作者、パラサイトを振り替える50
「グダグダ言っていても金にはならないわっ(T-T)
春なんて、あっと言うまですもの。
それまでには、千円でも…現金化出来るようにするんだわっ。
私の3年をここにぶつけないでどうするのよね?
コロナだし……もう、剛が金を稼ぐなんて、今回を逃したら、もう無いかもしれないもん。
気分は甲子園よっ。高校野球よっ(;_;)
もう、これで行けなきゃ、死ぬしかない気がするっ。主に年齢的にっ。」
作者は、芝居がかったような強い抑揚でそう言って気分を持ち上げながら、話を続けた。
「とにかく、次回予告を作ってみましょう。」
作者は、真剣に私を見る。
ある意味、命がけの一回にかける志が伝わってきて、私も、真面目に作者を見る。
「次回予告とは?」
「だから、あなたの土曜ワイドの話を聞いていて思ったのよ。
私は、客へのアピールや、作品の売りどころがわかってない事に!
フリマのサークルなのに、大事なことを忘れていたわよ。
完結ばかり考えて、何をアピールして売るべきかを考えてなかった事に。
この『パラサイト』は、誰に売りたくて作っているの?
なんのための物語で、いくらの価値があるの?
それらが分からない商品なんて売れないわ。
フリマに来る客は、とにかく多彩で、鍋の蓋から、使いかけのシールまで買って行くけれど、
だからって、御座の前にぶん投げたら売れるってわけじゃないわ。
私の売り口上でその気になるんだもん。
確かに、私の話では、千円の文庫の価値は無いかもしれないわ。
でも、フリマの100円なら、買ってくれるかもしれないし、
その為に、一生懸命説明するわよね、
特に…こんな目茶苦茶な状態なんだから、これを売るには、売り子の超絶トークが必要なんだわっ。」
作者は、真っ赤になりながら一気にこの長台詞を捲し立てた。
「超絶トーク…」
私は、グラスにその言葉を投げて、三杯目の酒にブルームーンと言うカクテルを頼んだ。
美しい紫色のそのカクテルは、バイオレットリキュールとジンで主に構成されている。
ジンは、イギリスの名酒、ビーフィーターをチョイスした。
「洒落た飲み物を頼んだわね?」
作者は、おかしな妄想からカクテルに気を削がれたようにグラスを見る。
「ブルームーンと言うお酒です。」
私は、そう言ってグラスに口をつけた。
この酒には、二つの意味があると言う。
『完全な愛』と
『出来ない相談』
まさに、現在の作者の心理状態のようです。
私の場合は、未完のおかしな物語を売るなんて…出来ない相談です。
「ブルームーン…か。そんな探偵社のアメリカのドラマがあったわね。
なんか、主演のデイビッド役をしていたのが、ブルース・ウィリスらしいわ(゜-゜)
内容忘れちゃったけど…
でも、なんか、雰囲気だけは知ってる気がするわ。
私も、そんなお洒落な探偵ものを書きたかったわ。」
作者は遠い目で呟いた。
「落ち着きましたか?」
私は、ブルームーンに軽く酔いながら作者に声をかけた。
作者は、私をみて苦笑した。
「うん。なんか、色々とハッチャケて来たわ。
そうよね、私、ふりまじんだもん。
フリマのように売ってみたって良いのよね。」
「まだ、そんなことを…。」
私は、呆れながら作者をみた。
作者は、そんな私に酔いの力も借りて自信満々に笑って言った。
「あら、私、なんか、肝が座ってきたわよ。
色々と悩んだけど、Web小説は、Web小説なんだわ。
完璧が欲しい人もいれば、ジャンクを楽しむ人だって居るのよ。きっと。
私は、手にしたものを売れば良いんだわ。
フリマのときのように。」
作者は、嬉しそうに天井を見上げています。
が、私には意味が不明です。
不明ではありますが、悩みから解放された作者の笑顔に、今は、何も言わずに喜ぶことにしました。
明日…よいが覚めるその日まで、楽しい気分にさせてあげましょう。
未完と商売…相入れない二つを重ねて楽しむ作者の横で私は、ブルームーンの甘い香りに酔っていた。




