不穏
ハウスキーパーなんて学生バイトに務まるのかと秋良は心配したが、手先が器用でこのガサツな女しかいない家の誰よりも手早く美しく部屋を美しく整えた。
玄関に花を飾った方が良いと殺風景だった玄関に生け花まで飾るセンスの持ち主だった。
九谷が花をいけてる後ろで秋良が感心する。
「生け花習ったの?」話すとやはりタメだったので
もう敬語はやめた。
「ううん、母が良く花を飾る人だったから自然とかな?ご飯買いにスーパー行くついでに花を買う人だったから。」きっと素敵な家庭で育ったのだろうなあ〜と言うエピソードだ。
「なんで過去形なの?お母さんとお父さんはご健在なんでしょ?」と無邪気に秋良は聞く。
「…いや、僕が中学の時に事業に失敗してね。父は借金で逃げて母はそういう苦労したことない人だから
借金取りの取り立てとかショックで。
男性の相手する仕事なんて無理で病気で亡くなったよ。」花を生ける美しい所作から、きっとそんな苦労した事無かった人生から突然世間の荒波に投げ出されて
耐えられなかったのだろう。
雑草みたいな秋良の家系の女みたいなのは珍しいのだ。
「エッ、じゃあ九谷君は?」両親がいなくなってどうしたのか心配になる。
「施設入ったよ。高校時代だけね。高校卒業で大学は無理かと思ったけど、学力があれば学費なしの大学があってね。そこに入ったよ。学内の寮も8000円で格安だしね、ボロいけど。
バイトはホームメイドシッターとバーテンダーもやってるしね。」ニコッと微笑んだ。
とその時、何かが目の端で飛んだような気がした。
2人がその方向を見るとテーブルのマイセンが床に落ちて割れていた。転がったのではない。
確かに宙を飛んでた気がする。
九谷が出入り始めて秋良も居る時、必ずおかしな事が起きる。
「…やっぱり僕、嫌われてない?」九谷が焦る。
「私達女3人だけの時は、何も無かったんだけどね〜
なんでだろ?」秋良が首をひねる。
秋良は駅前の高級スーパーでバイトを始めた。
そこで住所を見た店長が「あそこかあ〜」と言ってたのを思い出して聞いてみた。
「あの家って、何かイワクあるんですか?」棚に商品を並べながら聞く。
「やっぱり知らないんだあ〜
地元の人間だったら絶対買わないよ、あそこは。」秋良を不憫そうに見る。
「エッ、不動産屋は何も言ってませんでしたよ?」騙されたのかと思って秋良はブーたれる。
「いや、事故物件とかじゃないよ。ただ、絶対没落するんだよね、アソコの持ち主は。
君らが入る前は4.5年前かなあ〜外人の人材派遣会社の社長家族が住んでたんだよ。
コロナと重なってね〜倒産したんだよ。
夜逃げみたいに家族は消えたよ。
お父さんの仕事、大丈夫?」店長が心配してる。
「でも、その人達だけならコロナのせいで噂にはならない様な…」なんか腑に落ちない。
「う〜ん、僕もあの近所に昔から住んでる奥方に聞いた話だよ。
昔、アソコに最初に屋敷を建てたのは山師(現在の先物取引専門の投資家)だったらしいんだが、とにかくギャンブル要素が強いから外すと酒飲んで暴れてね〜
奥さんや子供の悲鳴が凄かったらしいよ。
そのうち子供が次々不慮の事故で亡くなり奥さんがどんどんおかしくなっていったそうだ。
ある日、本当に大穴開けて旦那は首吊りしたらしいが、奥さんはそのまま暮らしてたらしい。
で臭いと噂になって警察が入ったら旦那の干物と蛆虫や蝿の中で奥さんが暮らしてたそうだ。
更地になって売られて持ち主は変わったんだけど、やはり次の持ち主も倒産して、屋敷はもう3回も転売されてるだって!」店長の話を聞いたら、呪われた屋敷だった。
「え〜っ、建て替えても不動産屋は言うべき事じゃあないですか?それは?」秋良が文句を言う。
「東京では建て替えたらリセットだよ〜戦争や震災で20万人亡くなってるんだよ?
人が死んでない土地なんて存在しないんだから!」ケラケラと店長が笑う。
ノンデリ店長だ。




