甲類焼酎の哲学
宏志は小学生だった。
深夜、
焼酎のにおいと男達の
笑い声や怒声や罵声のする
茶の間の宴会の肴をもらいに来た。
貧しい水産の町の男達が
酒屋で売られている一番安い
甲類焼酎を飲み
笑いながら怒りながら宴会をしていた。
ある遠洋漁業や水産工場の
従事者の中年男性がある言葉を吐いた
「宏志、このいっちゃん安い焼酎でん、
酔えるか酔えんか。
それが問題やけんな」
あれから成人し
この会話の意味がわかった。
苦しみの現実に直面した時、
希望を持って挑むか、絶望で諦めるか。
これが人生の問題であり
人生の結論の一つなのだ。