作者、二時間ドラマを懐かしむ 13
暑い…(;´д`)
作者は親の仇のようにホースで水撒きをしていた。
「もうっ。泣きたくなるわね、暑すぎて。」
作者はホースの口を絞りながら大きく腕を降り、大粒の雨を作り出している。
「かき氷作りましたよ。」
私は、縁側にブルーハワイのかき氷を二つ置いた。
「ありがとう(*^ー^)ノ♪」
作者は嬉しそうに叫んで、ホースを急いでしまうと私のもとへとやって来た。
作者は、ため息をついて座ると、早速かき氷を手にした。
「綺麗な青…。」
作者はそう呟いてスプーンでシロップのある底の方をザクザクと掘り返すと、暑さをかき消すようにかき氷を口いっぱいに放り込んで、今度は冷たさに悶絶した。
「そんなに、急がなくても…かき氷は逃げませんよ。」
私達は、夏のお約束のスチュエーションを楽しんだ。
「なつかしいわ…。こうしてかき氷を食べていると、夏にみた怪談をおもいだすわ。」
作者はセミの声を聞きながら汗をタオルでふいた。
「怪談…。他にも怪奇スペシャルとか怪奇ミステリー、洋画のホラーも楽しかったですね。」
私は、ブラウン管テレビの前に、嬉しそうに座る小さな頃の作者を思い出した。
「うん。2時間ドラマの怪奇ものとか好きだったわ。今考えると、チープな感じがするんだけど、カッパの話とか、イタコの話とか、好きだったわ。」
作者はそう言って笑った。
「心霊写真の特集とか、こわがってましたよね?」
「怖がってなんかないわよ(`へ´*)心霊写真なんて。」
作者は、ブチブチ文句を言い出した。
「怖がってたじゃないですか。怨霊が染み付いた滝とか…。」
私は、顔の沢山浮かんだ滝の写真を見て動けなくなる作者を思い出して笑った。
「だからぁ…違うもん。私が一番怖かったのは、映画『バタリアン』だけだからっ。
私は、あのクライマックスのような、どうにも解決しない話が恐怖のツボなの!」
作者はさらに食い下がった。
「そうでしたっけ…、映画『死霊のはらわた』は?
まあ、あれは、友達が映画館で見て、気持ち悪さと切り裂かれるシーンがリアルで怖いと言われて見てないからセーフ?」
私は、必死の作者が面白くてからかった。
作者は、『死霊のはらわた』と聞いて一度とまり、それから、急に大笑いをはじめた。
「ふふふっ。確かに!あれ、あの映画の話をした友達の顔が一番怖かったかも。
確かに、彼女のレビューで見れなくなったのよ。映画『死霊のはらわた』
いつだったか、衛星放送で見たら、あんまり陳腐で笑えたわ。」
作者は懐かしそうに笑った。
当時の最先端のSFXも、今では歴史の一部です。
作り物感が気になるのは仕方ありません。
「技術が進んでしまい、パソコンで美しく画像が処理出来るようになると、逆に減りましたね。怪奇ミステリー。」
私は、古きよき昔を思って呟いた。
「映像美ねぇー。でも、考えるに、私が一番怖かったのは、友達かもしれないわ。」
作者は怖いと言うより愉快と言った表情を浮かべる。
「あの…、『死霊のはらわた』のレビューの方ですか?」
私は、真ん丸の素朴な少女を思い浮かべた。
「うん。あの子、怖い話が好きでね、私も嫌いではないから、一緒に私の部屋に泊まって稲川淳二さんのビデオをみたことがあるの。」
作者は当時を思い出すために一度目を閉じた。
「稲川淳二さん。怪談師と、現在はお呼びしたらいいのでしょうか…、当時は、まだ、タレントと言う雰囲気でしたね?
でも、あなたは、人の話を雑にしか聞けないから、講談は苦手ではありませんか?」
私は、不信に思いながら聞いてみた。
作者いわく、お父さんの説教が長く、それを辛抱して聞いているうちに、人の話を雑にしか聞けなくなったのだそうです。
私は、お父さんのせいでは無いと思いますが。
「あら、稲川さんの怪談は好きよ。
それに、本物の怪談の語り部は呼ぶのよ…。雑に聞きたくても、聞かされるのよ…。」
作者は、かき氷を食べるのを一度とめて、ヒグラシが鳴き始め、暗くなった庭を見つめた。
少し、部屋が薄暗くなり、年季のはいった古い廊下から、家鳴りがピシッ、ピシッ、としました。
本当に、この人はホラーのカテゴリーにスキルがある気がします。
少し、背中が寒く感じて、私もかき氷を食べるのをやめました。
「あなたは、呼ばないでくださいよ。」
私は、冗談めかして言いましたが、少しだけ本気でやめて欲しいと考えていました。
「呼ぶ…?私が?」
と、夕暮れの闇をまとって、私を睨まないで欲しいです。
「そうです。あなたがっ。歳を取った分、怖さがマシマシですから。」
私は半分冗談めかして言いましたが、作者は笑ってくれません。
台所へ続く廊下が闇に染まって行きます。
「大丈夫よ。私なんて…、本物を呼ぶほどの実力は無いもの。
でも、あのとき、
友達とビデオを見ていたときは、深い睡魔に落ちてしまってね、目が冷めたとき、私の目の前に、白まんじゅうが…、友達が心配して体を揺すって起こされたときは、本当に怖かった。」
作者は、苦い顔を一度して、それから一気に笑いだした。
「ホントね、あの友達の恐怖に歪んだ顔、マジで怖かった。真夜中だったけど、叫びたくなったもの。」
と、笑われても…私は、笑えません。
「私が寝てから、一人で淳二の怪談を聞いていたらしいんだけど、急に怖くなったらしいわ…。
で、しばらく私を揺すっていたらしいの。
迷惑な話だけど、イビキと怪談で寝遅れた人間は必死よね?
で、なかなか起きないと、恐怖が増すじゃない?
で、揺すりかたが派手になったところで目が冷めたから、友達の恐怖に歪む顔をドアップで見ちゃって…。いやぁね。」
作者は、そこで一度ため息をついた。
いやぁね、と、言われても、私もコメントを選びます。
なにも言わずにいると、作者は、サンダルを脱いで家に入りながら、
「本当にあれは怖かったの。真夜中の事で、とても静かでね…。でも、人って、本当に怖い目にあうと、逆に笑えてくるのよ。」
と、悔しそうに言った。
「それとも、私だけなのかな…。
私の恐怖体験って、ほとんどが後で爆笑するような話なのよね。」
「それは、人柄なのだと思いますよ。
その話だって…。」
と、私はここで言葉を止めました。
「蚊が入りますよ。戸を閉めましょう。」
私は、作者を急かしてサッシを閉めた。
部屋へと戻る作者を見送りながら、かき氷の器を持ち上げ、闇に沈んだ庭にたたずむナニかを軽く睨み付ける。
あのひとは、私のものです。
私は、食器を片付けるために台所へと向かった。




