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一家の主として……

閑話が続いてごめんなさい……






「ミナトにぃ!あそぼー!」

「……ゴフゥ!」

 

 

 死の森での生活が始まって三日。

 森の中にぽつんと佇む孤島の邸宅

 および庭の探索を終えたエルナがそう言ってダイブしてきた。

 今は朝の六時。

 当然夢の中へと旅立っていた俺なのだが、子供のエルナにそんな事は酌量されない。

 どうして子供っていうのは特に用事もないのにやたら早起きするんだろうか。

 

 

「……まだ、寝る……」

「ミナトにぃ!あそぼー!」

「……ゴフゥ!……もうちょっとだけ寝させて!」

「ミナトにぃ!あそぼー!」

「……ゴハァ!!……あ、あの、もう少し……」

 

「ミナトにぃ!あそぼー!」

「ミナトにぃ!あそぼー!」

「ミナトにぃ!あそぼー!」

「ミナトにぃ!あそぼー!」

「ミナトにぃ!あそぼー!」

「ミナトにぃ!あそぼー!」

 

 

 その後、十分ほど小悪魔の訴えは続いた……。

 

 

「よ〜し、せっかくだしみんなができる遊びを教えよう!」

「お〜〜!」

 

 

 結局起きた。

 悪夢のように続く掛け声&ダイブに耐えられる訳がない。

 という事で遊ぶ……前に朝食を食べた俺とエルナは庭に来ていた。

 

 

「さて、それでは早速その遊びに必要な道具を作りたいと思いますっ!」

「お〜、おもちゃ!」

「そう、おもちゃです!

 ……さて、ここに取り出しますは檜の端材!」

「はざいっ!」

 

 

 そう言って位相空間からこの邸宅を作る際に余った、檜の端材を取り出す。

 ちなみに、深魔大樹海に生息する魔物や植物等は外界に存在しない新種が多く、

 この檜擬きも例に漏れず新種だったため、勝手に檜と名付けたのだ。

 情報源は桔梗である。

 

 

「そうしましたらこいつを……こうしますっ」

「おおっ!?」

 

 

 言うと同時、端材を上に放り投げ、四十×四十の正方形に成型。

 さらに八×八の六十四マスを刻んだら……はい完成。

 続いて、五法術の土ノ相ではあるが術ともいえない技術で白と黒の丸石を、

 予備を含めて七十個作ったら……

 

 

「じゃーん!

 皆さん大好きオセロでーす!」

「おおー!オセロー!」

 

 

 そう、オセロである。

 簡単だが奥深い。

 お手軽ゲーム代表のオセロさんである。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「あーーまた負けたーー!

 もーいっかい!」

 

 

 あの後リビングに戻りルールを教えて早速始めたのだが、

 まあ当然幼児に俺が負けるわけはなく。

 既に十戦は超えた。

 ちなみにわざと負けてあげると言う選択肢は存在しない。

 これも社会の厳しさを教えるためだ。許せ。

 ていうか相手にならなすぎて飽きたのだが。

 

 

「何してるんですか?」

 

 

 なんて考えてたら、休憩中なのかアルマがやってきた。

 徐々にではあるが肉付きも年相応まで戻りつつあり、

 鮮やかな唐紅色の髪も既に艶々だ。

 そういえば地球では赤髪なんて

 相当イキッた近づきたくない人間ベスト三に入る存在だが、

 この世界の人々はカラフルな髪色でありながら

 なぜか違和感を覚えない顔立ちをしている。

 不思議だ。

 

 

「おねぇちゃん!これミナトにぃが作ってくれたオセロっていうゲームなんだけど、

 あたし全然勝てないからかたき取って!」

 

 

 そう言う事になった。

 とりあえず簡単にルールを説明して一戦練習してみる。

 

 

「なるほど……。四つの角はひっくり返される事は無いため重要。

 かと言ってそればかりに気を取られると打つ手がなくなって負けてしまう、と。

 奥深いですね。

 ……これはミナトさんが考えたんですか?」

「い、いや、俺が作った訳では無いんだけど、俺らの世界で人気のゲームなんだ」

 

 

 地頭がいいのだろう、勝つための肝をすぐに見抜いて見せたアルマ。

 手強い予感。

 そして本番、序盤はぱちぱちとスムーズに進めて行く。

 

 

「あ、おねえちゃん!そこいっぱいひっくり返せるよ!」

「?なんでそっちなの?」

「ああ!そこじゃ取られちゃうよ〜!」

 

「ごめんねエルナ。ちょっと静かにしてて?」

「あぅ……」

 

 

 エルナ、六歳。

 考えるのが苦手な女の子である。

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

「ふぅ……負けてしましました。

 さすがミナトさん、お強いですね」

「いやいやアルマこそ、初めてなのに手強くてびっくりだよ」

 

 

 危なかった。

 初心者に負けるところだった。

 なにやら数手先まで読んで打ってきてたみたいで、

 油断できない状況が続き、思いの外白熱してしまった。

 結局ギリギリで勝つ事はできたけど、次やったらどうなるか。

 アルマってば恐ろしい子っ。

 

 

「しかしこの遊びは面白いですね。

 世に知れたら一気に人気が出ますよっ。

 ……ところでよければもう一回……」

「あ、あーごめん。

 俺今からやることあるから、エルナとか桔梗でも誘ってやってみてよ」

 

「おねえちゃん、次あたしとやろー!」

「エ、エルナかぁ〜。

 しょうがないなぁ、お姉ちゃん手加減しないぞ〜?」

 

 

 姉妹の会話を背に自室へ戻る。

 正直すぐに負け越す未来しか見えないので戦略的撤退だ。

 卑怯者というなかれ。

 この邸宅の主として、情けないところを見せる訳にはいかないのだ。

 ……あ、ダラダラは別ね。

 

 

 その後しばらく。

 何やらエルナにとって俺はゲーム製造機とでも認識されたのか、

 与えられたゲームが飽きるたびに新しい物をせがまれるようになった。

 結果、オセロを始め、ジェンガ、トランプ、将棋を作った。

 特にトランプはいろんな遊びがあるため好評だった。

 ババ抜き、銀行、大富豪、七並べ、ポーカーなど、トランプこそ遊びの王様である。

 ちなみに桔梗とアルマはもっぱら、将棋にハマっている。

 彼女ら頭脳派なだけあって白熱するらしく、

 その場だけすごいプレッシャーを醸し出すことがあるんだよなぁ。

 もう絶対頭使う系のゲームじゃアルマに勝てない。

 桔梗にはもともと勝てない。

 無念。

 

 

「あ、ミナトさん。

 よければ久しぶりにオセロでも「パスで」……あ、はい」



 情けないところを見せる訳にはいかないのだ……

 

 

 

 








 

 

ですますございます

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