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脇役語り  作者: ふりまじん
パラサイト

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二度目の初恋。

舞台設定を変えて、軽く書くはずの話は、強烈なキャラクターを思い浮かべただけで不安定に動き始めてしまう。


しかし、こんな事を始めるまえは、エタりの原因なんて、イメージが枯渇して書けなくなるのかと考えていた。


物語の作者も、大概がスランプのエピソードで、おかしなキャラクターが暴走するような内容の話は私は知らない。


まあ、プロの作家と違って、私はただの夢想家なんだろう。


怪人を考えて、ボンヤリと楽しんでみたり、なかなか先には進まないが、それでも、大人なので落ち着いたら、作りかけの話に戻る理性がある。


作った怪人を頭の引き出しにしまい、自分の身の丈にあう、普通のキャラクターと地味な話を考える。


田舎の小さな工務店。


四枚ガラスの玄関を開いて、土間を通るとはじめの部屋は仏壇と客間。

今日は客がいるらしい。

明かりに誘われて、障子戸の硝子の部分を覗くと、そこには正座した健二が、まっすぐに奈美の親父を見つめている。

その横には、小さな少女。健二の娘が座っていた。



他の人はどうかは知らないが、私の場合は、物語が頭のなかを浮かんで流れてゆく。


確かに、その前に、大切なポイントは考えていた。

蘭子の説明。


蘭子の茶色い設定ノートと、「プロバンスの赤いしずく」の説明。


冒険小説が読みたくなる強い動機。




これを説明しながら、作り始めた時代小説を()め込んで、感想を述べればそれなりに決着がつく。


少し、始めの設定とずれては来たが、それでも、まだ許容範囲だと思えた。


これで頭のなかで、物語を作り始めたのだ。


がっ。


健二はともかく、娘が登場するなんて、予定にない。


私と奈美は挨拶をしながら、この状況を確認した。


どうも、この子は健二の次女で15才。高校受験も近いのに、街の盛り場で遊んでいたのを見つけられて連れてこられたようだ。


健二、今でこそ冴えないオッサンの姿ではあるが、これでも昔は、ヤンチャをしていて、繁華街には知り合いが多い。


そんな健二の次女が、おかしな場所に出入りすれば、結果はこうなるわけだ。


とはいえ、この娘、特別不良というわけでも無さそうだ。


普通の…いや、いまでは異常、なんかな。

オッサン好みのシンプルな淡いピンクのワンピースに柔らかく艶のあるセミロングの髪を束ねて、茶色のビロードのリボンで後ろに一纏(ひとまと)めに束ねている。


淡い桜色のリップを控えめにつけただけの清楚な姿は、確かに、今風ではない気がする…


嫌な予感がするなぁ…



案の定、どうも、仮想デートのアルバイトに駆り出されていたみたいだった。


夏休みを前にしての、こずかい稼ぎか。


木刀を振り回す不良も嫌だが、おじさんがらみの不純異性行為も嫌なものだ。

次女はふて腐れてうつ向いたままだし、健二は深く動揺しているようだ。


まあ、何があったわけでも無いらしい。

なにかあったら、相手のおっさんも、健二もただではすんでない。

警察と病院での事情聴取になっていたろうから。


「こんにちわ。」

奈美の声を聞いて、一同はお通夜の状態から解き放たれた。


「ああっ。なみちゃん!大きくなったね。久しぶりだよ。」

健二は嬉しそうに奈美を見つめ、30代の奈美はそのコメントに苦笑する。

「健ちゃんは、眉毛が濃くなった。」

奈美は意地悪く微笑むと

「頭は薄くなったっていうんでしょ?」

と、健二は受け返し、そこで緊張がとけたのか、健二の次女が軽く笑って、あわててふて腐れた顔を作り直した。


「どうしたの?」

奈美は部屋のすみにすわり、辺りをみまわすと、そこで一同は問題を思い出して一気に暗い気持ちになる。

「コイツが、援交を…しようとしてたんです。」

「はぁ?してないっていってるじゃない!キモいこと言わないでよっ。」

次女は間髪いれずに叫んで健二を睨む。

「おまえ、こずかい貰って、パンツを見せたらそれは援交だ。」

「パンツなんて見せてないし、どうしてお父さんはいつもそうなの?気持ち悪い言い方しかしないんだから。あれは、違うもん。ちゃんと他の友達もいたし、あれは、本の代金だし。」

「本の代金?」

奈美は、嫌な予感を感じながら聞き返した。

「うん。先輩が作った本の代金を貰っていたの…。で、たまたま、悠登(はると)さんが目撃して、お客さんに声をかけたら、そのお客さんがビビって叫んだりするから…なんか、変なことになったの。」

次女の説明で、その時の映像()がありありと奈美の脳裏をよぎる。


悠登は、20才の大学生だがガッチリ型の体で、高校時代に奈美の家でアルバイトをしていた事がある。

健二とも仲良しで、健二の二人の娘を妹のように愛していた。


無口で日焼けした肌で、髪の毛は、おおよそ自然界ではあり得ないような、そんなブルーがかった黒い髪に、女物のダイヤのピアスを片耳にして、存在感のあるやや厚い唇に大きな瞳の…男が考える美男だ。


そんなのが、現実場馴れした清楚な少女と話しているときに威嚇しながら話しかけてきたら、まあ、普通はビビるわ。


奈美は、ため息をついた。


はやく、誤魔化してこの場を修めよう。


奈美の頭のなかは目まぐるしく回転し出す。


次女の言う先輩の本は、同人誌かなんかで、悠登がいたなら、多分その場所は販売会場かなにかで、先輩の本のなかにはエロ満載に違いない。


内容を健二が知れば、ますます面倒くさいことになりそうだ。


とにかく、文芸本で逃げ切ろう。で、後で健二を抜かして話を聞くべきだ。


「全く、勉強もしないで不可解(おかしな)本の話ばかりして、高校に行けなかったらどうするんですかね…。」

健二は広角を思いきり下げて娘をにらむ。

「はぁ…。でも、そんな、考えるほど悪くもないんじゃないかな?」

奈美は、フォローにまわるが、それが悪手になる。

「悪いですよ。確かに、俺の娘だから、出来は良いとは言えないだろうけど、コイツはいただけない。ほぼ40点代。ノートをみる限り勉強してないのが、まるわかりです。」

健二は夏休みを前にして渡された成績表を思い出して眉間を押さえた。

「今からでも頑張れば…」

思わず口をついて出た言葉に、健二がしがみついた。

「そうですかぃ?奈美ちゃんが言うなら心強い。じゃあ、頼みます。家庭教師。」

「家庭教師!?」

奈美は、突然の展開に混乱していると、健二はピースマークのように指を二本差し出して

「これでどうですか?」

と、聞いてきた。

「二万円?」

丁度仕事が途切れたときなので、小さな収入はありがたい。

「一ヶ月、住み込みで20万でどうです?」

健二は真面目な顔で奈美をみる。

これは、夏休み中見張れ、と、言うことなのか…


奈美は、収入と自由を秤にかける。

大体、そこまでする必要がある少女なのだろうか?

「私、素人だし、ちゃんとした学習塾に通わせた方が、いいんじゃない?」

ここで奈美が及び腰になる。

「なに言ってるんですか?俺がこうして独立できたのは、奈美ちゃんが勉強を教えてくれたからですよ。」

健二は優しい笑顔で昔を思い出していた。

バカをやりまくり、中卒で奈美の家にやって来た健二は、住み込みだったのでよく奈美と遊んでいた。実の家族とうまく行かず、妹が欲しかった健二は、奈美を可愛がっていた。

奈美を先生にして、学校ごっこを良くしていたが、あれほど、つまらない授業内容も、奈美のかわいい声で説明されるとスルリと頭に入ってきた。


夏には、蘭子さんもやって来て…気が向くと花丸をつけてくれた。


おかげで、分数のかけ算、わり算を再度理解し、もの作りに大切な、図形関係の問題、サイン・コサイン・タンジェントを頭に入れ込んで、二級建築士の資格をとれたのだ。

「こ、困ったな。」

奈美は、期待をこめた真っ直ぐな健二の視線に躊躇(ちゅうちょ)した。

そんなに期待されても…奈美もすっかり中学の勉強内容なんて忘れていた。


「あら、いいじゃない。丁度、家にもお金をいれてほしいと思っていたし、部屋は空いてるから、夏休みに女の子を預かるくらいは大丈夫よ。健二さん、支払いは家を通してお願いしますね。」

お茶のおかわりを持ちながら奈美の母が話に割ってきた。


健二も娘が心配だが、


奈美の母も、最近怪しい連中とつるんでいる奈美の事が心配なのだ。小さな女の子をつけておけば、変な男(剛の事か?)にちょっかいを出されなくなる。


こうして、奈美は、少女と夏休みの自由を手にいれた。





と、ここまでの空想は、上手く進んでいた。


これで、少女と余暇を手にいれたのだ。


少女に勉強を教えながら、一ヶ月、小説を書いてもいいのだ。


少しあとから、17才の少年を住み込みバイトで登場させることにした。


ここに来て、この話がちゃんとラノベになってきたことに気がついた。


あれ?なんか、すごく上手く行ってないか?


私はパズルのように組上がるその話を夢中で仕上げ始めていた。


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