作者、パラサイトを振り替える17
「はじめの設定の話をするわ…
一万字のお話のね。」
作者は少し恥ずかしそうに話の口火をきった。
私は黙って頷いて作者の言葉を待った。
作者は少し疲れたような優しい笑顔でテーブルを見つめながら話始める。
「この『パラサイト』と言う物語は、『オーデション』を応援してくれた読者へのアンコールの意味でもあるわ。
だから、『オーデション』の世界を引き継いでいるわ。
あの話は続編は基本ないの。音無と言う人物を考察するための習作でもあったから。
でも、一年、色々考えて、脇役の池上たちの続きが見たい人もいるのかと、考え直したわ。
で、彼らを登場させた虫の怪奇もの…MMRのようなSFミステリーを目指してみたわ。
と、言うわけで、虫が登場するのよ。」
作者は一度言葉をきる。
私は『オーデション』を思い返しながら、果たして言葉をかけるべきか迷う。
『オーデション』は、声優の青年が、不可思議なオーデションを受ける怪奇もので、新作アニメの原作者の音無が描く『シルク』と言う怪奇小説で、人食虫が登場する。
この話は、作中小説なので、始めの部分のあらすじしか書いていない。
『オーデション』のアンコールの意味もあるので、『パラサイト』だけで完結した物語ではあるが、『オーデション』を知っている人には続編にも見えるように設定したのだ。
この辺りは、他で七転八倒していても、考えていた我々は、大枠を作るのに苦労は無かった。
「そうでしたね…。」
結局、私は声をかけて、二人で考えた部分を書き出した。
主人公は50代の日雇い派遣の池上
声優秋吉からの仕事のオファーで、不思議な仕事に誘われる。
それは金持ちの植物学者と音楽アーティストの夫婦の別荘でネット番組の収録をすること。
音楽アーティストの溶生は、7年前にその屋敷で奇病に襲われ、妻はそれ以来、行方不明。
7年が過ぎて、失踪宣告をし、妻、雅苗の財産を処分し、芸能界への復帰をしようと溶生は画策している。
「ここまでは、計画通りの設定でしたね。」
私は去年の12月を少し寂しく思い出す。
短編を完結させ、『魔法の呪文』を書き終わらせて、友人達に自慢しようと頑張っていた作者。
私は、この辺りからおいてけぼりに、されるのです。




