作者、パラサイトを振り替える65
「まあ、書籍化はともかく、二次選考に残るために改変は必要だわ。」
作者はそう言って車のキーを取り出した。
現実では、ドライブすら出来ませんから、今日は法廷速度なんて考えずに、仮想世界の夜の海岸を車でぶっ飛ばしましょうか。
「そうですね。確かに、このままでは商品としては売れませんからね。
新刊で売るなら、過去ではなく、少し先の未来の話にしなくてはいけません。」
「分かってるじゃない。私たちは、短編一万字を目指して、コロナに翻弄されてこんなになってるわけで、今までは、とにかく、完結だけを目指していたんだもの。」
作者はそう言って、勢い良く歩き出す。
「未来を補足しなくては行けませんね。」
私も、あわせて歩き出す。前向きな気持ちが南風の様に私の気持ちを持ち上げて行きます。
「補足と言うか…現在の作品が序章…みたく見えるように話を整える必要があるわ。」
作者は車のエンジンをかけました。
私は後部席に荷物を置いて、助手席におさまりました。作者はベルトを閉めると車のライトをつける。
「さて、話を始めましょう。」
作者の言葉と共に設定と車が動き始めた。
BGMをかける。
『ギリギリchop』B'sさんの楽曲です。
この曲は、1999年アニメ『名探偵コナン』のOpとしても使われました。
「時影、懐かしい曲かけるわね。『ギリギリチープ』かぁ…確かに、今の気持ちを、表してる感じするわ。」
と、作者は嬉しそうに笑いました。
「chopですよ。チョップ、ちなみに、意味は無いんだそうです。」
「えーっ、何それ、チープに世界を渡って行くって、そんな話じゃないんだ。」
「はい、基本、ギリギリだけで題名は完成していたらしいです。B'zさんもその時々でコメントを変えている、なんて言うひとがいましたが、さすが大物。
世紀の大作を…アニメの主題歌の題を意味の無い言葉をつけて世に放つのですから、我々もその豪快さにあやかりましょう。」
「チョップ…今さらチョップと言われても(T-T)
まあ、いいか。
この曲、世紀末の曲って感じで、頑張ってたよね。」
作者は懐かしそうに歌を口ずさむ。
「そうですね。当時は、滅びをテーマにした陰鬱な曲と、それを否定するようなはっちゃけた歌に二分していましたね。」
「そうね…そして、ノストラダムス。ああっ、もう、ここに来て、また、奴が登場するとは。」
作者は車のスピードを加速した。
空想なのに、軽自動車で法廷速度と言うのがこの人らしい。
「折角、貴女の世界のドライブなのですから、スピードを上げたらよろしいではありませんか。」
私の台詞に作者はほほを膨らます。
「あら、空想だからこそ、のんびり走りたいわ…
田舎の二車線なんて、のんびり走っていたら、渋滞になるか、煽られるか…なんだもん。
ほら、星だってマシマシにしたんだから。」
作者はそう言って助手席の窓とサンルーフを開ける。 涼しげな夜風と、満点の星空、そして、月に輝く海が見えました。
「確かに、窓を開けて、虫の心配がなく、涼やかな夜風を浴びる…そんな夏のドライブなんて、確かに、夢物語ですね。」
選曲を…間違えましたかね?
なんて考えていると、曲が変わりました。
穏やかなバイオリンのイントロのその曲は『love Phantom』ドラマXファイルの日本のテーマ曲です。




