作者、パラサイトを振り替える6
美しい桃園に作者と二人、甘い香りの台湾烏龍茶を酌み交わし、
桃の精の奏でる馬頭琴に耳を傾けるのです。
流れるは『夜来香』
昭和の曲ではありますが、今回のお話と同じく、香りのある夜の花の歌なのです。
『夜来香とは、特定の花の名前では無いようで、ネットで軽く検索すると三種類の植物がヒットしました。
テロスマ
チューベローズ
ケストルム
どの植物も良い香りを初夏の宵闇に放つそうですが、
恋人に渡すならば、やはり、薔薇科のチューベローズでしょうか?
しかし、漢字のごとく
夜に香り来る花
なのですから、香りが一番大切なのでしょう。
見た目ではなく。
「イエライシャンかぁ…。貴方のそんな姿を見ながら聞くと、
新月の初夏に酒を飲む、一人の位の高い男の話を作ってしまうわ。」
「どんな話でしょう?」
「ん?大したものではないけどね( 〃▽〃)
暗い夜。明かり取りのわずかな蝋燭の光と共に、満天の星を肴に男は酒を飲んでいるのよ。
暖かな初夏の風に紛れて、蛙の声が聞こえてくるわ。
お付きの男は、静かに馬頭琴を演奏し、
高貴な男は、その美しい世界で物思いにふけるのよ。するとね、
どこからともなく、胸を締め付けるような…
甘く、切ない香りが漂ってくるの。
主人が気に入ってるようなので、お付きの男は、その花を取りに行こうとするわ。
でも、主人はそれを止めるのよ。
「香りの主を悩ませるのはやめなさい。」
「は?」
「花の姿は、各自が思えば良いのだ。
この花は『夜来香』と書いて、イエライシャン。それで良いではないか。」
主人の言葉に少し驚いてから…
お付きの男は、馬頭琴を持ち直すわ。
「左様ですね…。無粋な真似を致しました。」
男は少し恥ずかしそうにそう言うのよ。
ふふっ。なんか、すてきでしょ?」
「そうですね。」
嬉しそうな作者に私は笑顔で同意した。
「それにしても…良く、そんな話を思い付きますね。」
私は少し呆れていうと、
「あら?考えるのは一瞬よ。
こうして、書くと尾ひれがつくのよ(-"-;)
三年もこんな事をしてるとね、なんか、説明が長くなるんだわ。
情景が思い浮かんでさ。
これ、良くもあり、悪くもあるわ…」
作者は深いため息をつく。
「口を尖らせたり、百面相をして、面白い顔をしてしまうから、でしょうか?」
私は会話の所で声色を変えたり、顔の表情が面白く…ではなく、豊かになって行く作者を思い出してつい、愛しくなるのです。
「(///∇///)え!!
そんな事してる?嫌だなぁ…。嘘だよね?
じゃなくて、イチイチ話が長くなって、終わらないのが問題なんだわ(;_;)
『パラサイト』の話をしなければいけないのに…気がついたら、もう、こんなに字数と時間を使ってしまったわ(>_<)
だから、終わらないのよ(´ヘ`;)
まあ、でも、この花のお陰で、中国の男性の良いイメージが作れたからヨシとするわ。
なんて言うのか…
最近は、空想の余地を残す男が減った気がするのよ。
声優さんだって…
本来は、声の美しさを競う仕事のはずなのに、
現在は、姿も美しい人が望まれるでしょ?
でも、それはなんか、違う気がするのよ…。」
作者はワインを語るソムリエのような雰囲気を漂わせて、現在のアニメについて語る。
「でも…あなただって、イケメンがお好きでしょ?」
私がそう、からかうと、
「あら、貴方の声を担当する声優さんは、顔ではなく、コンロで湯立つ湯豆腐の土鍋の囁きのような低くて優しい大衆的な感じがあって、
熟成させたブランデーに漬け込んだラムレーズンのように奥深く、鼻から芳香が抜けるような、そんな声に特化する人を選ぶわよ。」
「はぁ…なにか、照れますね。そんな風に言われると。」
私は照れ隠しに髭をなで、少し困りながら目を伏せた。
しかし…この作者、誉める題材も食品を選んでくるのだから、全く。
作品を考えるなら、
花やら、宝石類など、他の例えも練習させなくては、脇役たちが皆、食いしん坊のイメージにされそうです。
「ともかく、昔の中国の良い男のイメージが持てて良かったわ。
80年代の作品に良くあった、少し控えめで思慮深い…。なんて、そんな事より、
プロローグを書いてみたわよ。
確かに、プロローグを作ると、ぐっと、目的が際立つわね(^-^)v
『パラサイト』では、
失踪した雅苗の行方
そして、溶生の異常行動の理由を解明すると終われるのが分かったわ。
後は、それに向けて物語を調整して行くわ。」
作者はやる気を顔に輝かせながら微笑んだ。