第46話 長い夜の始まり
皆が寝静まった夜。
突然襲い来る赤い閃光。
それに続く破壊音。
次の瞬間、俺の体は吹き飛ばされた。
その直前まで、俺はベッドの上で寝転がっていた。
頭の中が整理できずになかなか眠れずに寝返りを打ったとき――
俺の体は吹き飛ばされたのだ。
「ぐはっ!」
地面に叩き付けられ、部屋の残骸が俺の体に降り注いだ。
部屋にいたはずが、一瞬で外にはじき飛ばされていた。
いや……
家が跡形もなく吹き飛んでいる!?
「母さん――!」
周りは家の残骸だらけ。
「アリシア――! フォクス――!」
母さんと仲間の姿が見えない。
家の下敷きになったのか?
俺は手当たり次第に壁の残骸、家具の残骸を持ち上げてみる。
夜なのに加え、辺り一面が濃い霧に覆われ、視界がとても悪い。
「カリン――! カルバス――!」
誰からも反応がない。
ハリィは? ハリィは悪魔ルルシェなのにやられたのか?
そもそも今の衝撃は何だ?
何かが爆発したのか?
空を見上げる。
赤い点が、みるみるうちに広がっていった。
「ユーマ!」
母さんの声。
突然目の前に現れた母さんは両手を空に掲げる。
俺と母さんの周辺が緑色に包まれる。
これはドーム型のバリアのような物。
次の瞬間、赤い閃光と衝撃音に包まれた。
周囲にあった家の残骸が荒れ狂うように舞い上がる。
閃光が止み、視界が広がると周囲の状況は一転していた。
母さんが張ったバリアの周辺が地面剥き出しの空間になっていた。
「母さん無事だったのか、良かった……」
「ユーマも無事だったのね。心臓が止まるかと思ったわよ」
俺は母さんに抱きしめられた。
しかし、俺はすぐに引きはがし――
「アリシアが……仲間たちがいなくなったんだ。どうしたんだろう?」
すると、母さんはなぜか俺から目を逸らす。
「あの魔人たちは消えたわ。ユーマ……魔族のことはもう忘れなさい」
「消え……た……?」
「そう、この攻撃は王立魔導士部隊のもの。あなたたち、ここに来る途中すれ違ったそうね?」
そうだ。
たしかにすれ違った。
しかし、奴らは俺たちのことを……
「――――くッ!」
「そう。タロスも私の血を分けたハーフエルフよ。魔王の娘の存在に気付かない訳がないじゃないの」
そう言って、母さんは微笑んだ。
あの時、
馬車の窓から驚いた顔をしていたタロス兄貴は……
アリシアを見ていたのか。
俺は全身から血の気が引くような感覚を覚えた。
「大丈夫よユーマ。お母さんに任せなさい」
母さんは俺を抱きしめた。
俺は…… 空を見上げていた。
赤い光の点が広がっていく様子をただ――
ぼんやりと眺めていた。




