第1話 「役立たずと追放された日、全てが始まった」
「お前はもういらない」
その一言で、全てが終わった。
勇者パーティーのリーダーであるレオンは、冷たい目で俺を見下ろしていた。
「攻撃もできない、防御も弱い。正直、足手まといなんだよ」
周囲の仲間たちも、何も言わない。いや——言えない、のかもしれない。
俺はただ、黙って拳を握りしめた。
「……わかったよ」
そう言うしかなかった。
長い間、一緒に戦ってきた仲間だった。信じていた。いつか認めてもらえると。
でも、それは全部——俺の勘違いだったらしい。
「装備は置いていけ。それはパーティーの資産だ」
最後まで、徹底している。
俺は苦笑しながら、剣を地面に置いた。
これで、本当に何もなくなった。
……いや。
「クゥン」
小さな鳴き声が、足元から聞こえた。
そこには、茶色い毛並みの犬がいた。三角で少し長めの耳をぴんと立て、心配そうにこちらを見ている。
「お前だけか……ついてきてくれるのは」
俺がそう言うと、犬は尻尾をぶんぶん振った。
元気だけが取り柄の、ただの犬。戦いの役には立たない。
でも——
「行くか、一緒に」
俺はその頭を軽く撫でた。
暖かかった。
それから数日後。
俺たちは森の奥で、細々と暮らしていた。
食べ物も少ない。寝る場所もまともじゃない。
それでも、不思議と心は軽かった。
「はは……あいつらといるより、気楽かもな」
そう言って笑うと、犬は嬉しそうに吠えた。
その時だった。
ドォンッ!!
突然、森の奥から爆音が響いた。
「なんだ……!?」
急いで向かうと、そこには——
巨大な魔物がいた。
明らかに、俺なんかじゃ勝てない相手。
「逃げるぞ!」
そう叫んだ瞬間——
犬が、前に出た。
「おい!やめろ!!」
だが、止まらない。
次の瞬間。
犬の体が、まばゆい光に包まれた。
「……え?」
ありえない光景だった。
小さな体が、ゆっくりと姿を変えていく。
溢れ出る、圧倒的な力。
さっきまでの“ただの犬”とは、まるで違う存在——
「グルルル……」
低く、重い声。
目の前にいたのは——
神話に出てくるような、巨大な獣だった。
「……お前、まさか——」
振り返ったその瞳は、確かに俺を見ていた。
いつもの、あの優しい目で。
その日、俺は知った。
唯一の相棒が——
“ただの犬じゃなかった”ことを。




