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転生ボーナス

 そりゃ前世で必死に攻略してた位ですからカルロ様は大好きです。婚約していたのも政略結婚で幼い頃からでしたが、確かにマルグリートとして過ごしていた私はカルロ様が大好きでした。


 だからこうして、婚約破棄からの国外追放で、神様の元に戻ってきてしまう位のショックを受けたんでしょうね。


「で、何がお望みですか?」


「うーん……」


 マルグリートとしての失恋のショックから未だ抜け出せない私は、何をお願いしようか考えあぐねてしまいました。喪女の私はもう終わった事は仕方ない、というかゲームキャラへの憧れ以上の感情が無いので大分折り合いはつけられたんですが。


 やり直し、はしたくないですね。もう一度フられたら立ち直れる気がしませんし。


 今更また18年間悪役令嬢からの地位返還に動く元気もありません。


「追放されたらどうなるのかって教えてもらえます? それで必要そうなものをいただきたいなと……」


「いいですよ。まず追放先は属国の辺境になります。近くに農村がある、この外れの家が貴女の新しい住処となります」


 一応家なんか用意してくれてるんだ。国外追放といってもそりゃそうよね、追放受け入れ先の国も罪人に好きに振る舞われたら困るでしょうし。


 と、思いながら神様が手ずから出してくれた魔法の水鏡に映ったのは……。


「ボロ家!」


「はい。打ち捨てられて30年は経ちますかね。広さはそこそこありますが、ボロ家です」


 木造に丸い瓦張りの屋根はびっしりと植物が這っていて、所々崩れそうに傷んでいます。


 庭は草ボーボー、近くには倉庫なのか厩なのか分からない建物、背後には鬱蒼とした森……。


 ここに、一人で追い出される。


 ダメだ、私の手じゃ修理できる気が全くしません。マルグリートは悪役令嬢でしたが一応は公爵家の令嬢。非力なのです。


「……修理できる、何かがまずは必要です」


「では、【修復】の魔法を授けましょう。それから、その魔法が存分に使えるだけの魔力も」


 乙女ゲーム『クリスタルの約束』には、魔法が存在します。誰でも使えるわけではありません。貴族階級の人間が基本的には魔法を扱えます。もちろん、魔力量によって個人差はありますが。


 たぶんですが、元々は魔法を使える人間が沢山いた中で、より強い魔力の持ち主同士の……言い方は悪いですが、交配が行われたのだと思われます。そしてより強い魔力を持つ人間が上に立つようになり、交配からあぶれた人が平民へと落ち着いて行ったのかと。


 その辺、歴史の授業でも曖昧だったんですが、前世の知識と照らし合わせて考えてみると納得がいきます。


 中には平民で魔力の素養を持ち合わせた人が生まれることもありました。大抵はそこの土地の領主に養子として迎えられます。先祖返りですね。隔世遺伝とも言いますか。


 そして、私たちが通っていた学園に通い、魔法の使い方、貴族としての教養・知識を身に付けるのです。


 家を直すほどの魔法が使えるとなると、それはとんでもない魔力量になります。


「え、そんなにいいんですか?」


「18年間何も手出しできなかったので、せめて国外追放後の人生はできるだけ快適に過ごしてほしいと思っています。これでも貴女の事を見守っていたんですよ、他に欲しいものは無いですか?」


 神様の苦笑混じりの言葉に、私は少し考えました。


 ゲットできる時に力はゲットしておくべきです。今後は私もストーリーの知らない、新しい人生ですから。しかも一人きりの。


「では畑作業ができるだけの体力と道具、それから家畜に鶏と牛、羊を数頭。あとは、えーと……何かあった時のためのお金を」


「貴族の地位とか、使用人とか、ドレスだとかそういう物は要らないんですか? 国一つ位なら運命の糸を手繰って貴女に預けてもいいと思っていたんですけど」


「荷が勝ちます。そもそも、もう国外追放は決定してますし……そんな私が一国の王になったら、下手したら戦争沙汰ですよ。運命は運命ですので、きっちり受け入れて今後の生活を万全の体制で楽しみたいです」


「不老不死はどうです?」


「悩みますね……、どうせ辺境ですし、いっそ不老不死の魔女としてそこに住み着くのもいいですね」


「でしたら相応の魔力と、その魔力が体内を循環して常にその若さを保つようにしましょう。体力も魔力から変換されるようにすれば問題ありませんね。不死に関しては運を上げておきます。余程悪運に見舞われて致命傷を負う事がなければ死にはしない程度に。後はお金ですが、あっても困るものでは無いでしょうから少し多めに持たせましょう。家畜や道具は近くの村で手に入ると思いますよ」


 あとは生活に必要なものは……、と考えていましたが、特に思いつきません。


 しかし、ふと、頭の中に過ったものがあります。


「あと……もう一つ、魔法を」

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