作者、二時間ドラマを懐かしむ2
黒いカセットテープの白ラベルには、なんか、恥ずかしい題名が書いてある。
虹色☆ヒットそんぐ
カセットテープの本体が、不透明から半透明のデザインになる、華やかなカセット全盛期。
私の作者の音源はFMで、当時はエアーチェックと言われ、
専用の雑誌まで売っていた。
付録は中綴じのカセットラベル。
ただのイラストや写真の印刷された紙であるが、
なかなか素敵なデザインで、カセットケースに装着するだけで、ちょっとしたインテリアになった。
と、言うわけで、番組の趣味で選ばれた曲を録音するわけだから、歌手名で背表紙が飾られるのはまれだ。
とは、いえ、
松田聖子さんや中森明奈さんは、当時の人気もあり、一時間の特集が組まれることもあるので、上手くすると、カセットテープが一人の歌手で埋まることもある。
が、大概は、番組のテーマでランダムな曲が入ることになる。
再生のスイッチを『ガチャリ』と押すと、はじめの曲は
「マドンナたちのララバイ」
火曜サスペンス劇場…通称「火サス」の名曲である。
「…しかし、なぜ、土曜ワイドの話題からの火曜サスペンス劇場なのでしょう?」
私は、美しいのびのある岩崎宏美さんの歌声を聞きながら作者に聞いた。
「それは、文字数制限の無い公募がアップされたからよ。」
作者はベニア製の折り畳み式の小さなテーブルに、肘をつき、両手を組んで眼前につきだして、世界征服の話でもするように重々しく言葉を発した。
「投稿するのですね?まさか、二時間ドラマ風味のお話を、ですか?」
私は少し呆れて作者を見た。
二時間ドラマ、80年代には人気のこのジャンルは地上波では絶滅したと聞いた。
年寄りすら見放したこのジャンルを、しかも、なろうで、私の作者は、やるつもりなのでしょうか?
「規定では、大人の女性が喜ぶファンタジー。
ジャンルは間違いないわ。」
作者は苦虫を噛み締めたように口をへの字にまげる。
私は、切ない視線を彼女に向けた。
「その顔は、また、見切り発車の思い付きですね。
ダメです。
ミズキ達の話だって、半端でほおっているし、
大体、ミステリーではなく、公募されるのはファンタジーではないですかっ。もう。蘭子と北条はどうするんですか…。」
私は、増え続ける脇役の為にため息をついた。
なんとしても、この辺りで落ち着いて、一つづつ片付けて貰わなければっ!!
作者はそんな私を見つめて、不敵に微笑んだ。
「誰が、蘭子の話を書かないなんて言ったのよ。
逆よ、逆。
今考える設定を話にして、ノベル大賞を目指すのよっ!」
作者はニヤリと笑う。
ドラマだと、脇役は主役のニヤリ(* ̄ー ̄)を持ち上げるところですが、
そんな気持ちにはなりません。
一体、この人、何を考えているんだろう?
「あら?昔の二時間ドラマ、サスペンスはファンタジー要素満載だったのよっ。
思い返せば、題だって…副題をまぜたら、なろうに負けないわよ。例えば…。」
と、作者は一度口を閉じて天井を見上げて考えをまとめた。
「例えば、『氷結美人…茶色いノートに秘められた悪魔の愛』…とか」
「………。」
こんな時、どうしたらいいのでしょうか?
私には、よくわかりません。




