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理不尽な召喚

皆さんは異世界はあると思いますか?

宇宙人は存在しないと証明できていないように、異世界ももしかしたら………






「……ん」

 

 

 手足から始まって、

 腰、胴、と徐々にだったのに顔に達した瞬間意識途切れるってどうなの……?

 いや、確かにいつまで意識残るのかっていう疑問はあったけど……

 顔面消えても意識残ってたらそれはそれで気味悪いけど……

 

 まあいいや

 

 ひとまず、床に伏せていた体を起こす。

 どうやら今いる場所は窓一つないホールのような場所みたいだ。

 壁に沿うようにぐるりと配置された暖色の松明が部屋を照らしている。

 石造りの冷えた床には魔法陣。

 ……魔法陣。

 

 そして現在の状況を作り出したであろう人たちが多数。

 一応伏せたまま観察しているため顔が動かせないので後方は確認できないが、

 正面出入り口らしき扉付近に屯う着飾った爺さん筆頭に、

 剣を帯びた騎士らしき人やローブを羽織った魔法使い然とした人々。

 

 もうこの辺で察した。

 

 俺だって高校三年生の男子。

 まあ普通の高校生ではないかもだけど、

 流行りのサブカルにも一応目を通してる。

 

 まあうん。あれよ。異世界だよね。異世界召喚。

 

 爺さんはいかにもって感じだし。

 隣にめちゃくちゃ着飾った、

 いかにも籠絡しますよ〜って感じの同い年くらいの女性いるし。

 あとは脇を固めるそこそこ腕の立ちそうな強面を筆頭に騎士っぽい人たち。

 近衛的なやつかな?

 杖を構えてる多数のローブたちは宮廷魔道士的な?

 

 うん。もう確定。これ異世界召喚。

 

 もうあからさまだよ。

 サプライズにすらならないよ。

 

 

「目は覚めたようだな」

 

 

 とか思ってたら爺さんに声かけられた。

 

 

「ええ、おかげさまで。

 んで?これはどういう状況で?」

 

 

 今後の展開でとるべき行動も決まってくるが、

 とりあえずは対話で様子を見る事にして、

 ひとまずは念のため自身の内に意識を向け気を巡らせとく。

 一応、用心のためにね。

 すると気づくある異変。

 

 

「(あら?)」

 

 

 しかしそれは悪い事ではなく、むしろ歓迎できる事。

 

 

「うむ、ではまずは自己紹介としよう。

 我はここグロリア帝国第十四代皇帝バロス・ディル・グロリアだ。

 そしてこれが娘の」

「グロリア帝国第一皇女ルミナ・ディル・グロリアでございます。

 よろしくお願い致しますね、稀人さま」

 

 

 図らずも得た嬉しい特典に俺が内心頬をつり上げてると、

 挨拶してきた爺さんと女性、改め皇帝と皇女。

 まあそうでさーねー。

 格好で想像つくよ。

 厳つい顔面の、これ見よがしに王冠を乗せた皇帝さんと、

 表面上は笑みを浮かべニコニコしているやたら着飾った皇女さん。

 でも二人とも目が笑っていない。

 どこか野心のようなギラついたものを二人から感じてちょっと嫌になった。

 これは面倒そうなパターンかな?

 てか姫さんは何をよろしくするつもりなのかね。

 ナニかね……?

 下心ビンビンじゃ無いですかヤダ〜。

 

 

「はあ。

 よろしくお願いします……?」

 

 

 よろしくするつもりは微塵もないが、一応挨拶。

 名は名乗りません。

 

 

「さて、どういう状況かという事だったが。

 大宰相、説明を」

「はっ。

 それでは僭越ながら私モルドが説明させていただきます。

 実は今回召喚させて頂いたのはーーー」

 

 

 はい。

 長いので省略。

 皇帝さんの隣にいたダンディなおじさんが話し始めたが、

 いやあ長い長い。

 全校集会での校長先生のやたら長い例え話並みに長いよ。

「というのも先日〜」みたいな。

 キミの話が長いせいでポツポツ体調不良で離脱する人が出るという事を

 知りなさい。

 

 とまあ話を戻して、回りくどい言い回しだったが要はこうだ。

 

 ここはあなた方のいた世界じゃなくて異世界ですよ〜。

 大陸統一したいから力を貸してくださいな〜。

 協力してくれるなら生活の保証、給金の保証、安全の保証しますよ〜。

 でも協力してくれないならその限りじゃないですよ〜。

 ていうか召喚魔法自体最重要機密だから、

 協力してくれないなら邪魔になる前に殺しますよ〜。

 ちなみに元の世界に帰すための魔法なんて知りませんよ〜。

 異世界の人は強力な力を秘めてるからすぐ強くなれますよ〜。

 貢献によって相応の地位を与える用意がありますよ〜。

 

 とのことだった。


 …………選択肢ないやーつ。

 協力か死かでした。

 

 まあ、俺には関係ないけど。

 

 

「さて、どうだ?

 協力するか、決別するか。

 あくまで決めるのは貴様だが、 協力するならこの娘をやるぞ?」

 

 

 ニヤリと笑みを浮かべ問うてくる爺さん。

 白々しいなあ。

 あちら側はあくまで自身の意思で選んだという事実が欲しいんだろうけど。

 茶番だ。

 てか、貴様て。

 二人称貴様て。

 仮にも客人にそれは無いでしょう。

 もはや皇帝さんの中では既に手駒という認識なのかな?

 あ、姫さんはいらないなあ。

 生憎間に合ってます。

 

 

「その前に聞きたいことがあるんですけどいいです?」

「む? なんだ、我も暇ではないが。

 まあよい。

 一つなら答えてやる」

 

 

 やや強引に話を切った俺の言葉に

 訝しげにこちらを見てくる皇帝さんだがスルーして、話を進める。

 もうこれまでの話からして協力とかあり得ないので、

 ちょっとした意地悪をする事にした。

 まあ帝国からしたらちょっとしたじゃ済まないと思うけど。

 

 

「それなら遠慮なく。

 この、俺を召喚?した魔法陣はどうやって作ったのかなあと思いまして。

 何か文献とかにでも書いてあったんですか?

 それとも自作で?」

 

 

 俺は、さもただ興味を持っているだけ風の表情で

 床に刻まれた魔法陣を指差し質問する。

 

 

「なんだそんな事を……まあよい。

 これは元々この部屋に刻んであったものだ。

 最近になって偶然書物を発見して、使い方を知ったのでな。

 腐らせるものでもないと今回使ってやったのだ。

 ふんっ、どうだ、これでよいか?」

 

 

 思いの外簡単に話してくれた。

 もっと疑ったりしてくるかと思ったけど、

 優位性を疑ってない証拠だね。

 しめしめである。

 

 

「うん、いいことが聞けたありがとう。

 これでもう被害者が出ることがなくなるよ。

 いやあよかったよかった」

 

 

 そう言って俺はおもむろに印を組む。

 もう下手に出る必要もないし、聞きたいことも無い。

 決別の意も込めて術を起こした。

 

 

「む、きさま何をーー」

「っ陛下!ーー」

 

 

 ー五法陰道術 火ノ相ー

「『壊灼』」

 

 

 俺の不審な動きに強面騎士さんが反応するが時既に遅し。

 俺の鍵言を合図にホールの床がほんの一瞬、

 焼けつくような極光を発して消えた。

 召喚の魔法陣もろとも。

 

 後悔先に立たずとはよく言ったもので、

 皇帝さんもようやく先ほどの先の質問の意味を理解したのか、

 その顔には隠しきれない怒りが浮かんでいる。

 

 俺がやったのは簡単なこと。

 地面に刻まれていた魔法陣を修復不可能なくらい根本から消し去っただけ。

 また誰かこんな意味の分からない理由で誘拐でもされたら可哀想だしね。

 

 

「……き、さま。 何者だ。

 文献には異世界のものは素質こそ目を見張るものはあれ、

 初めは剣もまともに握れぬと記しておったはず。

 ましてやこのような我も知らぬ魔法を使うなど」

 

 

 ああ、やっぱり過去にも召喚例はあったのか。

 その人も今回みたいに強要された上で使い潰されたのかな?

 南無

 

 

「ああ悪いけど本名は名乗らないよ。

 仲良くする気もないしね。

 俺は”陰陽師”。地球で最後の陰陽師。

 まあそんな事言ってもわからないと思うけど」

「お、オンミョウジ?

 それは魔法使いの名前でしょうか?

 それに、これは…… どういう事でしょう稀人さま。

 事によっては許す訳にはいかなくなりますが」

 

 

 そう言って皇帝さんの隣で話を聞いていた姫さんの顔は

 先ほどまで浮かべていた笑みは完全になりを潜め、

 今は盛大に顔を顰め頬をひくつかせている。

 化けの皮剥がれてますよー。

 

 

「どういうことも何も、

 こんな勝手な都合で誘拐されるなんて たまったもんじゃないでしょ?

 だから、壊させてもらったんだよ。二度と使えないようにね。

 いやあ、他にも陣の作り方があったらそちらも消しにいかないとだったけど

 そうじゃないみたいで助かったよ。

 んじゃ、そういうことで」



 そう言って俺は驚愕の視線の中、ホールの出口へ向けて歩き出した。


始まりました。

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