作者、二時間ドラマを懐かしむ9
「まったく、頭の中はMMR祭りだよ(T-T)」
作者は口を真一文字に引きながら蛙のような顔になる。
「MMR…、世紀末に少年マガジンに連載された人気少年漫画ですね。」
私は、ここ最近のMMR関連の混乱を思い出していた。
私の作者は物語を横に広げる癖のある人で、夏のホラーに投稿した「通り魔」と言う話を考察しているときに、ネットでMMRの素晴らしい活躍を知ることになる。
これは雑誌記者のミステリーを追いかける話で、
アメリカのドラマ「Xファイル」と比べられたりしていたので、あのような、怪奇ミステリーを想像してくだされば良いと思います。
「うん。まあ、さ、実際にあった話から作るんだから、似てきても仕方ないけどさ、殺人マシーンの話とか、ヒトラーとチベットの話とか、人の話を見ちゃうと、正気に戻るよね(-_-)」作者は、少年のように頭をかいて苦笑した。
「あちらは確かサブリミナル、こちらは催眠と違いはありますよ?気持ちを切り替えて書いてしまいませんか?」
やーめた、とは言えないほど書いてしまった記事を思い、つい、作者を励ましてみますが、心境は複雑です。
「うん。まあ、あの話はそれなりに興味深いし、書いてしまいたいんだけどね、それはいいんだけどさぁ。」
と、作者は深いため息をついた。
「どうしたのです?」
私は、遠い目をして折り畳みのベニアのテーブルを見つめる作者に嫌な予感を感じた。
作者は、暗い顔でテーブルを見つめたままでいたけれど、怖いものでも見たように、急に私に向き直り、雷にでも打たれた後のような疲労感を滲ませながら、私にこう聞いてきた。
「時影…私達、70年代風味の物語を、主人公、北条で作ろうとしてたんだよね?」
「そうですよ?」
私は努めて冷静に答えた。が、内心は混乱した。
こんな顔をこの人がするときはロクな事はない。
作者は私の答えにため息をつき、溺れる人間が何かを掴むようにカセットテープをあさりだした。
山口百恵さん単体のカセットを見つけると、無言でスイッチをいれた。
「美・サイレント」と言う曲が、物悲しいギターのイントロで始まる。
ここに来て、何度も聴いてきた山口百恵さんの歌が、不思議な緊張感を場に作り出すことに気がついた。
「私ね…、『不思議の海のナディア』とか、『MMR』に内容が似ることを気にしていたわ。」
作者は、百恵さんの美しい声をバックに、なにやら女優がかった告白を始める。
私は、にわか雨の予感のような、不穏な雰囲気になりながら、軽い相槌をかえす。
「でも、本当は、そんな事はどうでもいいのっ。」
と、言う台詞、どうでも良く無いときに使われるよな?なんて、遠い出来事のように私は考える。
「確かに、少し、意固地になっていたとは思うわ。
『MMR』が流行った頃は私、いい大人なんだもの。
子供の頃から、大人になってまで、超常現象にどっぷりひたったイタイ人見たいに見えるから、嫌だったの…。」
作者は、古い失恋話をするようにアンニュイに年季の入った畳を見つめた。
「そんなに気にしなくても…、ここは匿名の小説サイトで、
ブックマークの約束を守ろうと頑張る不器用な年配の作家を、意味もなく晒し者にする人間なんていませんよ?
『ローマの休日』の王女様にでもなった気持ちで、堂々としていたらいいのです。」
私はちょっと、いい例えが出来たと嬉しくなった。
『ローマの休日』は、言わずと知れたヘップバーン主演の映画で、
ヘップバーン演じる可愛らしい王女が、イタリアで記者に会い、策にはめられて、ちょっとした不良行為を楽しみます。
タバコをふかしてみたり、
髪の毛にパーマを当ててみたり、
喧嘩をしてみたり。
普通の人間なら、それは可愛らしい冒険話ですが、
王女がやればスキャンダルです。
記者はそれを隠し撮りをしていて、でも、可愛らしい王女の為に、その世界的なスクープを記事にすることを止めたのでした。
白黒映画ではありますが、あのエンディングはとても印象的で、今でもあのシーンが好きだと思う方は沢山いる、名作なのです。
私の作者は、時に男性を山賊のように感じることがあるようで、これは早めになおす必要があります。
昭和のルパン三世のような冒険ものを作りたいのなら、ヒーローを輝かせるヒロインを作る必要があるのですから。
男の誠意を女が信じられないようでは、物語は成立しません。
『ローマの休日』に、作者も学ぶべきなのです。
「ヘップバーンを引き合いに出されても(T-T)
こっちは『MMR』で、キバヤシさんが、ドーンで、
ノストラダムスは悪人顔。
それに、書いた童話があんまり綺麗に作れたから、私、仲間に小説の話をしちゃってるもん。
見られてるのよっ、リアルな仲間に。この記事。今のところ、誰も興味が無いから読んでないか、
もしかしたら、内容があんまりなので、そっとスルーしてくれてるのか(゜-゜)
恐ろしいわね…
ああ、問題だらけだけど、今はそんな事より、なにより、『MMR』の時代が問題なのよっ。」
と、作者は遠い目付きで天井を見つめながら、「乙女座宮」と言う百恵さんの少女チックな歌を噛み締めていた。
「おかしいわ…。私、この歌がはやった頃の、可愛らしい少女漫画が見たかったのよ?
今頃は、皆とタブレットを囲んで、可愛らしい昭和の少女の絵を考えながら、古い葉書に絵を描いて、フリマで売る夢を語っていたはずなのに。」
作者は、テーブルに置いてあったノートに、昔の少女漫画風味の、キラキラの大きな目の女の子を書き出した。
よほど疲れているのか、ちょうちん袖に、スカートの後ろに派手なリボンを着けた少女を描いて、百恵さんの歌を口ずさむ様は、少し、痛々しく感じて、かける言葉が見つかりません。
しばらくすると、作者は、急に笑いだし、私は暗くなり出した部屋の中で、少しだけ恐怖を感じた。
「ふふふっ。まあ、仕方ないわよね。
私は、百恵ちゃんにはなれないんだもん。
まあ、百恵ちゃんだって、大変だったとおもうのよ?
なんか、口ずさむとお母さんに怒られる曲もあったから、百恵ちゃんだって、いろんな葛藤はあったはずよね?」
作者にそう質問され、私は、ただ頷いた。
「私は、ヘップバーンにも、百恵ちゃんにもなれないわ、
人には、生まれもって与えられた性格があるんだから。
でも…久しぶりに「乙女座宮」を聴いていて、運命を受け入れる気持ちになったわ。」
作者は、急にシャキッとして前向きな笑顔で私を見た。
「ヘップバーンでも、百恵さんでも無いあなたが、私は好きですよ。」
私は、気持ちを入れ換えた作者にエールをおくる。
「ありがとう(T-T)
私、このおかしな展開を克服して、きっと、私のファンタジアにたどり着くわ。
そうして、何かで二万円を手にいれて、皆で名古屋のフリマに行くんだわ。
その為にも、今は現実と向き合わなければっ!」
作者は、少女を描いたノートをまくり、新しいページにペンを置いた。
「現実…とは、何のことでしょう?」
私は、大きく、紀元前まで遡る物語の設定が動く予感に緊張した。
作者は、キリッとした闘う視線を私に送りながら重々しくそれを口にする。
「現実…それは、私達の北条が、キバヤシさん達と同じ時代に活躍していると、言うことよ。
ちなみに、FBIでは、モルダー捜査官がUFOの謎について取り組んでいるわ。この世界観で、しかも、70年代風味で物語を作り出さなければ、小銭に替わる物語なんて作れないんだわっ。」




