作者、二時間ドラマを懐かしむ7
「あの頃の私は、風呂場なんだから裸ん坊は当たり前で、
刺されたから、お父さんや皆が裸の娘を囲んでいても当たり前だと考えていたのよ(-_-)
今だったら、そんな所で、嫁入り前の娘を刺したらどうなるのか?
親や、知らない男性に裸を見られて息を引き取ることになる娘の境遇に胸がつまるし、
思いやりの無い怪人が嫌いになるわ。」
作者は怒りで早口になっていて、私は愛想笑いを返すくらいしか出来ません。
ドラマじゃないか…
これは、禁句。
「勿論、私だって、ドラマのお約束くらい知ってるわよ。
昭和のドラマでは、
清純派の女優さんと
セクシー派の女優さんが明確に別れていて、
風呂場の殺人シーンは、セクシー派の女優の見せ場って事は。
見せ場のシーンでいかに、豪快に効果的に裸を見せるかが、彼女達の腕の見せ処で、遠山の金さんみたくもろ肌を見せるのは職能だって。」
作者は、そこで深くため息をついて、私を軽くにらんだ。
「時影…。子供の私が、セクシー女優の粋を知ってるって事は…
お父さんが、番組を見ながら、喜んで口走っていたのよね…きっと。」
私は、小さな作者と父親がブラウン管テレビの前で、裸の死体を見ているシーンを思い浮かべました。
「脱ぎやがったな、コンチクショウ!」
と、無邪気に楽しむ父親の隣で、セクシーデビューの女優の裸を効果的にみせるように、死因を冷静に探る探偵を尊敬の眼差しで見つめる少女の作者。
スイカを持ってきた母親は、そのシュールな光景を遠くから呆れて見ている。
「なんだか、昭和感溢れていますね。
あの頃は、まだ、旅芸人が芝居巡業をしてましたからね。
視聴するお父さんは、舞台を見ている感覚なのでしょうね…。」
私の言葉に作者は頷いた。
「そうなのよ。多分、舞台だったら、死んだ女優さん、担架で運ばれ、舞台をおりるときに、スケベ親父達に手を振ったりしてるのよ…。
思春期のお父さんが、死体役の裸の女優さんに手を振られて赤くなるビジョンが見えるようだわ!
ああ、私はノストラダムスのような、なんだか難しいビジョンは見えないのに、こんな変なシーンは、リアルに思い浮かぶのよ?
嫌だわ。」
ふて腐れる作者に、私は、ダージリンの新茶をいれる事にした。
ダージリンの特徴であるマスカットを思わせる爽やかな香りが、作者の気持ちを変えてくれるように。
「私は…不気味な滅亡を見るより、旅芸人と父親の心暖まるシーンを思い浮かべていて欲しいです。あなたには。」
私のその言葉を、作者は複雑な表情で受け止めた。
「時影…。私は、あのお父さんの娘に生まれてきた時点で、
若草物語にも、
赤毛のアンにも、
ちびまるこちゃんにすら、なれないのよっ。
自分の子供の頃の話なのに、R15とか、嫌だわ。」
作者はため息をつき、
私は静かに席をたった。
「お茶をいれてきます。ダージリンのファースト・フラッシュが入ってきましたから。
デザートは苺ショートはいかがですか?」




