作者、二時間ドラマを懐かしむ8
「苺ショートなんて久しぶりだわ。
ゼリーの苺のバタークリームのケーキなんて。」
作者は私の用意したバターケーキをフォークでつつきながら微笑んだ。
「昔を思い出しませんか?」
「うん。最近、見かけないもの。苺のゼリーのバターケーキ。
小さな頃は、家が貧乏だから、こんな偽物のケーキしか食べられないんだと、悲しくなったけれど…。
バターケーキって、結構作ると面倒くさいし、大変なのよね。
で、やり方しだいでは、高いし、旨いのよ。
懐かしいわ…ありがとう。」
作者は嬉しそうにケーキを口に運んだ。
それから、紅茶で一気に全てを…モヤモヤする気持ちも含めて全てを飲み込んだ。
「ああっ。なんか、スッキリしたわ。
私は赤毛のアンにはなれないけれど、
逆に言えば、キャラ立ちしてるって事よね?
パクリとか、そんなこと心配しないで書けるってわけだわ。
決めたわ、時影!私、ありのままで70年代二時間ドラマを考えてみるっ。
当時のお父さんが、両手を叩いて喜ぶような、そんな作品めざすわっ。」
「……。裸は、いくらweb小説でもダメだと思いますよ。
いいえ!例え、CS放送とweb小説で許されるとしても、童話エリアを終わらせるまでは、下品な表現は私が許しません。」
私は心配になった。
私の作者はお調子者で、たまに何をしでかすか…、わかりませんから。
が、私の言葉を聞いた作者は、ムッとして私に食いついてきた。
「ちょっと!私のお父さんは、オッパイだけが好きだったわけではないわよ。
科学番組だって好きだったし、
あの人なりの良識はあったんだからっ。
確かに、70年代のドラマは、ちょっと、激しかったけれど、家族で見ていたから、家族内でのルールはあったのよ。
お父さんは、ストリップのダンスには緩かったけれど、キスシーンには厳しい人だったんだから。」
と、作者は回想する。
二時間ドラマは、21時放送で、基本は子供は寝る時間だった。
毎週、ワイド劇場を見ていたわけではない。
夏休みや、特別なスペシャルで、怪奇ものや名探偵が登場するときだけ、特別に見せてもらえたわけだが、
思えば、70年代は、テレビは高級品で、
テレビを買うと、電器屋さんの車が止まっているのを目撃したクラスメートによって、次の日には話題の人物になれるくらいだった。
購入者は、基本、男性なのだろう。
だからこそ、ソフトにあたるテレビ番組は、男性の気を引くような、女性の裸などを競って登場させていたのだと思う。
と、言うわけで、スペシャル番組でも、刺激的なシーンは割りと盛られていた。
思い返すと、あの時代、ストリップの踊り子さんは、わりと許容されていた。(うちだけかもしれないが。)
ドリフの加藤茶さんの有名なギャクもまた、
そんなストリップの踊り子さんをモデルとしていて、
真似をすると、作者は、お母さんには怒られたが、
なんとなく、受け入れられていた気がする。あのギャグ。
で、ドラマの冒頭で、ピンクのライトに照らされた羽毛をまとった、おねいさんが登場したりするわけで、
そうなると、作者の父が騒ぎ出すのだ。
「こんなのが見たいんですかぁ…。」
とか、作者は興奮した父親に頭をグリグリやられながら、嫌がらせをされていた。
がっ、
こんな事でめげていては、半年ぶりのスペシャルが見れないので、
「見たいですっ。」
と、作者はキッパリと言うしかなかった。
こんな時、母親がどんな顔をしていたのか、
作者は思い出せずにいたが、
母親の顔色なんてうかがっていたら、怪人がマントをひるがえすところが見られなくなるから、必死で素知らぬ顔で、ストリップのダンスを見つめていた。
が、
こんな苦労をしてまで、見たいと思っていても、父親の検閲に引っ掛かる場合がある。
作者の父は、キスシーンが苦手だった。
「うふふっ。」
ここで、作者がたまらず笑いだした。
「ごめん。でも…、今、思い返すと懐かしいわ。
古い記憶で、正しいかは分からないけれど、ね、
ハリウッド映画も、昔はキスシーンの検閲が厳しかったらしいわ。
何秒以上、キスシーンを続けてはいけないとか、あったらしいのよ。
昔の人は、長いキスはなんか、モヤモヤするのかもしれないわね。
うちのお父さんもそうだったわ。
昔の二時間ドラマの悪役のおじさんには、愛人がいてね、
で、お色気シーンがついて回るんだけれど、
これがねぇ、
もう、悩ましいのよ。
お色気シーンは、長く続けられないから、
怪人とか、モンスターがいいところで殺しにくるのよ。
私は、おっさんのキスシーンより、怪人が見たいんだけど、
お父さんは、キスシーンが苦手でね、
一分位なら、頭を小突かれて、からかわれて終わりなんだけど、
それ以上だと、いたたまれなくなるらしくて、怒り出すのよ。
で、チャンネルを変えられちゃうんだわ。
もう、あれには何度か泣かされたわ。」
作者は昔を思い出して嫌な顔をした。
「まあ、番組の構成上、仕方ないですけれどね。
当時流行りのアメリカン・ホラーも、そんな感じに出来上がってましたからね。」
私は、昔のホラー映画を思い出しながら言った。
70年代。
テレビが家庭に入るようになると、特殊効果の映像の不思議に皆夢中になった。
切断された手が動いたり、
怪人や、怪獣が、あたかもいるような映像がもてはやされていた。
だから、二時間ドラマも、奇術を見るようなファンタジーなストーリーが沢山あったのだと思う。
まあ、テレビも出始めで、規制が緩かったのもあるが、その分、家庭内が厳しかったので、釣り合いは取れていたのかもしれない。
「まあ、何にしても、懐かしいわ。
思えば、キスシーンで怒りだすなんて、お父さんもあれで可愛いところがあったのね。」
作者はそう言って、クスクスと笑いだした。
それから、思い出したように私を見て、
「あら、今のは誉め言葉よ。」
と、言い訳をした。
「ええ。もちろんですとも。」
私は、幸せそうな作者を見つめてそう言った。
「ホント、昔のあんなドラマ、また、見たいわ…。
でも、同じように作っても、ダメな気がするわ。
パソコンが普及した現在、切断された手が動くくらいじゃ、誰も驚かないし、
エロの基準は益々厳しくなるし、
マントとシルクハットの怪人のために、二時間を使うなんて、今では無理だわ…。
と、言うか、なんで、あんな変な格好の怪人が見たかったのかしら(-"-;)
自分でも分からないわ。」
作者は困惑気味に苦笑する。
「今時、マジシャンでも、あの格好はしませんからね。」
私は、シルクハットとマントの怪人を思い浮かべ、時の流れを感じていた。
監視カメラや携帯電話のカメラ機能で撮影されたら、あんな派手な格好で町を逃走なんて、当然できません。
時代は変わったのです。
「うん。でも…、ハロウィンやら、コミケなど、コスプレする人が増えたから、怪人もまだまだ、頑張れそうな気持ちもするんだけれど、ねぇ。」
作者はボンヤリと何かを考えだしていた。




