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第47話 もう後悔はしない!

 王立魔導士部隊による遠距離攻撃。

 強力な破壊エネルギーを伴う閃光は、俺達の居場所を正確に狙ってくる。

 魔王の娘、アリシアが俺の家に滞在している。

 その千載一遇の機会を逃すまいと執拗に撃ってくる。


 アリシアが……消えた……?

 母さんは確かにそう言った。


 母さんは宣言通り、赤い閃光から俺を守ってくれている。

 俺はただその様子を見ているだけ。


 見ているだけ。


 俺は見ているだけなのか。


 それが――俺の選択なのか?


「母さん、バリアを解いてくれ!」

「えっ?」

「アリシアを、仲間たちを探しに行く!」

「駄目よ! 今外に出たら――」

「行かせてくれ!」


 俺は母さんの両腕を掴んで願った。

 母さんの腕が下がったことで、緑色のドーム型のバリアは解除された。


「ユーマどうしたの? 魔人は消えたのよ?」

「俺にはアリシアが消えたなんてどうしても信じられない!」

「ユーマ、あなたはお母さんのことだけを見ていればいいの。魔人のことなんかすぐに忘れてしまうわよ!」

「俺は忘れない! どんなことがあっても」


 俺は母さんに背を向け走り出す。

 地面がむき出しの大地を。

 瓦礫の山に向かって。


「ユーマぁぁぁ――ッ」


 母さんの叫び声が聞こえた次の瞬間。


 俺は赤い閃光に包まれ――


 体が吹き飛んだ。


 そして何かに衝突した。

 いや、これは包み込まれるような感触だ。

 

「ユーマ、良かった。また会えたね」


 俺の体を包み込むもの。

 それはアリシアだった。


「アリシア……よかった……」

「ユーマ、すぐにここから逃げましょう!」

「ああ、そうだな。他の仲間は?」

「みんな無事よ。さあ、行きましょう!」

「どこへ?」

「異次元へ」

「異次元? どうやって……」

「アタシが魔法で入口を開けるから!」


 アリシアは指で長方形を描く。

 すると、闇夜の空間に光の扉が出現した。


「さあ……」


 アリシアは俺の手を引く。

 俺はその手を払う。


「どうしたのユーマ? 早く逃げないと次の攻撃が来るわ」


 アリシアは首を傾げた。


「本当に仲間は逃げたのか? 俺たちを置いて……」


「そうよ、アタシが先に逃げなさいって命令(・・)したからね!」


「そうか……おまえは命令したのか……」


「さあ、ユーマ。行きましょう!」


 アリシアは再び俺の手を握ろうとする。

 

 俺は――


「おまえは誰だ――!」


 そう叫んだ瞬間、頬に激痛が走った。


『ユーマお待たせー』


 ハリィの棘が刺さっていた。

 

「ハリィ、おまえ今までどこへ行っていたんだ!?」


 ハリィが首飾りに擬態。俺の体に魔力がみなぎる。 

 俺は魔剣ユーマを出現させ、振り下ろす。

 アリシアは後ろに飛び退き、魔剣は大地に突き刺さった。


「ユーマどうしたの!? アタシはアリシアよ?」


「ふざけるな! アリシアは一度だって俺たちに命令なんてしなかったぞ!」


 剣を抜き、斜めに振りかぶる。


「アタシは魔王の娘よ? 命令するに決まっているじゃない!」


 再び振り下ろした魔剣をアリシアは軽々と避けていく。


「そして俺の仲間は、俺達を置いて先に逃げたりはしない。絶対に! たとえアリシアに命令されたとしてもだ!」


 俺のその叫びを聞いたアリシアは戸惑いの表情に変わった。

 魔剣ユーマがアリシアの顔面に向かっていく。

 しかしアリシアは逃げない。


「――くッ!」

 

 寸前のところで魔剣は制止した。

 俺はアリシアを斬ることはできない。

 たとえ偽物と分かっていても。


『ほんとユーマはおもしろいなー』


 ハリィの声。


「斬らないの?」


 アリシアの偽物が言った。


「斬れなかった」


 俺は魔剣を鞘に収めた。


「ユーマは……魔族の中にかけがえのない仲間を見つけてしまったのね……」

 

 アリシアの偽物はしょぼんとした顔をして項垂れた。


「おまえは誰だ?」

『鑑定してみればー』


 ハリィの声。

 俺は久しぶりに【鑑定】スキルを発動した。


 ―――――― 

[名称]???

[種族]???

[職業]???

[状態]???

[攻撃力]???

[魔法]???

[魔力量]???/???

[耐久力]???

[スキル]???

 ――――――


『ね?』

「ね?って何だぁ? 壊れたぁぁぁー?」  

『壊れてないよー、ボクらにはエルフを鑑定できないんだー』


 俺のスキルの半分が『???』だったのはそれが原因か!


「いやまて、ということはこの偽アリシアは……」

「えへへ、お母さんでしたぁー!」


 ふわっと偽アリシアのドレスが広がり、下がる時には母さんの姿になった。

 テヘッみたいな感じで照れ笑いを浮かべているが、あまりにも場違いだった。


「なぜこんなことを!」


 俺が抗議すると、人差し指を俺の唇に当ててきた。


「エルフはね、遠い昔に人類と魔族の戦いには一切関与しないと決めたの。でも、お母さんはお父さんと共に人間側に付いてしまった。それは魔族の根絶を願ってのこと。だからお母さんは魔族の敵。でもユーマ、あなたにはどちらにも付いては欲しくはないの! お母さんと一緒に、異次元へ行きましょう。エルフの国へ!」


 母さんはとても悲しい目をしている。

 エルフの国へ戻ることは母さんの本意ではない。

 それはまるで死地へ向かうことと同義であるように……俺には聞こえた。


 俺は――


 どうしたらいい?


 その瞬間、アリシアの顔が浮かんだ。


 アリシアの『それがユーマの選択なら――』というときの笑顔が。


 首元に手をやり、ハリィの反応を確かめる。

 彼は俺の心に反応して、ぴくぴくと動いた。

    

「俺は、俺の仲間と共に戦う。俺は魔族と共に、アリシアと共にこの世界に平和を取り戻す!」


 もう、俺は後悔しない。


 仲間と共に――魔族を救い、世界を平和にするんだ。 


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