第2話 「ただの犬だと思っていた相棒が神獣だった」
「グルルル……」
目の前にいるのは、本当にさっきまでのあの犬なのか——。
巨大な体。
圧倒的な威圧感。
ただそこに立っているだけで、空気が震えている。
「お、おい……お前……」
思わず声が震えた。
だが、その獣はゆっくりとこちらを振り返る。
——その瞳は、変わらなかった。
いつもと同じ、優しくて、どこか抜けたような目。
「……本当に、お前なのか?」
「ワン!」
次の瞬間、見た目に似合わない軽い鳴き声が返ってきた。
「いや、軽っ!!」
思わずツッコミが出る。
だがその直後——
ズシンッ!!
巨大な魔物が動いた。
鋭い牙をむき出しにし、一直線にこちらへ突っ込んでくる。
「やばっ——!」
俺は反射的に後ずさった。
だが——
前に出たのは、あいつだった。
「グァァァァッ!!」
神獣が、低く唸る。
その一声だけで、空気が震え、魔物の動きが一瞬止まった。
「……は?」
何が起きた?
たったそれだけで——止めたのか?
次の瞬間。
神獣の姿が、消えた。
「——え?」
見失った。
そう思った瞬間。
ドゴォォォンッ!!!
凄まじい衝撃音と共に、魔物の体が吹き飛んだ。
木々をなぎ倒しながら、はるか後方へと叩きつけられる。
「……一撃?」
信じられなかった。
あんな強そうな魔物が——
たった一撃で?
「ワン!」
気づけば、神獣は元の場所に戻っていた。
まるで何事もなかったかのように。
そして——
また光に包まれる。
次の瞬間には、いつもの“ただの犬”の姿に戻っていた。
「……お前、マジかよ」
俺はその場にへたり込んだ。
「ワン!」
犬は元気よく尻尾を振る。
まるで「すごいだろ!」と言っているかのように。
「……すごすぎるだろ」
笑いが込み上げてきた。
追放されて、全てを失ったと思っていた。
でも違った。
「俺、まだ終わってなかったんだな……」
その時だった。
頭の奥に、何かが流れ込んできた。
——熱い。
「ぐっ……!?」
突然の激痛に、思わず膝をつく。
「な、なんだこれ……!」
視界が揺れる。
だがその中で、確かに“声”が聞こえた。
——契約完了
「……は?」
理解が追いつかない。
だが、体の奥から力が湧いてくる。
今まで感じたことのない——力。
「これ……まさか……」
ゆっくりと手を握る。
空気が震えた。
「俺も……強くなってる……?」
「ワン!」
犬——いや、神獣が嬉しそうに吠えた。
まるでそれが当然だと言うように。
⸻
その日。
俺は、すべてを理解した。
こいつはただの犬じゃない。
そして——
俺はもう、“役立たず”なんかじゃない。
⸻
「……見てろよ」
遠くを見つめながら、俺は呟いた。
「絶対に見返してやる」
その目には、もう迷いはなかった。




