作者、パラサイトを振り替える39
「少し、設定を整理したいわ。
これは、7年おきに開花するショクダイオオコンニャクの物語だから、
7年おきに時を遡るわ。
2012年。ここで雅苗が失踪するわよね?」
作者はノートを引っ張り出して書き始める。
私は頷きながら、話に夢中の作者の代わりに餃子の取り皿を端に置いた。
「2012年…ここから遡る過去に、長山が登場するわ。
2010年、プロバンスで雅苗と長山は再会するの(T-T)
大学の助教授が、プロバンスでの学会とか、会合に行けるかどうかなんてわからないけど、お父さんやら叔父さんも学者なんだから、まあ、その関係で来たのかもしれないし、
まあ、本文に関係ないからいいわ。」
作者は早口でそう言って、妖精が持ってきたフライドポテトを嬉しそうにみた。
「本当に…好きですね。フライドポテト。」
私は、事あるごとにフライドポテトの話をする作者に嫌みを込めていった。
「好き…って分けでも無いんだけどね、
この山盛りのフライドポテトには思い出があるんだわ。」
作者は遠い失恋話でもするような、懐かしい痛い話をする時のように口を結んで目を細める。
「でも、それは良い思い出なのでしょ?」
その作者の心を痛める思い出に、私には手に入らない、友情や夢の用な甘さを感じて、私はつい、冷やかな視線を彼女に向けてしまう。
作者は私の言葉にトゲを感じて少し不審げに私をみた。
「どうしたの?ケチャップとマヨネーズの組合わせが嫌なんて言わないわよね(-_-#)
それはさ、フライドポテトは高カロリーよ。
塩コショウでも、あなたは文句を言いたいんだろうけど、空想ぐらい良いじゃない(;O;)
もう、こんな感じで山盛りのフライドポテトを皆で素手で食べるなんて、出来ないかも知れないんだから。」
作者は最後の辺りが少し声がかすれたようになって、急いでフライドポテト口に入れた。
大きなグラスには、甘い炭酸飲料を、
最近は、体を心配して、ただの炭酸水を選んでいたのに。
私は、やけになりながらポテトを口にする作者の姿に胸が痛くなる。
泣いているんですね。
私が声をかけられずにいると、作者は話を続けた。
「全く、なんだろうね(T-T)この話、どうして、へんな方向に話が流れるんだろうね。
私はね、本気で今回は、『パラサイト』を投稿したいのよ。
完結した10万文字で。
そうして、500円分のお金にかわるポイントが欲しいわ。
500円のポイントじゃ、即座に金にならないし、
10万文字の話を500円に変えるなんて、まともに小説家を目指す人からしたら、バカな事だと思われるんでしょうね。
まあ、いいわ。バカなんだし。
私たちはフリマの仲間だったわ。
週末に集まって不用品を持ち寄って数人でフリマをしたの。
まあ、ほとんど遊びのようなものだから、大して儲からなくて、
だから、フリマ終わりのファミレスで、あの山盛りのフライドポテトは重宝したの。」
作者は懐かしそうに目を細めて微笑んだ。
「だから、また、皆で食べたいのですね。」
私は何か、私を置いて作者が走り去るような、軽い寂しさを感じながら共感した。
「うん。私も、こうなるまで、フライドポテトなんて、貧乏だから仕方ないから注文む物だと思っていたわ。
でも、もう、コロナ前のように、気軽に皆で素手で食べたり出来ないし、
メニューからはずされるかもしれないわ。
もうね、昔のように食べられないって思うの。
でも、私の書いた小説が…お金になったら、
そんな、あり得そうもない事がおこったら、
また、皆で食べられるんじゃないか、なんて、バカみたいなことを考えたりするんだわ。」
作者は眉を寄せて現実の厳しさを思い出している。
「いいじゃないですか。
ここは、あなたの小説の世界。
夢と欲望がダダモレと言われる素人小説サイトなんですから、
奇跡を信じても、かまわないでしょ?」
私は努めて明るく言って、フライドポテトを一つ摘まんだ。
その様子を弱々しく見つめながら、作者はぼやいた。
「そうね、でも、夢を見るには、まずは、種を作んなきゃいけないのよ(T-T)
まずは、10万文字のまとまりのある話を作らなきゃ。
こんな話に時間をかけてないで、
長山の、新しく入ってきたファーブルとノストラダムスについて考えを整理しないと°・(ノД`)・°・
本当に、本気で泣きたいわ。
小説が書けなくなるって、アイディアが枯渇するからじゃないの!?
なんで、ここに来て、新たな話をぶちこんでくるんだろうね(>_<。)
前門の虎、後門の狼って言うけどさ、
前編の長山、後編の北城で、私は泣けるわよ。
ファーブルとノストラダムスを片付けながら、
常世虫と虚ろ舟について何とかしなきゃいけないなんて……。」
作者は頭を抱える。
まあ、仕方ありません。
この半年、我々は、この時代にあうエンディングを探していました。
『トミノ地獄』の新解釈をみつけ、漢方の本やら、遺伝子の本を読み、何かを探したのです。
少し、終わりがみえかけ、理想的な公募をみつけ、コロナは終息するかに見えました。
でも、ここに来て、また、物語が複雑になってしまったのでした。
それは、なんとか改変しようとこうして設定を考えた結果でもあります。
既に、夏休みに突入しています。
この一週間で、けりをつけられなければ、事態はより、悪くなるのです。
少し、緊張してきました。
でも、そんな顔を見せるわけには行きません。
「そうですね、こんな話に字数を咲いている場合ではありません。
が、こうして書き出した文章が、ちゃんと本編を生かしてくれていますよ。
とにかく、進みましょう。
狼は、日本では大神。
古来、山の神様として崇められていました。
山道を迷った人を人里へと導いてくれたりもしたそうですよ。
『送り狼』とは、悪い意味の言葉では無かったのです。
我々の進む門にいる狼だって、悪いモノとは限りませんよ。」
私はそう強く言って、関羽のコスプレのまま、作者のために烏龍茶をいれる。
ジャスミンの香りは、ストレスを緩和し、前向きな気持ちにすると言われています。
温かいジャスミン茶は、きっと、気持ちを落ち着かせ、行くべき道へ物語と、作者を導いてくれると、そう信じて。




