作者、パラサイトを振り替える14
柔らかい日差しが降り注ぐ春の午後。
美しい爛漫の桃園で、自暴自棄になって、空を見つめていた。
その横では、少し作者に気を使うように心配そうに馬頭琴を奏でる桃の精。
本当にこんな事をしていられないのですが、
そんな時だからこそ、自堕落になってしまう、作者を私は黙って見つめていました。
さて、どうやってヤル気を取り戻させようか?
そんな事を考えている私に作者の方から声をかけてきた。
「ダメだ…。ちょっと、『魔法の呪文』を書こうとしたけど、上手く出てこないわ。
とりあえず、こっちを進めるよ。」
作者は疲れたように私に言う。
同時に始めた『魔法の呪文』も忘れたわけではない。
誰にも読まれてないが、真ん中に短編を書き入れて、あと少しで10万文字に到達するのだ。
終わらなくても10万文字。それだけあれば、公募に応募できる可能性が膨らみます。
「まあ、どちらにしても、進めませんとね。」
私の曖昧な相づちを軽く流しながら作者は続きを話し出す。
「うん…平均に書きたいけど、今は、恋愛はダメだ(;_;)
元から得意ではないし、ウイルスがこびりついて先が書けないわ(>_<。)
このままだと、投稿習慣すら無くなりそうだから、何でもいいから書くわ。
でも…
『パラサイト』もトンでもないわね(-_-;)
読み進めるうちに、頭が痛くなってきたわ……。
なんだろう?これ。」
作者は遠い目で自分の作品を語る。
まあ、仕方ありません。
遺伝子組み替えの寄生虫の企みをする雅苗
訳のわからない煽りをする北城。
一体、どうケリをつける予定だったのか……
私も読者だったら気になるところであり、
このまま未完で終わらせたら、きっと批判するところでしょう。
とはいえ、私は読者ではありません。
この人と理想郷を創る同士なのです。
弱った作者を追い込めても仕方ありません。
「とりあえず、テンプレを埋めて行きましょう。
プロローグを書いたのですから、それについて私の意見を言わせてもらえますか?」
私は極めて穏やかに作者に声をかける。
現在、新型コロナの件もあり、作者は混乱しています。
まずは聞く耳をもってもらい、
クリヤーしやすい課題を示し、実行させて自信と創作意欲を誘います。
作者は私を上目づかいに見て頷く。
「プロローグは、わりと良かったと思います。が、解決すべき問題が見えません。」
「問題?」
「そうですね、例えば、遺伝子組み替えの寄生虫が犯人の場合、ここでそれを匂わせるべきなのです。」
私の台詞に作者は眉を潜めた。
「それじゃ、バレちゃうじゃない。ミステリーにならないわ。」
作者はふて腐れていますが想定内です。
「別に、犯人がはじめに提示された名作は沢山ありますよ。
『刑事コロンボ』は、あなたも好きではありませんか?
でも…虫を使うなら、どちらかと言うと、怪奇ものですかね?
『フランケンシュタイン』にしても、『吸血鬼ドラキュラ』にしても、題名から犯人が分かります。が、読者はそれで、興味をもって読み進めます。
虫を使うなら…
プロローグを効果的に使うべきでしょう。」
私の説明を黙って聞いていた作者は、しばらく難しい顔をしていたが、やがて朗らかに笑いだした。
「ああっ、なんか分かってきたわ。
子供にやるシルエットゲーム『これなーんだ?』をするわけね(^-^)
なるほどね。
私、ずっと、犯罪者のように読者の追求から逃げようと必死だったけど、逆ね。
子供たちと遊ぶように、私は捕まらないといけないんだわ。」
作者はなんだか楽しそうに目を細めた。




