同世代
奥方と同じくらいに成城に家を建てたらしい。
で子供も同じくらいなので奥方はママ友になりたかったが、とにかく旦那の顔色を気にしていたそうだ。
ほとんど飲み以外は家に旦那が居たらしい。
DVする人は、男でも女でも同性や社会の中で幅を利かせられない人望のない人が多い。
または良い人ぶって無難に過ごしていたり。
旦那も山師なのに仲間とつるんで遊ぶ事も無かったようだ。
だから、道で立ち話してるだけで家の方から大きな咳払いが聞こえ、家に奥さんは帰って行ったらしい。
「服もね〜さすがに独身時代の服しか持ってないから買って貰ったら?と、言ったんだけどねえ〜」首を振って、
「なんだ?男にまだ見られたいのか?色気づきやがって」とか言われるしって。」奥方は昔を思い出してため息をつく。
結婚すると自由にお金で服を買うことも出来なくなるのだ。
「買ってもらう…」なんて屈辱的な言葉だろう。
秋良は、よけい恋愛も結婚もウザくなる。
「お酒飲むと大声で奥さんや子供を怒鳴りつけてね〜
髪の毛抜かれてハゲて、恥ずかしいと毛糸の帽子被ってたわ、奥さん。」奥方の話を聞いて、九谷がため息をつく。
「ウチもコロナが長期化すると父が家に居ることが増えて酒ばかり飲んでました。母に手を上げそうになって止めに入ってケガした事あります。」九谷が苦しそうな顔をする。
「あそこの家族は、皆そうなるんだよ。
もう呪いだよ。
しかし、お嬢ちゃん家は昨日の悲鳴以外は笑い声しか聞かないね〜大丈夫なのかい?
だいたい夜しか人の気配ないし。」奥方の方が秋良の家を不思議がってたようだ。
「ああ〜、すみません。ウチは祖母も母も会社経営したり執筆業したりで働いてて、ほとんど家に居ないんですよ。だいたい離婚してますし…」なぜかこの話をする時、秋良はバツが悪い。
「あら〜スゴいじゃない!そんな生き方出来たらね〜
あの奥さんもツラい思いしなくて良かったのに。
旦那次第で尊厳も自由も奪われるのが結婚だからね〜日本じゃ。」奥方までため息をつく。
「ウチの亡くなった亭主は、そこまでヒドくなかったよ。
まあ浮気はされたね〜おかげで女としての自尊心は打ち砕かれたね。だから整形してやったよ!
手術代は払わせてやったわ。」ホッホッと奥方は笑う。
鼻のプロテーゼが加齢で顔の脂肪が無くなってゴツゴツしてる。奥方も大変だったのだ。
「あの、お子さんが亡くなったのは…事故だったんですか?」霊の現象の根幹は、そこだと秋良は思ってる。
急に奥方の顔が真顔になる。
みるみる般若顔になる。
「アイツはあの死に様がお似合いだよ!干物になって天井からぶら下がってたよ!
ハエ叩きで、ハエを追っ払ったら首がもげたと奥さんも笑ってたわ!」愉快そうに笑う奥方に狂気を感じる。
「やはり…旦那さんが殺したんですか?お子さん?」
九谷は喉をゴクッと鳴らし、秋良は身構える。
「そうだね。上の男の子は冬場に裸で水風呂に入れられて監禁されたんだよ。朝には冷たくなってた。警察は奥さんに注意したけど、事故扱いだったね。
旦那はいい頃合いに妻が自分に隠れて子供を風呂から出すだろうと思ってたと証言したんだよ。」
奥方が静かに語る。
「そんな!日頃から怒鳴って叩かれてたら誰も逆らえないのに!」思わず秋良が怒鳴る。
「男はそういう微妙な小賢しい言い訳が上手い生き物だからね。既婚なの隠して女性と付き合っても詐欺罪が成立しない日本じゃね〜」奥方が乾いた声で笑う。
何か過去にあったのだろう。
「下の女の子も旦那に酒買いに駅前まで行かされてた夜に
ストーブの上のヤカンの湯気に触ろうとしたみたいで…体の2/3火傷してしまって助からなかったよ。」奥方が話す。
「待ってください!旦那さんは、子供のそばに居たんですよね?それは!」秋良は信じられなくて声が上ずる。
「テレビで野球見てたそうだよ。まっ、男親なんて目を離す事もあるからとお咎めなしだよ。日本はほとほと育児は母親だけの仕事なんだよ。」めまいがしてくる。
「…それは奥さん、気が触れないと生きていけなかったでしょうね…」九谷が涙腺崩壊してもう死にそうになってる。




