東大生
さすが九谷は東大生だ。
まさかの昭和の持ち主の戸籍までたどり着いていた。
「土地や建物には登記簿があるからね。秋良のお母さんに売買の時の司法書士から貰った書類を見せて貰ったんだ。売買で誰から誰にいつ売買されたのか記録が戦後以降は必ず記載されてるんだよ。
元の持ち主の住所と名前が書かれてるから、そこから戸籍まで辿り着ける。
持ち主は鬼籍(亡くなってしまってる状態)でも、その土地が故人の縁者から新しい持ち主に売られるからね。
弟さんがまだ生きてたよ。彼がお兄さんの家を売りお墓も作ってるそうだ。話しを聞きに行かない?」秋良と同じ18なのに…なんてシッカリしてるんだろ?
「スゴいね。もう弟さんと話したの?」秋良が驚く。
家の中で話さず、駅前のカフェで話すようにした。
霊を刺激しないのが1番だ。
しかし、なんで秋良と九谷が揃うと現象が起きるのか?謎だが。
「うん、電話でね。今どき珍しい電話帳にまだ記載してたんだよ。」こともなげに言うが、スゴい情報量の中から探し出したはずだ。
「岩手なんだけど…行けるかな?」九谷が無理かな?と言う顔をする。
「すごい遠いけど、行けるよ。大丈夫!」秋良が即答する。
「お母さんやお祖母ちゃんに聞かなくて良いの?
そう言えば、秋良のバイト先もお母さん知らなかったみたいで聞かれたよ。良いの?」九谷が驚く。
「ああ〜ウチの親は教えても3歩歩いたら忘れるから意味無いんだよ〜
旅行も私が大丈夫と判断したら、それが1番マシだから。あの2人と旅行行ったら、本当に何回遭難しかけたか!昔、東北旅行で小岩井牧場に吹雪の中たどり着いたら『春まで牧場お休みです。』って立て看見た時は泣いたよ〜本当に当てにならない人達だから。」
秋良がため息をつく。
「スゴいエピソードが次々出るね、秋良の家は…」九谷が絶句する。
週末、学校の休みに2人は岩手へ新幹線はやぶさで向かう。店長に「土日のどっちかには必ず出る契約だよ〜」とか文句を言われたが、「ポルターガイスト現象の霊の親族に話聞きに行くんだよ〜アンタが霊を鎮めてくれるの?」とまた脅した。
盛岡駅に着くとわざわざ弟さんとその息子さんが迎えに来てくれた。
「兄夫婦の事なんて、もうワシの記憶の中だけの事になってたからな〜
覚えてくてくれてる人が居るだけで嬉しいよ。」お兄さんとは全く反対の穏やかな人柄のおじいさんだ。
山の中の道をひた走り湖を抜けた温泉街の宿にたどり着いた。
なんと鶯宿温泉の旅館の跡取り息子だったのだ。
「兄は親から跡取り息子として大事に育てられてたんたが、東京で一花咲かせたいと夢見がちな性格でなあ〜仲居見習いの千鶴を孕ませたのを叱られた勢いでそのまま東京に駆け落ちしたんだよ。
全然連絡もなくて…旅館はワシが継いだんだ。
次に連絡あったのは自殺したと言う警察からの知らせだよ。」旅館で出されたお茶を飲む。
「お兄さんが亡くなった後、奥さんの千鶴さんは?」九谷が聞く。
「千鶴は子供2人が亡くなり気が触れて調べが進まないと警察病院に入院していると聞いたよ。
直接会えなかった…会うのも怖かった。千鶴はずっと旅館で兄に付きまとわれて強姦されたんだよ。
助けてと言う声を皆、仲居達は聞いてた。誰も助けなかった。兄に逆らえなかったんだ。」弟さんにも後ろめたい記憶だったようだ。
昭和には、そういう習慣もあった。
大学内でも気に入った女子が男を受け付けないと下宿してれば窓から忍び込んで強姦すればカップル成立みたいな…
顔見知りでの強姦認定はほぼ無理だったのだ。
その上、処女神話が浸透してたので他の男の手垢が付いてる噂が立てば、もう好きな人がいても相手されなくなる。昭和に美女は厄災でしかない。
「ワシが子供と兄の遺骨を引き取り、家を売り処分したよ。でも旅館をそんなに空けれないからな。1週間で帰ってきてしまった。
後から聞いたよ、病院を抜け出し千鶴が行方不明だと。」語りたくなかった記憶だろうにおじいさんは、
「ワシも召される日は近いからな。心の重荷は出来るだけ現世に置いていきたいんだよ。」と笑った。
そのまま温泉旅館に一泊させて貰った。




