四週目
次の週、梶山倉庫には行かなかった。
そもそも携帯電話を使った就業予約さえしなかった。
大学の前期試験があったからという正当な理由もあったのだが、あのコンテナの仕事をしたくなかったのというのが本音だった。
大学生の本分として、単位をとることに熱中しなくてはならないと、自分に言い訳して僕は逃げ出したのだ。
それでも気になって、勉強のためにこもっていた大学の図書館で調べてみたところ、コンテナに乗り込んで外国に不法入国するという貧しい人々が世界にはいるらしい。
確かに、一度、コンテナの中に侵入してしまえば、入国管理局の目をくぐり抜けて他国に入国することはできるだろう。
中には何家族も連なって実行することもあるそうだ。
しかし、鋼鉄製のコンテナの中は虫さえも乾いて死んでしまうほどの高温になる。特に密閉されればただの拷問部屋でしかない。
夏場に駐車された車の中に入った人なら容易に想像がつくだろう。
その中に隠れるというだけですでに無茶な話なのに、船に載せられて何日も渡航すれば、最初の日にほとんどの人々は熱中症等で死んでしまうにちがいない。
最近は、法律で運搬中の封印されたコンテナを開封することは認められず、中の確認ができないことから引渡しの際などにトラブルになっていることも多いと聞いている。
だから、船の上だけではコンテナを開放して逃れるという方法もできなくなってきているらしい。
したがって、不法入国の方法としては危険すぎると結論せざるを得ない。
僕が、なぜそんなことを調べたかというと、あのコンテナの中に誰かがいたのではないかと思ったからだ。
でも、以上の状況からそんなことは不可能だ。
あの箱の中には誰も入れないし、誰かが出ていくこともできない。
じゃあ、あのプルーンはなんだ?
いつ、あそこに持ち込まれたんだ?
誰の仕業なんだ?
僕の最初の好奇心は、臆病から生じる恐怖心にすり替わっていた。
関わってはいけないことに自ら頭を突っ込んでしまったような…
ただ言えることは、もう二度とあれに近寄ってはいけない…。
そのことだけだ。
それだけだ。