作者、パラサイトを振り替える4
「そうですね、本当にお約束設定で作るなら、
まずはプロローグを追加しましょう。」
私は艶やかな直毛の長い髭を撫でながら言った。
正直、髭を生やした経験が無いので戸惑いの方が多いのですが、そんな顔を今の作者には見せられません。
とにかく、書かせなければ。
「プロローグ(・・?」
作者は主人の命令が分からない犬のように首をかしげて私を見ます。
「そうです。
林檎殺人では、殺人現場から始まります。
これは、他の二時間ドラマ、Xファイルや怪奇大作戦などでも、同じような構成が使われたりしています。
推理エリアの作品なのですから、まずは、解決するべき問題を先に見せるわけです。」
私の説明を作者は目を細めて値踏みする。
しばらく何かを考えていた作者が口を開いた。
「プロローグねえ…
エンディングを決めかねてるのに(。-∀-)」
作者は自虐的な薄ら笑いを浮かべる。
「いえ、この場合は、7年前の失踪事件の様子です。先にエンディングを見せてからの逆算ではありません。」
「でも…池上の語りには出来ないよ。」
作者は眉をよせる。
「テンプレを使うと言ったのは貴女だ。
まずは、7年前、何がおこったか、私に説明して下さい。
この物語は、あなたの気まぐれと、北城の言動でゴチャゴチャしすぎています。
7年前の事件を貴女が、私に分かるよう説明を出来ないようでは、
どう改編しても無駄です。」
私は言葉を圧した。
作者は、その言葉を黙って受けた。
それから、私を見つめて、入学式の子供の学生服姿を喜ぶ親のように、優しいため息を一つつく。
「時影、あなた、その格好だと、言葉に迫力がつくわね…(^-^)
ひ、髭が似合ってるわ。」
作者はそう言ってクスクス笑い出した。
私は、なんだか照れながら、でも、しらない顔をしました。
私は光輝モデルの関羽の姿をしています。
長い黒髪を緩く後ろで結わえ、長い髭を蓄え、
気のおけない人との談話なので、簡単な額飾りしかしていない、そんな姿なのです。
「おかしい、ですか?」
私は少し不機嫌に作者に聞いた。
作者は笑いながら首をふり、
「うううん、とても素敵で笑えるのよ。
私、三国志のメンバーで、関羽が一番素敵だと思うわ。」
「孔明よりも、ですか?」
私は疑わしそうに作者を見た。
私の記憶が正しければ、作者は、天才 優男が好物です。
「ふふっ。孔明かぁ…。確かに、若い頃は孔明だったけど、歳を取ると才能より、安定感のある男が素敵にみえるのね。」
作者は懐かしそうに昔の自分と孔明に微笑みかけているようだった。