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幽霊探偵  作者: ホワイト
3/5

過去…

12時…。

俺達はミーティングルームに集められていた。昨日観る予定だったゲームの内容を確認する為、順番を待っていた。

主催者でもある立花が、こう切り出した

「昨日はトラブルがあってその対処に追われていた為、皆さんの予定がずれてしまいました。これから順番にゲームの内容をお見せいたします。個人によって時間が違いますので、覚えていてください」

黒木、浅井、高橋の3人が早くしろと、苛立っている事が、表情がら良く分かった。それは死んだ事を信じていないという心のあらわれなのだろう。

まず始めに浅井ユキが呼ばれた。

それは年齢的にゲームの内容が短いからだろうと思っていた。

しばらくして、時間にすると1時間ぐらいであろうか浅井ユキが戻ってきた。

出て行った時とは全くの別人のように感じられた

次に呼ばれたのが、小笠原美里であった。美里は溜め息をして出て行った。

俺は美里の姿を見届けると浅井ユキに聞いてみた

「喋りたくなかったら、それで構わないけど…どんな感じだったの?」興味津々であった。

ユキは涙目でしゃべり始めた。

「そこで見たのは…自分が彼氏に…振られて…それで…ビルから…飛び下りた…」

それ以上涙で声にならなかった。どうやら思い出したかのようだった。

俺はある言葉を思い出した。

「記憶はきちんと消したの?」という言葉だった

それはどうやら死んだ前後の記憶を消せという意味だったようだ。これが現実みたいだ。

美里は早かった。

30分ぐらいだろうか…皆、驚いた表情だった。

黒木が突然、美里に言い出した。

「何でそんなに早いんだ。浅井が1時間でお前が30分で顔色一つ変えずに戻ってくるんだ。」

「それはだいだい予想していたから自分が死んだことを…」


「そう言えばお前は信じていたんだっけな…」


「私だって信じたくなかったけど、あれを見せられたら誰だって…」

俺は黒木と美里を引き離した。どうやら黒木は美里の事が感にさわるのか何かにつけては美里につっかかる。

次は順番的に俺かと呼ばれるのを待っていた。呼ばれたのは俺ではなく高橋しずか、だった。

俺は単に年齢順ではない事がわかった。

高橋しずかは妙に長かった。呼ばれてから2時間経っていた。その時、後ろから高橋しずかが音も立てずに戻ってきた。

浅井ユキ同様、顔を見れば一目瞭然だった。しずかは席につくなり自分から喋りだした。

「私ね、昨日信じないって言ってだけど撤回します。何度も何度も確認したの自分か死んだ場面を…信じたくなかったけど、でも私ネットで知り合った人に殺されてた。自殺にみせかけて…」

それでもまだ信じられないという顔をしていた黒木が突然叫びだした。

「絶対に嘘だ…あいつらが作ったものに違いない…」と。

しかし信じていなかった浅井ユキ、高橋しずかの2人が信じたのだから本当の事なのだろう。

信じていなかった黒木正男が三上に呼び出され独り言のように、信じない信じないと呟きながら出て行った。ここで俺はある矛盾を感じていた。

何故死んだ記憶を消したのだろうか?すべての記憶を消した方が手っ取り早いじゃないかという事単なる俺の考えすぎなのだろうか…

俺が考えている中、美里が話しかけてきた。

「斎藤さんは生きていた時どうだったんですか?死んだ原因検討つきますか?」


「いや〜どうって言われても特にこれといった原因は見当たらないし、仕事もプライベートも順調だったから。」と、ちょっと嘘を交えて話してしまった。何故なら仕事は全く順調ではなかったからである。

美里は顔をこちらに向けたまま俺の話を真剣に聞いていた。

俺の話が終わると美里が話しだした。


「驚きますよ…自分が自分の死んだ姿を見ると…」


全く会話が成立していない…そして何も見る前からテンション下げる事を言うのだろうか…。

何かのアドバイスのつもりなのか?見た時にショックを受けないように…そしてまた会話が成立しない事を言い出した。


「斉藤さんとは生きている時に逢いたかった…」

全く理解が出来ない、自分の言いたい事のみ言って下を向いてしまった。

そのやり取りが終わった後、黒木が戻ってきた。これまたどうしたものか先程の威勢はどうしたのだろうか…かなりのショックを受けた後はこんなにも変わってしまうものだろうか。

俺は急に怖くなってしまった。助手の三上が俺の事を呼んでいる。俺は正直逃げ出したかった…自分を勇気づけ席を立ち三上の後を追った。

早い。歩いているとしか見えないのだが俺は走っても追いつけなかった。三上がある部屋に入った。なんとか見失わないですんだ…俺も恐る恐る中に入った。

部屋というよりは、空間。そう昔の俺の記憶という空間。次々と映像が変わっていく。そこには先に入った三上の姿はなかった。懐かしくも思う昔の記憶…俺はしばらく懐かしむように見ていた…そしてあの日…そう俺の最後の記憶となっている部分である…

それを見て愕然とした…俺はあの日、駅のホーム階段から突き落とされ死んでいた。突き落とした奴の顔は記憶にあった。前に依頼で捜しだした女性だった…何故…何の為に…嘘だろ…

そこで映像は途切れまた真っ白な部屋となった。そこには助手の三上がたっていた。そして喋り始めた。

「自分がどのように死んだのかが、おわかりになりましたか?」


「はい…」と返事をした。信じるしかなかった…誰一人として知らない俺だけが知っている記憶までが映し出されたからだ…ただ何故あの女性は俺を突き落とし殺したのか…特にあの一件はトラブルなくすんなり終わったはず…

三上が話しだした。

「質問がなければミーティングルームへ戻りましょう。」

俺は聞きたい事が沢山あったが今は口から出てこなかった…

三上と俺はミーティングルームへ戻った。

ミーティングルームに戻った俺はそのまま座っていた椅子に座り呆然としていた。精神的ダメージが大きかった…皆からみれば別人のようだろう。その後から、主催者の立花、助手の三上が入って席につくなり喋り始めた

「これで信じて頂けましたか?死んだ事を…」


5人全員、頷いた。


「ゲームに参加してリトライするか、それとも、参加しないか、ご自身で決めてください。ご自身のゲームなのだから」

その中ユキが質問しだした。


「それは一体何処からリトライ可能なんですか…私の体グチャグチャになっていてリトライしたくてもできやしないじゃない…」

と、かなり興奮した口調だった…


「俺の体もグチャグチャなんだよ。無理があるじゃないか」

と、黒木も同じだった。

その質問に対して立花はこう答えた。

「良いところに気づきましたね。皆さんそういう事忘れてしまうんですよ…無理はないと思います。あの映像見た後ですから…でも一番重要な部分ですからしっかり聞いてくださいね」

よっぽどその質問が嬉しかったのか楽しげに話している立花がいた。

俺達はその言い方にムッとして立花を睨みつけた立花はゴホンと、わざとらしく咳払いをし説明を始めた。

「皆さんにはゲームと言う事だと始めにお伝えしました。ゲームというのは死んでも何度も何度も挑戦出来る事はご存知ですか?」

俺達はテレビゲームの事を言っているのかと思い、知ってると答えた。

黒木は何の事だか分からないような感じに首を横に傾げていた。

「黒木さんには後程説明いたしますから先に進めても良いですか?」

「あぁ…」と、黒木は返事をした。


「皆さん良く思い出して見てください。リトライすれば死ぬ前からスタート出来ますよね…それと同じで皆さんはその主人公になるわけです」


俺は間をあけずに言った。


「それで、何処からなんです?」


「死ぬ前からです。」と立花は答えた。


「それではまた同じ事の繰り返しになりませんか…」


「心配はありませんよ。ちなみにデジャブを知っていますか?」と立花は立ち上がり俺達の周りを歩き始めた。

「ご存知だとは思いますが…念の為に軽く説明しましょう。来た事ない場所や日常生活の上でどこかで一度見た事あるって思ったことあるでしょう…それがデジャブ…」


「そんなものでまた死なないなんて保証が何処にあるの?」

と、俺より先に高橋しずかに言われてしまった。

それは誰もが思っていた。現にデジャブで死ぬのを止められるのであれば死ぬ前に止めて欲しかった。

「普通のデジャブの場合ですよね。普通だったら一瞬ですしその先思いだそうと思っても思い出せない…しかしこれが皆さんが見た死ぬ前後だったらどうします?」

俺はゾッとした。あんな映像見た後だからであろうか…立花の話が妙に説得力があった…。

それを聞いた直後、皆、押し黙ってしまった。

俺はこれが嘘という設定で考えた。

まだどこかで信じられない気持ちから、なのか、もしくは職業病のどちらかだ…

これが何かの実験だとしたら?民間あるいは国家レベルに近い実験で人間はどんな行動をとり結論を出すのか…調べているのではないか…しかしあの映像はどう説明する…あれは作れるレベルではない…でも、意図的に何かの方法で聞き出しその後、記憶を消されているとすれば可能か…

考えは尽きない…

何とか探ってみるか…と主催者の立花に探りをいれた。

「あの映像は死ぬ直後までの映像でしたが今現在の自分を見る事は出来ないのでしょうか?」

もし、ここで見れないと言ったらこれはすべて全くのデタラメになる…

ところが立花はこう言った。


「ご覧になれますよ」と、あっさり言われてしまった。

「見せたくは無かったのですが…。ボロボロになったご自身の体、悲しむ人達、ただでさえ死んだ直後の映像を見た後でショックの上にショックを味わうだけですから…前にご覧になった人が期限を前にリトライを諦めてしまった事、残念でしかたがなかったからなんです…」


立花の言っている意味がわかる…但し、本当に見れればの話だが…あれば見てみたい…これが事実だと言う証拠を…

俺は見せてくれと頼んだ。他の者は見たくない顔をしていた。

立花の表情が険しくなり無言で立ち上がり俺の元にくるなり

「ついてきてください。」と、一言耳元で呟いた。

俺は立花の後を追った。立花は何度も何度も俺に向かって

「本当にいいんですね」と、繰り返し尋ねてきた。

しつこいぐらいに聞かれて俺はイライラしていた。その返事を、頷きかえした。

立花は先程の部屋とは別の部屋の止まった。

「さぁどうぞ…」と立花が扉を開けた。

俺も後から続いて中に入った。

俺が部屋に入るなり立花がこう言いだした。

「私達にも今の斉藤さん達の現状はわかりません…」立花の顔は真剣そのものだった…。嘘を言ってるようには見えなかった…

「それは一体どいう事です?」


「私達は今の現状には関与してないんです…要するに私達はゲームオーバーまでの記憶しか扱えないんです。」


「でもさっき現在の自分が見れると…」


「えぇ…言いました見れるのは本人のみで私達は見れませんから、だから見ないように勧めたんです今からでも遅くはありませんやめておきましょう、斉藤さん…」


「いやここまできたら、見てみたい。今の自分を…」


「そこまでおっしゃるなら…」と、言うとおもむろに俺の額に手を当てた。

その瞬間ある光景が飛び込んできた…

ベッドの上で一枚の布が顔にかけられまるで寝ているかのような自分の姿だった。

俺は自分の体がどのような状態か手に取るようにわかった。特に目立った外傷はなく首の骨を折り即死だったと言う事…自分で見ると言ったのに後悔していた…

昔から人の言う事を聞かないからだと良くお袋に怒られていた事を思い出して笑ってしまった…


俺の遺体の側には、どこかで見た気がする人が1人座っていた…遠い昔…どこかで…。

何故その人1人だけって思ったが他の者は手続きやらで追われているのだろう…その人に近寄り顔を覗きこんだ…

俺は言葉を失った…そこにいたのは敏栄だった。お互い15年ぐらい逢ってもいなかったし、ましてや連絡など一切していなかったから驚いてしまった…昔とちっとも変わってない…いつも寂しげなその目…

でも何故ここに敏栄が…あいつだ中学からのだち今も交流はあったし唯一敏栄の事好きだったのを知っていたし…まぁそんな事はどうでもいいか…こうしてまた敏栄に逢えたんだ…でもこんな形て逢うとは…

聞こえるはずもない敏栄に向かって

「来てくれてありがとう…昔から好きでした…」…と言った。

その時、敏栄の顔が俺の方に向き目と目があったような感じがした…もしかして聞こえた…周りを見渡しても誰もいない…

敏栄が何かを言い始めた。

「誰、誰かそこにいるの?」

見えても聞こえていなかったが何かを感じたのだろ…ちょっとホッとした

また敏栄に向かって言った。

「もう泣かないで…その顔卒業写真の時みたいに寂しい顔は好きじゃないから…笑ってる顔や怒ってる時の顔が好きだったんだよ」

触る事なんて出来ないはずなのに俺は敏栄の肩に手を置いた…

次の瞬間敏栄の右手が俺が乗せている肩へと…俺の手の上にそっと乗せるように…

「和章…きっとここにいるんだね…」

やっぱり何かを感じてるみたいだ…

「和章ごめんね…本当にごめんなさい…」泣きながら謝ってきた…俺にはさっぱり理解できなかった。

そのまま敏栄は、小さい時の事、中学の時、俺が犯人にされた事件の事など…俺は気にしてなかったのだか…

俺の知らなかったことではあったのだが何週間後に同窓会が開かれる予定で、その時に、俺に彼女がいなかったら告白しようとしていたらしい…

俺は指で唇をかきながら照れていた…

今すぐ生き返りたいと思った…そして敏栄を驚かして、また怒られている姿が浮かんだ…

そう思った時、敏栄の顔ではなく立花の顔があった。ウァーと叫んでしまった。

「どうでした?自分自身を見た感想は?」


「違った意味でみなければ良かった。」


「違った意味?」


何か立花は俺があまりショックを受けてない事を不思議そうな顔で見ていた…

すべて見たことを立花に話した…

「それまた意外でしたね…普通であればショックで声にならなくなってしまうんですが…私が知る限りでは斉藤さんが始めてです。」


そして俺はポツリと言った…

「立花さん…俺が見た場面でリトライ出来ませんか?」


「前にもお話しした通りですから絶対に無理です。」


「そこを何とか出来ませんか…」


「ルールですから」


駄目だ…何を言っても無理そうだ…

「もう戻りましょう皆さんの所へ…」

俺は諦め切れなかったが

「えぇ…」と返事をした。


ミーティングルームに戻ると特に変わった様子はなく、ただただ重い空気が流れていた…皆が何かを聞きたがっていたことは分かったが…

俺が落ち込んでいるのを見てやめたのだろう…

助手の三上が本日の予定終了を言っていた…その言葉を聞いて誰も動く気配がなかったが俺は無言のまま席を離れミーティングルームを後にした…


2日目終了…

タイムリミットまであと5日…

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