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第3話 【鑑定】スキル発動

 異世界から来たという勇者ミュータスさんの言葉を聞いて、俺の頭は更に混乱した。王族直属の魔導師部隊にいる2人の兄ならともかく、魔力をもたない平凡な人間の俺が戦士として召喚されるなんてあり得ないことだ。


 しかし、ミュータスさんは、やや興奮気味に話を進める。


「うん、そうだよ。そうでなければここにキミがいる理由が見つからないよ。それにしてもキミは何も武器を持っていないようだね。大抵の『召喚されし者』は強力な武器を持たされて来るはずなんだが……おや、その首に付いている飾りはなんだろう……」


「あっ、触らないでっ!」


 触るとトゲが突き刺さって痛いから。ミュータスさんが怪我をしないように注意したのだけれど、男達にはそうは伝わらなかった――


 一斉に剣や刀の切っ先が向けられ、おしっこを漏らしそうになった。

 

「待てお前達っ! 私が不用意にユーマ君の大切な物に触ろうとしたのがいけなかったんだ。剣を収めろ」


 渋々指示に従う男達だが、実際には剣は抜いたまま後ろ手に隠し持っている。

 それはミュータスさんも気付いているらしく、軽く舌打ちをした。


『【鑑定】してみるー』


 今まで『物』に完全になりきっていたハリィが小声で話しかけてきた。

 えっ!? 鑑定って人間にも有効なの?

 試しにミュータスさんを鑑定してみよう。


 ―――――― 

[名称]ミュータス・ベルナールド/Lev.99

[種族]異世界人

[職業]勇者/剣士

[状態]健康

[攻撃力]剣:S 槍:A 弓:C

[魔法]黒魔法:―― 白魔法:――

[耐久力]耐物理:A 耐魔法:A

[スキル]【聖剣ミュータスを使う】

 ――――――


 す……すごい!

 本当に鑑定できるんだ。


「どうしたユーマ? 大丈夫かい?」

「あっ……だ、大丈夫です。すみませんミュータスさん、大きな声を出してしまって……この首に付いているやつはトゲがあるから触ると危険なんです」

「そんな危険な物を身につけているキサマはやはり魔人だろう! 正体を表せぇぇぇ――いッ!!」


 巨漢の男が剣を振り下ろす。

 斧のような形をした剣なので、ミュータスさんの背中越しでも俺の顔面を斬ることができると判断したのだろう。


 ところが、剣先は俺の額から5センチの位置で静止した。

 ミュータスさんの長剣の柄が男の剣の刃の無い部分を押さえていた。

 ミュータスさんは爽やかな笑顔のまま後ろを振り向く。

 巨漢の男の表情に焦りと動揺が広がっていく。


 よし、この隙に他の3人も【鑑定】してみよう!

 

 ―――――― 

[名称]ジャン/Lev.25

[種族]人間

[職業]剣士

[状態]動揺

[攻撃力]剣:B 槍:C 弓:F

[魔法]黒魔法:―― 白魔法:――

[耐久力]耐物理:C 耐魔法:D

[スキル]――

 ――――――

[名称]ホルス/Lev.23

[種族]人間

[職業]旅人

[状態]健康

[攻撃力]剣:C 槍:C 弓:C

[魔法]黒魔法:―― 白魔法:――

[耐久力]耐物理:C 耐魔法:D

[スキル]――

 ―――――― 

[名称]リック/Lev.21

[種族]人間

[職業]剣士

[状態]健康

[攻撃力]剣:B 槍:C 弓:C

[魔法]黒魔法:―― 白魔法:――

[耐久力]耐物理:D 耐魔法:C

[スキル]――

 ――――――


 うーん、よく分からないけど……ミュータスさんに比べると他の3人はかなり見劣りしてしまう。とは言っても、充分に強そうなんだけれど……


「ジャン。私は皆に剣を収めろと言ったよな……それともキミには聞こえなかったのかい?」


 ミュータスさんはゆっくりと立ち上がり、巨漢男・ジャンに問いかける。


「うっ……す、すまない……うっかりして……手が滑っちまった」


 ジャンは斧のような剣を放り投げ、両手を上げて後ろに下がっていく。

 2人はしばらく沈黙し、他のメンバーは固唾を呑んで見守っている。 


「なら、手が滑らないようにしっかり押さえておくんだ。二度と同じ失敗を繰り返すな。戦場では一度の失敗が命取りになるぞ!」

「はっ、はい……分かりました」


 くるっと振り向いたミュータスさんは元の金髪好青年という感じに戻っていた。


「すまないねユーマ。話を戻すけれど、その不思議な首飾りは初めからキミの物だったのかい?」


 背の高いミュータスさんは俺の目の高さに合わせて屈んだ姿勢で指を差した。


 俺は正直に話すべきかどうか迷った。なぜなら、ハリィは魔獣だ。魔獣と一緒にいるなんてことが分かれば、またジャンの斧が飛んでくるだろう。


「あっ……いえ、これは元々は俺の物ではないんですが……気付いたら首に巻き付いて来たんです」


 これでも嘘は言っていない。一部の経緯を省略しているだけだ。

 そんな俺の返答を聞いて、ミュータスさんは満足そうに頷いて、


「じゃあ、それがキミに与えられた武器または道具かもしれないね?」

「えっ!?」

「だって良く考えてみなさい。ユーマは街で買い物中に突然ここに召喚されていた。するとその白と黒の首飾りが巻かれていた――とても分かりやすい設定じゃないか!」

「ぶわっはっはっはー、それがガキの武器なのか? まるで女の装飾品みたいなそれがかぁ――?」

「わっはっはっはっ、そんな武器じゃあネズミも殺せないなぁ――!?」


 巨漢のジャンと小太りリックに笑われた。


「おい、失礼なことを言うんじゃないよ! すまないね、口の悪い連中だが、根は良い奴らなんだ。許してやってくれ」


 ミュータスさんは部下の非礼を詫びて頭を下げてくれた。

 本当にミュータスさんはいい人だ。


「リーダー、時間が勿体ないデスぜ! そんなガキ放っておいて、早く魔王城へ突入しましょう!」


 メガネをかけた中年男ホルスが大きなリュックを担ぎながら言った。


「魔族の奴らが態勢を整える前に一気に仕留めましょう!」

「そのガキはここに置いていきましょうぜ! 足手まといになりますぜ!」


 巨漢のジャンと小太りリックもひどいことを言っている。

 本当にこの人たちはミュータスさんの言う『いい奴ら』なんだろうか?


「まあ、待ちたまえキミたち! こんな所に子供を1人にしておけないよ。それにおそらくユーマは私と同じ『召喚されし者』だ。足手まといどころか、きっと私たちの戦力になってくれるはずだ!」


 本当にミュータスさんは良い人だな。なぜこんな乱暴な3人とチームを組んでいるかが不思議でならないよ。


 俺はミュータスさんの後を付いて先ほどの古城、魔王城に向かうことになった。

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