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脇役語り  作者: ふりまじん
パラサイト

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51/438

作者、パラサイトを振り替える51

師走(しわす)の夜です。

昭和の雰囲気を含んだこの世界では、忘年会シーズンを迎えて賑わっていました。

街にはクリスマスソングが流れ、

恋人達は、希望に満ちた未来を自分と街に見るのです。


今宵の作者は、手編みのセーターとスラックス姿で、ホットウイスキーを楽しんでいました。

銘柄はオールド。1940年生まれのサントリーのブレンデッドウイスキーです。

「最近、オールドとか飲まなくなったわ…」

作者は、耐熱性のグラスで踊るウイスキーを見つめながら呟きました。

「まあ…基本、お酒に弱いですからね。

そのお湯割りだって…お酒の量が少なすぎて、リアルなバーでは出てこないレベルですよ。」

私は呆れていった。

「あら?ウイスキーはね、特にオールドには思い出があるのよ。

昭和では、お歳暮の定番だったし、

洋酒が珍しい時代は、お菓子作りのブランデーのかわりとか、色々重宝したわ。

あと、近所のおばちゃんとかの人形づくりとか。」

作者はなんだか嬉しそうにそんな話をした。


当時、オールドは、洋酒のバリエーションの少ない時代、手軽な洋酒として出回っていて、

その空き瓶を使った手芸なども色々と考えられていた。

ビンを口のところを接続して、ひょうたん状にしたもので、インデアンの少女の人形を作るのが流行した時期が、作者の頭の中にはある。


SNSのない時代、本当に流行していたのかはわからないが、この人形を作るのに、オールドの空き瓶が4つ…(人形は二人で一組なので)も必要なのにも関わらず、結構な確率でお洒落な近所の家には置いてあった記憶がある。


まあ、それくらい、身近なお酒だったわけだが、確かに、最近は、オールドを見かけなくなった気がするのだ。


「そうですね。税金の関係で、値段が劇的に変わったのが洋酒ですからね。

ネットの情報では、80年代辺りから、流通するお酒の種類も増えて、ウイスキーの一人勝ちの時代が終わるようですよ。」

私の言葉に、作者は愛しそうにグラスを持ち上げて光にかざした。


「そうね、80年代は、若者文化になってゆくもの。

バーから、居酒屋へとドラマの舞台も変化して、

様々な色の酎ハイと恋の物語が生まれて行くんだわ。

酒場の曲も、ながしのギター弾きからカラオケへと変わって行く時代だったわね」

作者はそう言ってホットウイスキーに口をつける。


それから、平田隆生とセルスターズの名曲『蜂のムサシはしんだのさ』をかけてもらった。


この曲は、1972年リリースの曲で、虫が主人公の寓話のような歌詞だったこともあり、子供を含めての大ヒットになった。


「私、この曲を聴くとイカロスを思い出したわ。

と、言うか、大人がそんな話をしたがる曲だったわ。」

「イカロス…蝋で固めた鳥の羽で空を飛び、太陽に近づきすぎて墜落死した、

科学が躍進を始めた時代には、原爆などの科学の暴走などの例えにも使われましたよね。」

私は、そう言いながらオールド・ファッションを注文する。

ウイスキーの銘柄をオールドに指定すると、マスターは軽く笑って「有馬記念も近いですからね。」と言った。

オールド・ファッション…このカクテルはケンタッキーダービーで有名な町の酒場『ペンデニス クラブ』のバーテンダーが考案したお酒と言われています。 日本のお酒を指定したので、年納めのダービーをマスターは思い出したのでしょう。



「私ね、当時はイカロスって、愚かな人間だと思っていたわ。

でも…今は、空を飛べるってだけでも凄い事なんだって、イカロスの気持ちがわかる気がするのよ。」

作者はお酒で頬を赤らめながら嬉しそうに話しかけてきました。


「それは良いですけど…酔い潰れて墜落とか、やめてくださいね。」

「わからない。でもっ、今ね、この脇役…の最新話のところで、私、なんか知らないけど、ラノベ風味のラブストリーを書けてるんだわ…

このまま一万字辺りの短編に仕上げられたら、

本当に、私の文章が現金に変わるかもしれないんだわ。」

作者は嬉しそうに両手をテーブルに置いて手を組んだ。


デシャブ…


浮かれる作者の横で、嫌な予感が私の胸に沸いてきました。


去年の年末、一万字の短編を書くとか言って、そろそろ一年、『パラサイト』の沼にはまりこんでいるのですから。


「ダメですよ。また、そんな欲をだしては。

とりあえず、『パラサイト』を完成させないと。

なにか、閲覧された方もいらっしゃるようですよ。」

私はオールド・ファッションを片手に少しいさめるように言った。


すると作者は、上目使いに私を見て、

「やっぱりダメ?」

と、聞いてきた。

こうして小説を書く動機となった、ふりまじんの仲間の剛さんが、月始めに


給料入ったから、いつでも名古屋に行けるよ(^ー^)

なんてメールを送ってきてから、作者の頭は混乱しているのです。


二万円…せめて、千円でも手にすることが出来たとしたら、作者への素敵なクリスマスプレゼントになるのでしょうが、甘やかす事は出来ません。


「ダメです。」

私のシンプルな答えに、作者は落胆しながらグラスを空ける。


『蜂のムサシはしんだのさ』の寂しいフレーズが、今の作者の背中に染みています。


「やっぱりダメか…。まあ、ね、確かに、恋愛もので完結するかわからないものね(´ヘ`;)


でもさ、何で、学習小説を考えると、ラノベ風味のラブストリーになり、


余興程度の短編ミステリーは、こんな壮大な事になるんだろうね(T-T)


確かに、私、上手く話をコントロール出来ていないもの。

諦めるわよ(;_;)


ああっ。悔しいわぁ…(T-T)


千円で良いから、まずは稼ぎたいわぁ…


甘酸っぱいラブストリーを書いてみたいのよっ。


なのに……なんだろう?この、SFミステリーの沼に落ち込む感じ。


はぁ…


でも、閲覧してくれる人も、ブックマークもいるんだもん。書かなきゃね(T-T)」

作者は少し私に絡むように不満をぶつけていた。


「大丈夫ですよ。剛さんの給料は、日々の支払いに消えたそうですし、

まだまだ、文芸大賞はありますからね。

10万字のまとまったお話の方が、ポイントや閲覧数が稼げますよ。」

私が励ますと、作者は、なぜか膨れっ面で私を見る。

「ダメよ。この話は、ネット大賞に応募するんだから。

一次審査を通過するのよ。

そうだった。書かなきゃね。」

作者は、軽く笑ってやる気を取り戻し始めた。


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