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私のお友達

「あら、ごめんなさい。貴族じゃない方の家には使用人は居ないと思ったので、勝手にお邪魔してしまいました」


 きょとん、とした様子で私の嫌味を尽くかわした上で嫌味を言ってくる。これは確信犯ですね、プレイヤーだった時には主人公はいい性格でしたが、此方もまさに『いい性格』をしていらっしゃいます。


 この女、私が一人で惨めな生活をしているのだろう、それを見て馬鹿にしてやろうと思ってやってきた事は明白です。というか連れてくるな馬鹿皇太子。


 私の動きやすいワンピース姿を見て鼻で笑っています。あぁ、こういう時の女って醜いものなんですね。喪女だから気付かなかっただけで、前世でもこんな目を向けられていたのかもしれません。


 私がまた何か言おうとした絶妙なタイミングで、完全に気配を消していたシェルさんが私の後ろに立ち、肩に手を置きました。


「マリー様、随分と無礼な方を家の中に入れてしまったこと、お許しください。執事として面目が立ちません。すぐに追い出しますので、ご安心を」


「先程から聞いておれば、我が命の恩人に対してなんたる無礼の数々。初めて訪れた場所で心細さもあったろうに、我に恐れることなく近づき、治療を施してくれたマリーを小馬鹿にするにも程がある」


 イグニスさんが続けると、私に近付きシェルさんの反対側から腰を抱きます。喪女でもイケメンに挟まれるのにはだいぶ慣れてきましたが、今日はなんだか……とても、心強いです。


「お前は馬鹿なのか? 婚約していた女性を裏切り、乗り換えた挙句に部屋を漁って国外追放したと聞いていたが。そこに相手の女を伴って来るとは恐れ入った。物見遊山気分で謝罪に来たと言うのなら、そこの不躾な女を連れてとっとと帰れ」


 アオイさんが締めくくり、私とカルロ様、エレーヌ嬢の間に入って睨みをきかせます。


 その広い背中が何からも私を守ってくれる様で、私に触れる二人の力強い腕が背中を押してくれているようで。


「どうぞお幸せに。……くれぐれも婚約したからといってご安心なさらないでくださいね。いつ、誰が、カルロ様のお心を射止めるかなんて、幼少時から婚約していた私にもわかりませんでしたから」


 私のもやもやは何処かに行きました。そう、終わったことなのです。そして、今の私にはこんなに素敵な友達が居ます。人より体も心も強い、アニマルな友達が。なのでどーんと言ってやりました。どうぞ私と関係無いところでよろしくやってくださいませ!


「お帰りは此方ですよ、お二方」


 そして、なんとクリス神様が、執事の格好でリビングのドアを外から開きました。演出ですか、演出ですね、合わせましょう。


 たおやかに笑っていらっしゃいますが、目が笑っていません。怖い。


 エレーヌ嬢は私を取り囲むイケメンに目を白黒させ、私の言葉に顔を真っ赤にして、多少荒い足取りで部屋を出られました。おやおや、皇太子様を置いてけぼりですか。躾のなってないお嬢様ですね。


 カルロ様は沈痛な面持ちで一礼すると、それを追って出て行かれます。クリス神様がお二方を門までお見送りしに行かれました。


 二人が出て行って気が抜けた私がふらつくと、それをシェルさんとイグニスさんがしっかり支えて椅子に座らせてくれます。


 アオイさんも心配そうに此方を見ています。戻ってきたクリス神様もです。


 シェルさんとイグニスさんとアオイさんが視線を交わし、私の周りに跪きました。


「すまなかった。お前の傷を癒すために、ちょっと監視役を脅してやったんだが……」


「謝って済む問題ではありませんでしたね。しかもまさか、別の女を連れて来るとは……」


「俺も知っていてお前の側に控えていたんだが、まさかあそこまでの馬鹿だとは思わず……止めればよかったと心から思う。すまない事をした」


 彼らは順繰りに謝ってくれました。私の為にやってくれた事でしたか……。


 言葉は悪いんですけど。


「いえ、思った以上の最低男だと分かって清々しました! 皆さん、ご尽力くださりありがとうございました。……クリス神様も。上から見ていてきてくださったんですよね」


 見送りを終えて戻って来られたクリス神様は、ほろ苦く笑っています。基本的には私以外には干渉しないよう努めていらっしゃるのでしょう、だから彼らの作戦は止めなかった。でも思ったよりも展開が悪くて、助っ人にいらっしゃったのだと思います。


「マリーの友達ですから」


 私とクリス神様は顔を見合わせて笑いました。


「さて、三人とも。私の為にやってくれたのですから顔を上げてください。……もう終わった事ですから! でも……、動いてくださったのは、嬉しかったです」


 私の周りに跪いたアニマルズにそう告げると、彼らは次々と立ち上がり、三人がかりで私を抱きしめます。


 なんて暖かいんでしょうか。体よりも、心が。


 もやもやの代わりに温かい気持ち一杯になった私は、順繰りに彼らの背をよしよしと撫でます。多頭飼い、という言葉が頭をよぎりましたが、今の皆さんはイケメンの集まりなのでぐっと飲み込みます。


「明日はみんなでシェルさんの美味しい朝ごはんを食べて、またいつも通りに生活しましょう。私は、傷付いてますけど……皆さんと一緒なら大丈夫だって、思います」


 大男三人を宥めて自分から引き剥がし、順番に頭を撫でます。


 申し訳なさそうな顔をしていた彼らも、少し笑ってくれたので安心しました。


 あんな最低男と結婚してたら、側室作り放題をされていた所でしょう。そして正室の座を追われる血で血を洗うような醜い争いに巻き込まれていたに違いありません。危ない危ない。


 婚約破棄されてよかったー! なんて、少し強がれる位には、私は周りに恵まれているようです。

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