第4話 「追放したこと、今さら後悔してももう遅い」
「……戻ってきたのか、レイン」
ギルドの入り口に立っていたのは、レオンだった。
その後ろには、かつての仲間たちの姿もある。
「なんだその顔は。未練でもあるのか?」
相変わらずの見下した目。
——だが。
「いや、逆だな」
俺は軽く笑った。
「ちょうどよかったと思ってる」
「……は?」
空気が一瞬で張り詰める。
「お前らに、見せたいものがある」
そう言って、俺は討伐証明をカウンターに置いた。
「これ、さっきの依頼な」
受付の女性が震える手で確認する。
「こ、これって……上級魔物の討伐証明……!? し、しかも単独……?」
ざわっ——
ギルド内が一気に騒がしくなる。
「嘘だろ……」「ありえねえ……」
レオンの表情が、わずかに歪んだ。
「……何かの間違いだろう。お前にそんなことができるはずがない」
「そう思うなら、試してみるか?」
俺は一歩前に出た。
「なんだと?」
ピリッとした空気が流れる。
レオンの手が剣にかかる。
だが——
「やめろ、ここはギルドだ」
周囲の冒険者が止めに入る。
「……チッ」
レオンは舌打ちをした。
「まあいい。どうせまぐれだろう」
吐き捨てるように言う。
その言葉に、思わず笑いそうになる。
「まぐれ、か」
俺は肩をすくめた。
「じゃあ、もう一回見せてやるよ」
「……何?」
「次の依頼も、同じクラスにする」
周囲がざわつく。
「正気かよ……」「またやる気か……?」
レオンは鼻で笑った。
「いいだろう。できるものならやってみろ」
完全に見下している。
——だからこそ、いい。
「後悔するなよ?」
「それはこっちの台詞だ」
レオンが冷たく言い放つ。
その時。
「ワン!」
足元で、フェンが元気よく鳴いた。
「……犬か」
レオンが見下すように言う。
「そんなもの連れて、何ができる」
——その一言で。
空気が、変わった。
「……今、なんて言った?」
俺の声が低くなる。
フェンは、俺の相棒だ。
命を預けられる、唯一の存在。
それを——
「そんなもの、だと?」
「事実だろう。ただの犬じゃないか」
レオンが笑う。
その瞬間。
「フェン」
「ワン」
静かに呼ぶと、フェンが前に出た。
そして——
光が、溢れる。
「……なっ!?」
ギルド内が、一瞬で静まり返る。
現れたのは——
巨大な神獣の姿。
圧倒的な威圧感が、場を支配する。
「ば、バカな……」
レオンの顔から余裕が消えた。
「これが、“ただの犬”か?」
俺はゆっくりと笑った。
「……っ」
誰も言葉を発せない。
「言ったよな。見せてやるって」
フェンが低く唸る。
それだけで、空気が震える。
「覚えとけよ、レオン」
俺は真っ直ぐに見据えた。
「お前が追い出したのは——」
一拍置く。
そして、はっきりと言い切った。
「“最強”だ」
沈黙。
そして——
ざわっ!!
ギルドが、一気に爆発した。
「なんだあれ……!」「神獣……!?」
レオンは、何も言えずに立ち尽くしている。
その顔に浮かんでいるのは——
明らかな“動揺”だった。
——もう遅い。
俺は静かに背を向ける。
「行くぞ、フェン」
「ワン!」
その背中に向けられる視線は、もう“役立たず”を見るものじゃない。
——畏怖と、驚愕。
そして。
ほんの少しの——後悔だった。




