフを始められるのだ。

 多少デンジャラスな場所ではあれど、無問題(モーマンタイ)である。

 

 というわけで、紫苑は拠点に適した場所の選定兼魔物の脅威度確認。

 俺と桔梗と牡丹は素材の換金のため動き出した。

 

 


 ーーー




 街に入るには当然検問に並ばないといけないわけで、

 例の如く並んでいる俺たちなのだが……

 

 

「見られてるのぅ」

「鬱陶しいですね」

「だなあ」

 

 

 目立っていた。

 当然だ。

 男女問わず魅了するほどの、種類の違う絶世の美女二人が、

 さらに輪を掛けるように異国風の服を着ているのである。

 これで目立たない方がおかしい。

 そしてそんな彼女らを率いる俺。

 目だけで人を殺せるんじゃないかという形相で睨まれてます。

 幸い絡まれたりはしていないが、居心地は悪い。

 こうなるんなら紫苑も連れてくればよかったかな……

 

 

 

 

 

「は〜い、止まって〜。」

 

 

 主に男連中からの怨念じみた視線に晒される事数分。

 ようやく自分たちの番になった。

 

 

「んあ〜?これはまたとんでもねえ美人が来たもんだなあ。

 それに見た事ねえ服だ……

 まあいいか〜

 あれば身分証なければ一人銀貨五枚だ〜」

 

 

 とんでもなくダレた兄ちゃんだった。

 その怠惰な姿勢には親近感が湧くが

 門番としてどうなのだろうかなどと考えつつ、

 三人分の銀貨を渡す。

 もちろん帝国の宝物庫から盗……拝借したものだ。

 返す気はもちろんないが。

 

 この世界の通貨事情は単純なもので、銅貨一枚から始まり、

 銅貨十枚で大銅貨一枚というように十進法で桁が上がる。

 貨幣は銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、

 ここだけ飛んで百枚で白金貨というような形。

 通貨単位はフラムで銅貨一枚十フラムだ。

 大陸共通で流通しているのには国々の成り立ちが関係するのだが

 それはまたの機会に。

 

 

「よし、んじゃこれが滞在許可証な〜。

 期限は五日。

 過ぎたら刑罰の対象だからくれぐれも気を付けろよ〜」

 

 

 紙の証書を渡しながら忠告してくれるダレ兄ちゃん。

 意外と仕事はしっかりしているようだ。

 

 

「あの、門番さん。

 ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいです?」

「あ〜?なんだ〜?

 後ろもいるから手短にな〜」

 

 

 そして面倒見もいいと。

 こやつ、ギャップでモテるタイプだ。

 強い……

 と、まあそんな事は置いといて

 これ幸いと質問する。

 

 

「ええ、この街で安心安全な商会の名前を教えてもらいたくて。

 あと場所も」

「ああ、それならマチェスタ一択だな〜。

 大通りをまっすぐ行ったとこにあるロータリーの反対側にでっかく構えてるから

 行けばわかるぞ〜。

 ああそうそう、身分証ないなら冒険者ギルドにでも登録しとけよ〜」

 

 

 ギルドも勧められた。

 気の利く兄ちゃんである。

 行く気はないが。

 

 さて、そんなこんなで足を踏み入れた領都は

 無骨な印象のあった帝国の街とは違い、どこか優雅さを感じさせるような

 これまた整然とされた街並みだった。

 

 さらに帝国との明らかな違いが一点。

 

 

「……亜人とは、なんとも面妖なものじゃ」

「はい、私たちも大概ですけれど

 人型があんなにもチグハグなのは不思議なものです」

 

 

 異種族の存在。

 検問に並んでる時から気づいてはいたが、街に入るとその違いが際立つ。

 犬猫兎等々さまざまな種類のケモミミ。

 耳が長く美形が多いエルフなど。

 この街ではあらゆる種族が垣根なく生活を送っている。

 文献でチラッと見たが、やはり帝国は差別派の国だったらしい。

 決別して正解である。

 

 

「一応亜人とは呼ぶなよ?

 蔑称みたいだから」

 

 

 この世界の種族は大別すると三種。

 人口最大の平均種族、” 人族 ”。

 さまざまな獣の因子を持った種族、” 獣人族 ”。

 エルフとドワーフの総称、” 霊人族 ”。

 帝国では人族の出来損ないとして他種族を亜人と呼んでいるらしい。

 カスである。

 

 そうして人々の視線を集めつつ歩くことしばし、

 ようやくロータリーについた。

 

 結構大きな広場なようで、四方には各区域へと伸びる大通り。

 中心にはお決まりの如く噴水が鎮座し、

 それを囲むように軒を連ねる屋台があたりに活気を与えている。

 そんな広場の噴水を挟んで反対側。

 大通りに面する角の敷地に

 でかでかと存在感を示す三階二頭立ての建物。

 ありました。

 マチェスタ商会。

 人の行き来が途絶えないところを見るに、随分繁盛しているようだ。

 

 

「んじゃ早速行きましょか」

 

 

 そう言って、なんとはなしに右側の店舗に入る。

 瞬間ザワッと館内が湧いた。

 もちろん美女二人のせいである。

 

 

「うーん。毎回これだと流石に鬱陶しいですねえ。

 ……消しますか?」

「やめてやめて!

 ……とりあえず俺が用事済ませてくるから二人は適当に待っててよ」

 

 

 ここに来るまでにも散々視線に晒されてストレスが溜まっていたのか、

 物騒なことを言う牡丹に待ったをかける。

 瞳孔が龍のように縦に割れているあたり相当キテる。

 いくら人型とはいえ元は怪異。

 物騒な一面がたまに出るので注意が必要だ。

 

 

「それなら妾たちは外で待っていることにしよう。

 ここよりか、多少はマシじゃろうし」

 

 

 そう言って二人はさっさと店から出て行った。

 これは対策を練らないとその内死人が出るかもしれない。

 美人すぎるのも考えものだなあ。

 なんて考えながら、近くにいた店員さんに声をかける。

 

 

「すみません、買取をお願いしたいんですけど。

 ……あれ、買取ってやってます?」

 

 

 声をかけて気づいた。

 ダレ兄ちゃんに商会の事は聞いたものの、

 換金目的ということを伝えていないことに。

 

 

「はい賜っております。

 商談は隣の建物で行っておりますので、ご案内しましょう」

 

 

 やってたらしい。

 先導してくれる店員さんについて歩きながら、軽く店内を見回す。

 皿やグラスなどの雑貨から衣服、さらにコンロのようなものまで、

 幅広く取り扱っているようで品揃えも多彩だ。

 街並みや衣服などを見るにこの世界、近世あたりの文明のようで、

 科学の発達は見られないが、

 その分は魔法で補っているらしくそこまで不便な生活環境ではなさそうだ。

 

 

「それではただいま担当が参りますので、

 お掛けになってお待ち下さい」

 

 

 その後簡単な机とソファーがあるだけの質素な部屋に案内されると

 店員さんはそう言って部屋を出て行った。

 ちなみに言葉遣いや態度からあえてツッコマなかったが、ロリだった。

 褐色肌のロリ。

 耳が尖ってるから妖人族なのは間違いないが、ロリだった。






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