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番外. カリブ海からの手紙


“ジャックへ


お手紙ありがとう。無事に記憶が戻って、ほんとうに良かったです。婚約者のシャルロットさんとも結婚できたんだね。それにしても、ジャックの姿が見えなかったってほんとう? 後でお兄ちゃんから聞いて、私は信じられませんでした。当然だけど、全然わからなかった。

こちらの生活は全然変わりません。でも、バルバラおばさんは、前と比べてほんの少しだけ籠を編むのがうまくなったかも。多分。それと、あのフレッチャーとかいう海賊が、時々来るようになった。ジャックジャックってうるさいから嫌だったんだけど、仕方ないからあなたから手紙が来た事を教えてあげたの。お兄ちゃんが読んであげてた。

そういえば、ジャックの姓はウィルソンなの? フランス人じゃなかったの? じゃあなんであんなにフランス語を上手に話せたの? どういうことか説明してください。

でも、奥さんのシャルロットさんはフランス人なんだね。大きな商会をやってるなんてすごい、かっこいいね。


ハリケーンには気をつけてください。

それじゃあまた手紙の返事をください。一通だけ送っても、もしかしたら船が沈没しちゃうかもしれないから、たくさん送ってね。


あなたの友人ポーラ”




“ジャック


無事に家に着いたようで何よりだ。記憶も戻って、また奥さんと会えてよかった。それに、姿が見えるようにもなったなんてほんとうによかったな。

ジャックが島を出た後、本国の海軍兵士が来て、あんたの事をいろいろ聞いていった。海賊じゃないって言ったし、島民のみんなも悪い奴じゃない、いい人間だったって伝えたけど、大丈夫だったか?

ポーラの言う通り、こちらの生活はいつもと一緒だ。だが最近、ポーラが言った通り、フレッチャーが顔を出すようになった。君から手紙がないかとしきりにきいてくる。彼は英語しか話せないし、目が見えるのに読み書きもできないなんてと妹が言うと可哀想なくらいしょげるから、もし時間があったら彼にも手紙を書いてやってほしい。俺は漁にも行かなきゃならないし、肉も干さなきゃならないのに、あんたに宛てる手紙を全部書いてるんだ。宛先はこの島で大丈夫だ。


それじゃあまた。

トマ”






“親愛なるジャック


トマに書いてもらってるが、俺はフレッチャーだ。忘れてねえか? 忘れてたら燻製の肉を食え。

無事に帰ったようだな。姿も見えるようになったし、シャルロットさんとも結婚したときいて俺はほっとしたよ。やっぱりずっと待っててくれたんだな! 大事にしろよ。

あれから俺達は、町長の金で、でかい船を用意して航海に出るようになった。もちろんウィルが船長だ。けど、まだハリケーンの時期が続くから、当分はこの島近辺をうろちょろしてる。もし、そっちの旧世界に行くことになったら知らせを送る。まあウィル次第だがな。俺は今のこの辺の暮らしの方が気楽で気に入ってる。ラムも飲めるし。いつでもこっちに戻ってこいよ。今度はシャルロットさんを連れて来てもいいぜ。ああ、でももしかしたら俺に惚れちまうかもしれねえな。海の男は、女を全員虜にしちまうんだぜ。なぜなら……



悪いがジャック、もう俺はこれ以上この男には付き合いきれないからここで辞めさせてもらうぞ。この後もフレッチャーはいろいろ言っているが、察してくれ。



フレッチャー”






これで完結です。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


本作品では、「新世界」「旧世界」という言葉を使わせていただきましたが、当時ヨーロッパ世界と植民地をそのように考えていたヨーロッパ人の視線を反映させております。


また、「奴隷」という言葉やその様子を描写しましたが、上記と同じく当時のヨーロッパ人の視線を主としておりますので、どうかご了承ください。

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