1話
「母さん、父さん、僕は悪者になるよ。ごめんね。」
男は、血溜まりの中で呟いた。
これは、FDVRで悪役として恐れられた一人のプレイヤーの物語。
VR元年から76年、VRも普及し一般家庭でも気軽にVRが楽しめるようになった。そして、人の夢を見る仕組みを応用することによりフルダイブ型VR(以下、「FDVR」という)が米国のメーカーから発売された。カプセル型のそれはたちまち世界中で爆発的な人気をもたらした。
それにともない各国で法整備がすすみ、日本においても遅れながら仮想現実整備法案が可決され、一般家庭でもFDVRが楽しめるようになった。
『Original 9 Vector<オリジナルナインベクター>』は日本のトップメイカーが莫大な時間と開発費をかけて開発をした国産FDVRMMOである。
『Original 9 Vector<オリジナルナインベクター>』(通称:お鍋)は、自分の両親を選択することで自分の種族を決める独特な特徴があった。選べる両親の種族は、ヒューマン、ドワーフ、エルフ、機人、獣人、魔人、ドラゴニュート、フェアリー、ジャイアントの9種類である。
それぞれの両親からスキル、種族特徴がランダムで遺伝され、それに加えて、パーソナルデータからその人オリジナルのスキルが付与される。
ここにも一人、新たに『Original 9 Vector<オリジナルナインベクター>』を始める男がいた。
「サービス開始まであと10秒……」
カプセル型のマシンに横になった上野命は呟いた。
そして、0時になった瞬間にマシンが起動した。
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気がつくと真っ暗の空間にいた。
「ようこそ命様」
突如頭に響く声。
「ここは『Original 9 Vector<オリジナルナインベクター>』の初期画面となっております。」
「まず、両親の種族を選択してください。」
・ヒューマン
・ドワーフ
・エルフ
・機人
・獣人
・魔人
・ドラゴニュート
・フェアリー
・ジャイアント
命は考える素振りも見せずに、種族を選択した。
「命様のご両親の種族は魔人と機人となります。それぞれの両親からランダムでスキルを取得します。」
「また、命様の種族はハーフ魔人となりました。」
「それではアバターを作成してください。」
︙
「プレイヤーの皆様は、18歳の時点から本編がスタートします。18年間の記憶はOPとして流れますので、お楽しみください。」
「それでは、第二の人生に幸多からんことを」
選択した種族の両親との18年間の人生がOPとして流れた。
そして、ゲームが始まった。