作者、二時間ドラマを懐かしむ 11
いけません。
私は、台所でスイカを切って作者の元へと運びながら考える。
辺りは、暗くなってきましたが、そんな事より、キバヤシです。
上手く話をもって行かないと、これから、二時間ドラマの話をする度に、キバヤシの自慢話を聞かされる事になるかもしれません。
私は、ふすまを引いて作者の部屋へと入り、作り出した架空の彼女の部屋に、アイドルのポスターが無いことを再確認する。
あの時代、好きなアイドルのポスターを部屋に飾るのが流行して、
天井にまで張り付けて、眠るときに見つめる…
そんな乙女ちっくな事が流行っていましたが、私の作者が張り付けたのは、酒屋さんから貰った木星とボイジャーのポスターでした。
ひろみも
ひできも
マッチすら、この部屋に出入りできなかったと言うのに、今になってキバヤシにその座を盗られるなんて、許せるわけもありません。
こちらが盗作するのでは、と、心配していたはずなのに、気がつくと、私が作者の心をキバヤシに盗まれないかと心配することになるなんて。
小説を書いてみないと分からない事です。
それにしても…、どうしたらいいのでしょうか?
私と作者が作り上げて行く、二時間ドラマの北条は、少し年配で、正義感と探求心にあふれた男です。
少し大人びた雰囲気を作るために、カクテルについて調べていました。
蘭子と北条がカウンターで話をするためです。
原作を読んでいない感想ですが、少年マガジンに連載されていたキバヤシ青年は、若々しく、飲みに行くのもバーと言うより、居酒屋でワイワイと言った雰囲気です。
どう考えても、世代が違う気がするのです。
「時影…どうしたの?」
作者に呼び止められて、私は、お盆から塩をテーブルに置いて笑顔を作る。
「別に…。それより、スイカを切ってきましたよ。食べましょう。」
私は、話しかけられたくなくてスイカを口にした。
今の設定だと、毎回キバヤシとMMRの自慢話と共に話がはじまってしまいそうです。
何か、作者の気持ちをこちら側に引き戻さないと。
「もう、なろうに来て一年がたつのですね…。初めの連載作品を覚えていますか?」
私のセリフは、作者の心をえぐるようにクリーンヒットした。
途端に、作者は、最後にとっておくためにスプーンですくった頂上の甘い部分をテーブルに落とし、動揺しながら、それを食べてしまった。
「な、なによ。忘れるわけもないわ…。ノルトラダムスの話でしょ?
エタっているといいたいんでしょ(T-T)
忘れたいけど、覚えてるわよ。
昭和のラーメン屋の出前が遅れた時の言い訳みたいに、今作ってるんじゃない(;O;)」
作者は、スイカに気持ちをぶつけるように勢い良く食べ始める。
「そうです。蘭子と北条の話は、この『ノストラダムスをしってるかい?』に接続する話なのですよ?
忘れてしまったようなので、言わせていただきますが、あなたは、90年代のノストラダムスのイメージを払拭し、新しいノストラダムスについて書いていましたね?」
私は、ここで一度言葉を区切り、作者の不快感を高めて行く。
「ノストラダムスは、ラノベ作家だと。」
この台詞は、素晴らしい効果がありました。
作者の黒歴史をえぐり出すような、このイカしたフレーズは、世紀を越えるときに残してきたノストラダムスの面影を吹き消して、作者をスイカを貪るただのマシーンにしてしまいました。
でも、さすがに、四つは食べすぎです。
そろそろ正気に戻って貰わなければ。




