表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/59

第45話 封印された魔力

 地上には魔法を自由に操るエルフが平和に暮らしていた。

 ある時、天使が舞い降り人類を誕生させた。

 

 やがて、人類の中にエルフと交わりをもつことのできる新人類が出現。

 新人類は地上を支配するようになった。


 地上はいくつもの国に分断し、争いが始まった。


 天使は失望した。

 混沌とした世界に平穏を取り戻すためにリセットしよう。

 そう考える天使が現れた。

 彼等は悪魔と呼ばれ、神の恩恵を絶たれた。


 悪魔は地上に降り立ち、人間界と相対関係となる魔族界を創った。


 魔王は人類を駆逐するために魔王軍を率いて戦う。

 人類は魔王軍に対抗するため連合軍を結成し応戦する。

 

 世界は人類対魔族の世界大戦に突入。

 それは天使対悪魔の代理戦争でもあった。


 魔王軍は強力な魔力により人類を駆逐していく。

 人類はエルフの血を受け継ぐ人間を中心に応戦する。

 しかし多勢に無勢。

 そこで人類はエルフに目を付けた。

 戦いを好まないエルフをあらゆる手段で戦いに巻き込もうとした。

 

 エルフは森の中に異次元の結界を構築し、そこへ閉じこもった。

 人類対魔族の戦いに決着がつき、地上に平穏が訪れるまで。

 じっと、静かに待つことにした。


 天使は焦った。

 エルフから見放された人類は減少の一途を辿っていたから。

 そこで異世界からの勇者を召喚した。

 勇者には神からの恩恵をもたせ、魔王軍の討伐を使命とした。

 

 形勢は逆転した。


 勇者の活躍により、魔王軍は次々に敗れていく。

 それに伴い、悪魔の存在も弱体化していく。


 悪魔は神から恩恵を絶たれた存在だから――



 ***** 



「ボクの話はここまでー。これ以上は話せないよー」


 悪魔ルルシェはハリィの口調で話を締めくくった。


「ルルシェ様――」

「ハリィだよ?」

「あ、はい。ではハリィ様?」

「いつものようにハリィでいいよー、アリシアー」


 ハリィは床に付いたアリシアの膝に手を置いて言った。

 ここからはいつものように仲間として接しようとしているのだろう。


「ではハリィ……アタシはあなたに救世主を望みました。そしてあなたはユーマを召喚してくださいました。でもユーマには神の恩恵は与えられてはいない……ということなのですか? では、ユーマの能力(ちから)は一体どこから授かったというのでしょうか?」


 アリシアは俺を見た。

 仲間たちも俺に視線を向けてきた。


「それは――」

「それは?」


 皆が唾をごくりと飲み込む。


「よくわかんなーい」

「はあー!?」


 皆が口をぽかんと開けた。


「アリシアがボクに救世主を求めて来たとき、ボクは意地悪をしたんだー。できもしないことを言ってアリシアを困らせようとね。でも、アリシアは自ら角を欠き、ボクに差し出した。ボクには天使のように異世界から勇者を連れてくることもできないから、どーうしようかなーと思っていたとき、不思議な力を感じるユーマに出会ったんだー」


 ハリィは俺のほうに短い手足をぱたぱたさせて寄ってきた。

 俺が手を差し伸べると、ちょこちょこと手のひらに乗ってきた。

 

「その時のユーマはとっても怒っていたんだ。だからボクは悪魔の契約を結んでユーマを意のままに操ろうと思っていたんだけど、ユーマと触れ合っているとなんだか楽しくなってきてー」


「それはカリンにも分かるのです!」

「フォクスもわかりますです!」

「だからあなたたち、アタシの前では少し遠慮というものを……」

「まあ、ユーマったら女の子にモテモテねッ!」

「拙者も……嫌いではござらんですぞ、ユーマ殿」


 皆が一様に俺を褒めてくるので俺はどうしたら良いのか分からない。

 けれど――


「ありがとうな!」


 一応、礼を言っておいた。


「それでねー、アリシアの魔力をユーマの体に移して救世主にしようとしたんだけど……ユーマの体はそれを受け付けなかったんだー。不思議だよー」


「それは……」


 イスに座ってじっと俺たちを見ていた母さんが立ち上がった。

 そして、俺の背後から両肩に手を置いて――


「私がユーイチさんに関する記憶と共にユーマ、あなたの魔力を封印したからよ」


 と、静かな口調で言った。


「俺の魔力!? 俺には生まれつき魔力がなかったんじゃないのか?」


 俺は振り向いた。

 母さんはゆっくりと首を横に振る。


「ごめんなさい。今のあなたにはまだそれ以上のことは言えないの。でも……覚えておいて。あなたのお父さん、ユーイチ・オニヅカは、それが世界を平和に導くと信じて魔王を斃したの。私たちエルフもこれで戦争が終わると信じていたの。でも……新たに魔王が出現して……」


 母さんは俺を抱きしめる。

 そして大粒の涙を流して泣き出した。




 俺は……


 魔王を斃した勇者の子……


 それなのに、魔族の救世主になってしまったのか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

↑↑ランキングに参加中。クリックお願いします↑↑

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ