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第13話 奇襲作戦

 話はとんとん拍子に進んでいき、この場にいるメンバーで奇襲攻撃に向かうことになった。もちろん、魔王は城に残るわけだが……


『どうしたのーユーマ』


 首飾りに擬態しているハリィが俺に問いかけてきた。

 どうやら寄生中の彼には俺の感情が筒抜けになっているようだ。

 俺は何でもないと答えたけれど……


 今の俺は二つの気持ちを天秤にかけていた。一つはミュータスさんと合流して魔王軍と戦うという選択。そしてもう一つは戦いの隙に戦場から抜け出して村へ帰るという選択。いずれの選択も、アリシアの気持ちを裏切ることになる。だから、俺の胸はちくりと痛かった。



 そんな俺に天罰が下った。



 太陽が西の地平線に沈もうとしている。上空15メートルから眺めるこの夕陽を俺は生涯忘れることはないだろう――


 俺は空を飛んでいる。いや、正確には空を跳んでいた。

 アリシアに腕を掴まれ、森の木の遙か上空に舞う俺。

 やがて俺達の身体は上昇する勢いが無くなり、下降を始める。


 アリシアは抜群の視力と運動神経で次の着地点――丈夫そうな木の枝に両足を付いて、枝のしなりの反動を利用して再び空中へジャンプ。


 俺は木の枝に身体を激しくぶつけて細い枝が脇腹に刺さりつつも、アリシアに腕を引っ張られて上空へ。


「アリシアぁぁぁー! もっと優しくぅぅぅー!」

「えっ!? なあにユーマ、良く聞こえないわ?」


 最高到達地点に上がると、眼下に広がる森の先に大きな湖が見えた。

 夕陽のオレンジ色が水面に反射してとても幻想的な風景だ。


 うわー、眺め最高――――! と言いたいところだが……


 すぐに地獄のような再ジャンプの儀に突入する。 

 木の幹に全身を強打して、アリシアにぐいっと引っ張られて上空へ。


 ジャンプを繰り返すたびに俺の意識は遠のいていくのだ。

 確かにこの方法は速い! しかし俺の身がもたないぞ!


 ようやく森を抜け、湖が眼下に見えてきた。

 湖には幾つもの浮島があり、それを足場にして軽やかにジャンプする。


「うぎゃぁぁぁー! な、何かが俺の足に噛みついたぁぁぁー!!」

「ああ、それはビバビバよ。人間の血と肉が好物だから気を付けてねっ!」

「それを先に言ってくれよぉぉぉー!」


 浮島の上には無数の茶色い生物が口を開けて待ち構えている。

 【鑑定】してみると――


 ―――――― 

[名称]ビバビバ

[種族]魔獣

[状態]食欲旺盛

[スキル]――

[特徴]水面に浮かぶ巣に生息/人間の血肉を喰らう

 ――――――

 

 うん、確かにそう言うことらしい。


 アリシアが浮島に着地して再びジャンプするまでのほんの僅かの間に、俺は何匹ものビバビバに足をかじられて悲惨な目に遭った。

 

 朦朧もうろうとした意識の中、湖の湖畔に降り立った。振り向くと、迷彩柄の戦闘服姿のバラチンと、長い鼻のエレファンの重い身体を抱えた黒装束の魔人二人も浮島を軽やかにジャンプしてこちらに向かっていた。


「まあ、ユーマどうしたの? あなたって本当に弱いのねっ!」


 アリシアが満身創痍の俺を見て、呆れたように言い放った。


 白衣を着たエレファンが俺の脇腹に刺さった枝を引っこ抜き、その傷口と足の噛み傷につーんと刺激臭のある薬を塗った。最後にペタッと薄茶色のテープを貼ると、すぐに血が痛みが止まった。


「わての消毒のお陰で治りが速いのですゾウー! ふわっふわっふわっ……」


 す、すごい! 

 魔族の医療技術って人間以上なんじゃないの?


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