最愛の別れ
「最愛の別れ」
私は夫を失った。火事だった。それ以来恋をしない。27才の春。新緑の季節なら、余計切ないね。
OLとして生きている。元々働いていた所だ。私は家について、つまらないテレビを観る。チャンネルを移し変えるが、罵声ばかり聞こえる事が多くなってきた。卑しくなったテレビでも淋しさを埋める為に観る。
――23才で逢えた。昔の同級生だ。久しぶりで、話をする機会が訪れた。どうしようかと思ったけど、たまには、閑散とした飲み屋で生中を酌み交わした。
私は結構笑った。殿方は、人の心を掴むのが上手い人だ。それから、三ヶ月で付き合い始めた。そして、愛情を呑みだした。経験がさほどあるわけではない。
私は逢瀬を重ねる度、身体が求めるようになった。結婚式はきっとない。でも、両親同士で話す場を設けようとしたのが、初めての親孝行なのかもしれない。本質的に。
25才に結婚した。そして、アパートを借りようと思ったけど、それをホテル代にしようと思うと、彼氏は言った。
「いいね」
私はそう言った。デートらしきデートもしていない。でも、私は好きになった。ただそれだけで、結婚指輪を嵌めてしまった。
会社を退職して、一段落ついた。後は子供が産まれるだけ。でも、二人揃って、子供は望めそうも無い。
「まあ、二人で生きるか」
それを夫が言った。きっとそれが私たちらしいのかなと無理やり思う事にした。欲望に近いものがあると思った。私は実家で、夫は古いアパートで。マイホーム資金を何時の日か手に入るまでは、私も金をなるべく使わなくなった。
26才の冬。何故か不吉の予感がした。でも、私はその影を何故か抱くようになった。そのせいで、もう恋はできないと思った――
私はもう君以外の男は作らないよ。そう誓いを思う。いつか知らないけど、ずっと持っていきたい二人の暮らし。写真を撮ってある限りなく多く。それを見て、私は想い出がきっと消えやしないと、その笑顔を見てそう思った。
そして、夫が消えた春の景色の中、涙を流した。夫の墓を買って、祈っている。ずっと、祈っている。
あの頃の初夏を思い出したよ。いつも、大切な人だったと思う。
いつか逢えるといいな。空の世界で。
宗教は信じない。だから、また二度とは逢えないかも知れないと思った。それでも、きっと後悔はしない。こんなに好きな人と一緒にいられたから。苦しいことはない。家族がいるうちは、本当に孤独に陥る事はないだろう。
一人暮らしをする程気力が無い。つまらない番組も少し笑える。涙を流して、ずっとこの涙が続く事を願い申した。いるはずがない神も仏にも祈った。
でも、一人になっても、勘違いしないでね。ずっと想いは消えたとしても、私は男を作らないから。君だけでいいくらい好きになった。これが、貴方がいない私の幸せだから。