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第38話 無敵


「うおぉぉぉぉぉおお――ッ!」


 俺は叫び、ありったけの力で体を捻った。

 俺の両腕を抱え込んでいた両脇の男達が前と後ろによろける。

 両手が自由になった。


 何が起きたのかが分からなかった。

 ただ自分の体に何か強い力が入り込んできたような感覚はあった。


「てめえ、やりやがったな……」

「大人しく倒れていれば死なずに済んだものを!」

「やっちまえ!」


 男達が一斉に殴りかかってきた。

 俺はその拳を払いのけ、身を躱す。

 しかし、すべてを避けきることは出来ずに腹に蹴りが入った。

 その直後に顎を突き上げるような一発を食らった。


 俺は膝から崩れ落ちる。

 奥歯が欠け、口の中に血が溜まっているのを感じた。

 口を開けるとドロッと流れ出た。

 

 全身から力が抜け、すでに指の先すら動かせない。


 男達は俺の体を執拗に蹴り始める。


 もう……だめかもしれない……




『我の力が必要か?』




 またあの声がした。

 あんたは……誰だ……?


『我は悪魔ルルシェ』


 悪魔……だと……?


『そう、おまえ達が天使と呼ぶ存在の対極に位置する存在じゃ』


 悪魔が……俺に力を貸そうという……のか?


『そう。その代わりおまえは我に力を貸すのじゃ』


 俺の力だと? 俺に何の力があるというのだ?

 

『それは我にも分からん。ただ、おまえの存在が我を引き寄せ、そしておまえは我と心を通わせた。悪魔と人間がこうして話せるなど本来はあり得ないこと。我らの出会いはこの世界でただ一つの奇跡なのじゃ』


 世界で……ただ一つの……奇跡……


『そう! 奇跡なのじゃ。うふふ、うふふ、これでようやくあの子の願いを叶えてやれるのよ! どう? 我と共に魔族の未来を背負ってみない?』


 姿の見えない悪魔は嬉しそうに笑いながら俺の周りを飛んでいる。

 魔族?

 今、魔族と言ったのか?

 魔族の未来を背負う?


 俺の理解が追いつかない。


 次の瞬間、俺の目の前に男の靴が迫ってきた。

 俺はガッと鷲掴みにする。

 それを掴んだまま、俺は身を起こす。


「うわっ、とっ、とっ、何すんだてめえ!?」


 片足を持ち上げられた男は背中から地面に倒れる。

 俺は男の足首を脇にはさみ、体重をかけつつ身体を捻った。


「あぎぁぁぁぁぁぁ――!」


 男の足はあり得ない方向に折れ曲がり、悲鳴を上げる。

 俺を取り囲んでいた男達は一斉に下がっていく。


 体中に力がみなぎる。

 痛みは感じない。


 俺は――


 無敵になった。


『そう、おまえは無敵。どうする?』


 殺す。


 男達がナイフを出した。

 いいさ、俺は痛みを感じない。

 刺せばいい。


 今の俺には怖いものなど無いんだ。

 

「死ねぇぇぇ――ッ」


 正面の男がナイフを突きつけてくる。

 俺はそれを躱す。

 男の攻撃はひどく直線的で、がちがちに力が入っていた。

 男の手首をねじるとナイフを放した。

 俺はそれを拾い上げる。


「な、な、何だこいつは……ばけものか……?」

「やべえよ……オレたちには歯が立たねえ……」

「キッカ! こいつの金を返してやれ!」


 男達はキッカを探す。

 キッカは表通りの方に向かってそろりと歩いていた。

 男達に呼び止められ、立ち止まる。


「あ、ああ……か、返すよ……ほらっ」


 キッカは金の入った布袋を路地に投げる。

 数枚の小銭がこぼれてころころと転がっていく。


 キッカは表通りに向かって走り出す。

 堰を切ったように男達も走り出す。


 俺はそんな彼らを1人ずつ(たお)していく。

 俺は悪魔に魂を売ることにしたのだ。


 もう――


 何も怖いものはない。


 最後の一人はキッカ。 

 俺はその小さな肩を掴む。

 すると彼はバランスを崩して路面に転がった。


「ひぃぃぃ――……」


 声にならない悲鳴を上げて、起き上がろうとしている。

 その体を押さえ込むようにして俺は馬乗りになる。


 恐怖により見開かれた二つの目が俺の顔を凝視している。


 そして、俺はナイフを振り上げた――


グロテスクな表現をなるべくぼかしたつもりですが、不快な思いをされたとしたらごめんなさい。

作者の表現力不足と思って忘れてください。

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