お土産
お土産を持って、まずは駅前スーパーに顔を出す。
「よく顔出せたな。」店長が苦虫つぶした顔をする。
お土産を渡すと「明日はちゃんと遅番してよ!」と去る秋良に声を掛けた。
「やっと肝心なモノを手に入れたか…」と1人呟く。
「はあ〜騙されたよ。ただ兄の思い出が懐かしいのかと思ったら!
やだなあ〜父が消えてから、本当に人の裏側ばかり見せられる…」九谷が沈んでる。
「捉え方だよ。その若さで人の裏側を知れて良かったじゃん。
良い人そうな人が、本当に良い人な事はあまりないとか?
仏頂面の口の悪い向かいの奥方が、あんなに優しい人だったりとか?」秋良が笑う。
「うちもさ離婚する前、夫婦ゲンカばっかりで嫌だったけど、だからこそ昭和の子供の気持や九谷君のお母さんを守りたい!って気持ちも分かったもん。
幸せな家の子より、私達はずっと色んな事を経験し体験してる。
ケガをした事無い人間は、危険を察知出来ない。
私達はそれが先に分かるように育ってる。
だっていっぱいケガしてきたから…ココを。」と胸を指す。
九谷が目を見張り、そして微笑む。
「そんな風に考えた事無かったよ。人の醜い部分見る度、生きるのに絶望してた。」九谷が苦笑する。
「絶望の数なんて限界値あるんだよ。私達は人生の早めに体験してるだけだよ。
おかげでこんなふてぶてしく育ってる。
人生後半で味わうより、ここら辺で体験しとくのが良いと思うよ。
親達がさ、恋や結婚、夫婦生活とか大事な所で波乱万丈してるの見ると…若い内に嫌な思いが足りなかった反動感じるもん。」秋良の言葉に九谷が感嘆する。
「確かに!付き合ってから裏切られるより、裏切ったり振り回す人間の心の内がすでに分かってるもんね!
そうかあ〜」九谷が笑う。
「でしょ?結婚してから気付いたら。子供産んでから気付いたら。本当に大変だよ?
10代で体験できてる私達は幸運なんだよ〜」秋良の発想に九谷が笑う。
「そうか!ラッキーなんだね、僕達は。」思わず後ろから秋良を抱きしめた。
「!!」秋良が固まる。
「ありがとう。秋良に会えて良かったよ。ずっと人生を呪ってた。1人になってから…でも、呪う必要ないんだね。
早めに体験できてるのは、良いことなんだ。」九谷の腕は長くて秋良を抱いてまだ余ってる。
「うん、私達は傷ついた分だけ逞しく強くなるんだよ。
親が生きてたら、九谷君はそこまで頭良くならなかったし。塾掛け持ちしても東大なんか入れなかったし。
私はメソメソして学校行きたくないと不登校なってたかもよ?両親揃ってたら?
同級生にもその親御さんにもたっぷり片親と嫌味言われたりバカにされたりしてきたから、学校行きたくないとかならないもん。
私は誰よりも学生生活エンジョイしてやると思ってる。」いつの間にか2人は腕を組んでイチョウ並木を歩く。
「この傷が無ければ、秋良がスゴいと分からなかったしね…本当にスゴいよ。そして手放さないからね。覚悟して。」とまた微笑む。
『あれ?これって…好きって言われてる?てか私達付き合ってない?』秋良はキョどりだした。




